今も、江戸庶民の賑わいが宿る場所;神田明神その1 [歴史散策]

以前、何かで読んだのですが、中国や韓国の方が日本に訪れて、薄気味悪さを覚える場所ということで神社があげられていました。

確かに神社と言えば昼なお暗い鬱蒼とした森に包まれていて、我々日本人でもその境内に入ると、そこに何かが宿っているような気配を感じるものです。

そもそも神社というもの、森林という自然の恵みを背景に、この地に営々と生活を築いてきた森林の民である日本人にとって、自然の精霊達への感謝と願いの場であるわけで、生活風土の全く異なった、大陸の大地を自ら開拓し文明を築いてきた草原の民である中国や韓国の方々には、その意味が分からないのは仕方がないことと思うのですが、

そこで今日の行き先は、つきものの森のない、そして海外の人にも信仰の躍動が伝えられるような、妙に明るい活気がある神社。
そこの明るい活気を、もらいたくて、そのお社を訪ねてみることにしました。

JR中央線の御茶ノ水駅で降り、聖橋口をでて徒歩10分の所にそのお社はあります。
神社の参道の近く、その鳥居の横には、お正月の初詣のTV番組によく出てくる甘酒屋さんが。

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さて、この看板を見れば、これから行こうとしている神社、もう分かったとういう人多いでしょうね。

甘酒茶屋の天野さん、といえばこれから行くお社は、当然神田明神となりますよね。

このお店女性の方には人気があるようで、この日も参拝を済ませたのか?奥様連が数組いそいそとこのお店に入って行く姿を見かけました。

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こんなメニューが出て来るのだそうですが、甘いもの苦手の私はここはパスというか、老年男が一人で入るには、ちょっと気が引けるので。[がく~(落胆した顔)]

その天野屋さんの角を曲がると、すぐ鳥居が、そして土産物屋の並ぶ短い参道の先には随神門がたっています。


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随神門とは、神域に邪悪なものが入り来るのを防ぐ御門の神をまつる門のことを言いますが、神田明神も御門は。1976年(昭和51年)昭和天皇在位50年を記念して関東大震災で焼失以来再建されたもの。
1998年(平成10年)に塗り替えられ鮮やかな朱色に染まっています。

この随神門をくぐると、正面の社殿に行きあたります。
鬱蒼とした森もなく、ずいぶん明るい印象ですよね。[わーい(嬉しい顔)]

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この社殿も、関東大震災で焼失後、1934年再建に再建されたもの。
当時画期的であった鉄骨鉄筋コンクリート造の建物で、1945年(昭和20年)の東京大空襲にも耐えて来た建物なのです。

鉄骨鉄筋コンクリート造の建物というと、「なんだ、有難味がないな」などと思われるかもしれませんが、
現在のようにコンクリートが、生コンクリート工場で生産されミキサー車で大量迅速に供給されるようになったのは、1949年(昭和24年)以降のこと。
当時は、樽に詰められたセメントと砂・砂利を現場で人間が手作業で練り込んで作っていたのです。
さらに、そのコンクリートで木造建築の質感のある建物を手間をかけ作ったことを考えると、その造営が関東大震災復興のシンボルとして行われた、かなりの規模の大事業だったことが分かるのではないかと思います。

その社殿で参拝を済ませ周りを見ると、社殿右側に岩で作られた小山が目に入って来ます。

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その小山の頂上には、雄々しく立ちはだかる狛犬の姿があります。
近くに寄ってよく見ると、流れ落ちる水の下には、上を向き何やら助けを呼んでいるかの様子の小さな狛犬がいます。

さらによく見ると、雄々しく立ちはだかる狛犬の左下には。黒ずんで唯の岩に見えるのですけど、その小さな狛犬を心配そうに見つめる狛犬の姿があります。

ああ、これは親子の狛犬なのだと思って説明書きを見ると、石獅子とあり千代田区の有形民族文化財とありまます。

この獅子山、江戸時代終末期の1862年(文久2年)に両替屋仲間が奉納した獅子の子落しの石像で、関東大震災で獅子山は崩壊するも親獅子二頭は保存され、2000年(平成3年)の獅子山再建により往時の姿に戻ったものなのだそうです。

その獅子山を見て、次に社殿右横に足を進めることに。
すると、そこには一風変わった石碑があるのが目につきます。

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一体何の石碑でしょうか。
もう少し近づいてみると。

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碑の台座の部分には、寛永通宝の文字が刻まれています。
この碑の正面先の向こうは、崖になっていてその下には街並みが広がっています。
その街並みにある道路の表示板。


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寛永通宝、明神下と言えばもうお分かりでしょう。

そうです、野村胡堂の小説「銭形平次捕物控」の主人公銭形平次の石碑なのです。
中央の大きな碑が平次親分で、その右横の小さな石碑が子分の八五郎なのだそうです。

この碑は、1970年(昭和45年)、平次の家が明神下の台所町という設定だったことから、作家の野村胡堂と当時のTV関係者有志によて建立されたもの。

現在の明神下の街並みにも足を向けてみると。


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どこからか八五郎が飛び出して来て、平次親分の投げ銭飛んで来そうな気分になって来ます。



平次親分の碑を後にして、社殿裏へ回ってみることに。
そこからは、この神社の摂末社群が並んでいるのをみることができます。

ところがこの摂末社、他の神社と異なり、神田・日本橋・秋葉原・大手・丸の内・旧神田市場(大田市場)・築地魚河岸市場等、東京108の町を氏子従える江戸総鎮守 神田明神らしく、江戸と東京の庶民の生活や文化が、伝わって来るような気さえする場所なのです。

寛政7年(1795年)、籠職人らによって創建された籠祖神社や、
日本橋魚河岸の守護神として創建され、元和年間に神田明神境内に遷座した、日本橋魚河岸水神社のような江戸の生活を担う商工業者の氏神を祀っているものや、
また大伝馬町八雲神社の前にある、1839年(天保10年)江戸の反物の流通を一手に扱う、太物問屋仲間が寄進した鉄製天水桶など、
そこには、人々の日常生活の中の信仰の様子を垣間見たような懐かしさを感じ、いつの間にか同化してしまいそうな雰囲気に漂っているように思えてくるのでした。


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こうして境内を歩いてみると、この社、現在もこの東京いう大都会の巨大な気を放ちつつ、そこに暮らす多くの人々の喜怒哀楽を見守り司っている、そんな躍動感に満ちた活力が強く伝わってくるのを感じるのでした。                                                              続く


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コメント 5

ituki

コンクリートの話が面白かったです^^
ミキサー車が登場したのは昭和なんですかー
清水建設が日本で初めて鉄骨構造の建物を造ったっていうのは明治の終わりだから そういう手作業で練り練りしたコンクリートを使ったのかな・・・とか思ってしまいました^^;

続きのある大作ですね[ぴかぴか]^^
by ituki (2011-05-07 02:21) 

老年蛇銘多親父

itukiさん えらいこと知っていますね。[__!]

ということで少しだけ生コンのことを話しますと、最初の生コン工場があったのは、現在の東京スカイツリーの足元で、スカイツリー完成後、その下の公園に生コンクリート工場発祥の地の碑が戻って来る(現在、別の場所で保管しているとのこと)予定なのだそうです。

最初は、今のミキサー車はなくダンプで運んでいたそうで、輸送途中で砂利・砂とセメントが分離してしまい結構難儀したそうです。

若い時、その創業当時の事業に携わった方のお話を聞いたことがあるのですが、その工場の最初の納入工事は、当時東京駅の八重洲口にあった東京温泉だったそうです。

生コンのお話は、この生コン工場の創めた東京エスオーシー㈱のホームページに詳しいのでこちらを見てください。

http://www.soc-fc.co.jp/cominfo/tokyo.html

ちなみにミキサーで練ったコンクリートの初めは、関東大震災後とありますけど、計量から練り混ぜまですべて機械で行ったのはこの工場が初めてのようです。

ちなみに当時のこの工場の生産能力は、日量150㎥でしたが、現在の最大のミキサーでは、時間200㎥以上を生産できるようになっています。
by 老年蛇銘多親父 (2011-05-07 06:39) 

老年蛇銘多親父

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KSGYさん
えい♪さん

みなさんniceありがとうございます。




by 老年蛇銘多親父 (2011-05-15 05:03) 

老年蛇銘多親父

高燃費クララさん
抹茶さん

☆⌒(*^-゜)vありがとうございます。

by 老年蛇銘多親父 (2011-05-28 12:27) 

ituki

先週のNHKの大河ドラマの後 神田明神出てましたね^^ 
親父さんの記事の画像と同じ 緑の屋根の社殿や大手町の神社も出ていました
で 大喜びしてました^^; 
この記事ほど詳しく語ってなかったですが・・・  笑
by ituki (2011-08-25 00:58) 

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