本日の作品;vol.71;三木敏悟・高橋達也と東京ユニオン、北欧組曲 [デジタル化格闘記]

音源発掘、デジタル化格闘記の2本立てで綴って来た、私の音楽記事も前回で150稿目を迎え、今回は151稿目。
これまでは、比較的手に入りやすい音源や、YOU TUBEに動画のある音源を中心にお話を進めて来ましたが、So-netプログではMP3のファイルも取り込めるということで、これからは、手に入れくい音源や、CD化されていないLiveなどのレアな音源も加えご紹介していこうと思います。


そこで、その第1回の音源は、日本のジャズ、ビッグバンド、高橋達也と東京ユニオンの作品を選んでみました。

北欧組曲.jpg


その作品は、アメリカに渡り、鬼才ジョージ・ラッセルに師事し作・編曲を学び帰国、日本での活動を始めたばかりの三木敏悟、その彼の作・編曲家としてのデビュー作”北欧組曲”です。


三木敏悟といってもご存知の方は少ないかと思いますが、この方、映画 ”釣りバカ日誌”第1回の音楽を担当した人なのです。

この作品は、1970年当時、日本のジャズの確立と普及と、才能ある新人発掘のために設立されたジャズ専門レコードレーベルのスリー・ブラインド・マイス(TBM)の7周年を記念し企画されたもの。

この作品のレコーディングの前年、帰国間もない三木敏悟が、テナーサックスで参加していた東京ユニオンのコンサート、そこで演奏された彼の作曲による”白夜の哀しみ”を聞いたプロデューサーの藤井武が、当時無名に近かった彼の才能に着眼、そのプロジェクトの作曲を依頼したものなのです。

このサウンド、YOU TUBEにもあまりなく、また10年ほど前に一度CD化され再発されたものの、現在は手に入りにくいもののようなので、その演奏の一部をMP3でご紹介することにしてみました。

まずは最初に、三木敏悟の出世作となったこの曲をどうぞ。



まさに白夜の風景を想起させる美しく哀愁のある旋律。
巧みに散りばめられた、ミッキー吉野のシンセサイザーサウンドが、それまでのビッグバンドにはなかった新しい雰囲気を醸し出しつつ、その情景を詩的なものに仕上げている。
いつの間にか、スカンディナビアの美しい自然の中に包まれて行くような気分になって来ます。

その美しい自然を描いたと思われるこの作品ジャケット、よく見ると巧みに人の体が自然の一部にはめ込まれた、まさに人と自然の一体感を表現しているかのもののようです。

そして、裏ジャケットのこの写真、

CCF20110527_00000.jpg


自然と一体となった人の体を通じ、その様子が音楽なって流れてくるような暗示がなされている、そんな風に思えてくるのですが。


それでは、美しく優雅なバラード曲、”グレタ・ガルボの伝説”をどうぞ。



ガルポは、神秘的な美しさを持ち銀幕の女王と呼ばれたストックホルム出身の女優。
彼女の気品溢れる、輝きが目の前に浮かんでくるようなそんな感じの曲。
高橋達也のテナー・サックスが、彼女に恋焦がれる人々のせつなる思いを抒情的に歌いあげているように思えます。


ガルボの他、さらにこの作品には北欧を代表する人達をテーマにした楽曲が3曲収められています。
ノルウェイの画家 エドワード・ムンク、デンマークの童話作家 アンデルセン、そしてフィンランドの生んだ大作曲家 ヤン・シベリウス。
いずれも北欧の香りを強く放ち続けている偉大なる芸術家ばかり。
敏悟は、その偉大なる先人達のコ個性を、それぞれ表情豊かに音で綴っているように思えます。

その先人達をテーマにした曲の中から”シベリウスの遺言”をお聴きください。



三木敏悟はこの曲についてこう語っています。
冒頭に出てくる、シベリウスの交響詩”フィンランディア”、「その重々しく荘厳な響きは明らかに北欧の一部であり、閉ざされた雪の世界を想像させる。」と

やがて曲はアップテンポとなり、雪の結晶の舞う場面から春の訪れへと曲は進み描かれて行きます。



いかがですか、日本人の繊細な感性が描いたこの北欧賛歌。
コマーシャリズムとは無縁のジャズ作品とあってなかなか接することもできないものではないかと思います。

そうした中、日本人の情感に満ち溢れたこの素晴らしい作品が、埋もれながらもあることを一人でも多くの方に知っていただければ幸いだと思います。


Track listing

1. パートⅠ 白夜の哀しみ Midnight Sunrise
2. パートII エドワード・ムンクの肖像 Sketches Of Munch
3. パートIII グレタ・ガルボの伝説 The Legend Of Garbo
4. パートIV アンデルセンの幻想 Andersen Fantasia
5. パートV シベリウスの遺言 Sibelius' Testament
6. パートVI 遊ぶ子供たち Children at Play

Personnel

高橋達也(leader,ts)
多田春文、安孫子浩、鈴木基治、斎藤智一(tp,flh)
宮崎英次郎、内田清高、岡田光一(tb)
簾健一(b-tb)
堀恵二、柳沼寛(as)
井上誠二(ts)
石兼武美(bs)
石田良典(b)
金山昌宏(p)
海老沢一博(ds)
荒谷憲一、直居隆雄(g)

Guest Musician
今村祐司(per)
ミッキー吉野(synth)

Producer 藤井武

Recorded
1977年5月15日、22日 東京エピキュラス・スタジオ

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マチャ

グレタ・ガルボの伝説、気に入りました。
ジャジーな音楽は夜のイメージですが、この時間でも
心地良く響きますね。
by マチャ (2011-05-28 10:27) 

老年蛇銘多親父

マチャさん、グレタ・ガルボの伝説、気に入ていただけましたか。

この曲、中本マリさんがヴォーカルバージョンを出していて、これも良いのですけど、これも生憎CDは手に入れにくいようですし、You Tubeにもないのです。

近くまたMP3でご紹介をしたいと思います。

by 老年蛇銘多親父 (2011-05-29 00:50) 

せいじ

すごいジャケットですね!

ミッキー吉野って天才だと思います。
by せいじ (2011-05-29 01:47) 

snowman

どの曲にもどことなく歌謡曲的な雰囲気があるのがいい感じですね^^
それにしてもシンセの入り方が面白いです。
by snowman (2011-05-29 01:53) 

ダー

こんにちは。
このアルバム、1977年のスイングジャーナルジャズディスク大賞をとってますね。

話が若干ずれてて恐縮ですが、
当時はこの東京ユニオン、♯&♭、ブルーコーツ、ニューハードで
日本のビッグバンドベスト4といわれたものです。
(のちに、ドリフの全員集合のバックバンドのゲイスターズもからんできましたが、)

尚、高橋達也氏亡き後の東京ユニオンは、現在角田健一ビッグバンドに引き継がれています。
このバンド、他と違い自バンドの楽曲の譜面を販売しており、
結構アマチュアバンドに普及している様です。

by ダー (2011-05-29 11:34) 

老年蛇銘多親父

せいじさんどうもありがとうございます。

このジャケット、なかなかのアートものでしょ。

ミッキー吉野さん、グループサウンズ全盛の時代、ゴールデン・カップスでキーボードを弾いているころから注目していたミュージシャンですけど、三木敏悟とはアメリカのバークレー音楽院時代は同窓だったそうで、ここでも敏悟の音楽意図を十分に理解しプレーしているように思います。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-29 16:33) 

老年蛇銘多親父

snowmanさん、ここでもコメントありがとうございます。

三木敏悟の音楽、日本的な感じで聴きやすいのではと思います。

こういう作品があることを本当に多くの人に知ってもらいたいな思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-29 16:39) 

老年蛇銘多親父

ダーさん。ありがとうございます。

ジャズ・ディスク大賞、手持ちのゴールド・ディスク辞典を見てみたら、この作品確かに1977年のディスク大賞、日本のジャズ賞作品となっていました。

ちなみの金賞は、ハービー・ハンコックのVSOP、ニューポートのライブ、銀賞は、ハンク・ジョーンズのヴィレッジ・ヴァンガードでした。

日本のビッグバンド、CD再発も少なく、なかなか聴けないようなので、これからは、ニューハードなども含め音源を掲載していきたいと思っています。

ところで、ダーさんのバンドでこの北欧組曲など取り上げられないでしょうか。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-29 16:50) 

ダー

プロのバンドの楽譜は売り譜でない限り、なんらかのルートがないと入手出来ませんねぇ。これもその口だと思います。
学生バンドにベイシーがいまだに人気なのは、曲やアレンジがいいのはもちろんですが、それだけでなく何よりも楽譜を買えるからです。
トシコタバキンも売り譜はありましたが、アレンジがしんどいので一時期のブームで終わっちゃいました。
逆にエリントンは最後までオリジナルの売り譜は出しませんでした。
市場に出ているのは、所謂耳コピーのものだけです。

by ダー (2011-05-31 23:22) 

老年蛇銘多親父

ダーさん、やはり譜面がありませんか。

こういう日本人の手によるいい作品こそ、譜面を出して多くに人に演奏してもらい、広めてもらいたいなと思うのですけど残念です。

しかし、これもアレンジはしんどいかな?

エリントンの作品、これは演奏者の個性を引き出すように作られているものが多いので、たとえ譜面があっても、その演奏を再現するのは至難の技でしょうね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-02 05:20) 

老年蛇銘多親父

R8さん
thisisajinさん
ごろべさん
ヒサさん
OakCapeさん
ねこのめさん
かなっぺさん
こーいちさん


みなさん(* ゚̄ ̄)/・ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-06-02 05:25) 

パーツ

検索からたどり着きました。
以前リアルでこのアルバムはとてもお気に入りでした。
ふと思い出しAmazonで購入しようと思ったら、「再入荷の見込なし」。YouTubeにもなく、意地になって探し、たどり着きました^^

久々に聞いた「グレタ・ガルボの伝説」は、今聞いても、素晴らしいの一言です。音質もよく、提供いただきありがとうございました。

これからもブログ楽しみにしてますので、よろしくお願い致します。

PS
もしよろしければ、アルバム他の局もアップをしていただけると大変うれしいです。
by パーツ (2012-09-02 23:24) 

老年蛇銘多親父

パーツさん はじめまして

日本人のジャズ作品、いいものがあるのですけど、日本のレコード会社のセンスのなさか、再発売されることが少ない。

この作品も記事にしたところ、今だ訪れてこられる方が絶えず、この作品のファンの方が多いのだなと感じております。

このアルバムの他の曲ですが、その後、”アンデルセンの幻想”を、今年4月にPVにして記事に掲載したことがありますので、そちらの方で視聴してくださればと思います。

http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04

そのほかにも、私のブログでは、再発売が見込がたっていない音源や、CDでは発表されていない音源をもできるだけ掲載するようにしていますので、よろしければまたお越しくださり、感想等聞かせていただければと思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2012-09-03 05:35) 

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