唸り躍動するベースの歌声;Niels-Henning Ørsted Pedersen [音源発掘]
今回も前回に引き続き、デュエット作品のお話。
今日取り上げるアーティストは、Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス・ヘニング・ エルステッド゙・ペデルセンとういう、とても長い名前の人。
通常はニールス・ペデルセンと呼ばれているデンマーク出身のべーシストのDuo作品、2つをご紹介したいと思います。
そのペデルセン、その経歴は1960年代半ばに登場し、ピアノのケニー・ドリューら共にヨーロッパにおけるジャズクラブの名門コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルの専属リズムセクションとして活動、当地を訪れたデキスター・ゴードン、ベンウェブスター、ジョニー・グリフィン等の一流ミュージシャンとのセッションを通じ、その超絶技巧を屈指した華麗なベース・プレイで頭角を現してきたベーシストなのです。
この頃の彼の演奏は、ヨーロッパのジャズ・レーベルBlack Lionレコードによってレコーディングされ、レコード化されているのですが、日本でも70年代初頭に当時誕生したばかりのTRIOレコードがその版権を取得、世に送り出し多くのジャズ・ファンの間で評判を呼んだことが思い出されます。
かく言う私も、それらの作品を通じ、ペデルセンの存在を知った一人。
これまで記事でも、それらのドリュー・ペデルセンのリズム・セクションが活躍する作品を取り上げてきましたが、そのどれもが、そのリズム・セクションに支えられて、往年の名プレヤー達もそのベスト・パーフォマンスともいうべき演奏を聴かせてくれていました。
ベン・ウェブスターとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2009-11-07
ジョニー・グリフィンとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
デクスター・ゴードンとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2012-11-29
そうした、演奏の中でもとくに驚かされたのがペデルセン。
もの凄いスピードで、ベースをまるでギターのようにかき鳴らしている。
今でこそこうしたベース・プレイは珍しくなりましたが、当時はこれまで聴いたことなかったそのプレイに、ベースという楽器の可能性と新たな魅力を発見したように感じたものでした。
その演奏可能にしたのがスリーフィンガー・ピッキング奏法。
親指から中指を順番に動かして分散和音やトレモロなどを演奏する奏法で、ベースにおいてはペデルセンよって始められ、その後多くのベーシストが追随するも、今だペデルセンを越えるものは現れていないといないとう超絶技巧なのです。
その超絶技巧を駆使して弾かれるペデルセンのベースは、元来リズムの一翼を担っていたベースに、旋律楽器であるホーン的要素を取り入れ開花させたポール・チェンバース以来の革命的なもので、これによってベースによる音楽表現の枠を大きく広げることになったのです。
さて、今日取り上げるデュオ作品は、ピアノとの対話の中でこうしたペデルセンのベースが特徴が聴ける最良のもの。
本来、ピアノのサポートしその後ろに隠れてしまいそうなベースが、ピアノと対等の立場で旋律を綴っていく。
ペデルセン華麗なベース・ワークを、二人のピアニストとの演奏でお聴きいただこうと思います。
その1つ目の相方となるピアニストは、ペデルセンと多くの時を共にしたKenny Drew。
その作品は、1973年制作の”Duo"
そしてその2つ目は、フランスの名ピアニストMichel Petruccianiとの1994年の作品”Petrucciani NHØP”。
それぞれ、独特の個性を持つ二人との対話に、ペデルセンがどんな秘儀をもって挑むのか、まずはドリューとの演奏からお楽しみいただこうと思います。
曲は、ペデルセンのオリジナルで”Kristine”です。
ペデルセンが、メジャーなジャズ・シーンに登場したのは、1971年頃のこと。
オスカー・ピータソンやディジー・ガレスピ―といった巨匠のレコーディングにも参加し、大いに名を上げることになったのですが、このドリューとの作品は、そうして名をなしたペデルセンが、再び旧知のドリューと組み二人の名を冠した作品を創り上げたほぼ最初のもの。
その後、ペデルセンは1993年ドリューが他界するまでドリューのパートナーを務め、ドリューと共に多くの名作を残して行くことになるのですが,、この演奏には、その後の生涯に渡り、再び共に歩むことになる二人の親密な関係を感じさせるものがあるように思います。
それは、1964年の出会い以来、一緒にヨーロッパ訪れる多くのアメリカ本国を離れたアーティストのバックを務め互いの手の内を知りつくした二人が、共に相方の最良の資質を引き出しつつ、楽しみながらリラックス感溢れるあるプレイをしていることが、この演奏の様子からも感じ取れるのではないかと思います。
さて、次は二人目の相方ピアニスト、ぺトルチアーニの登場。
多くのジャズ・アーティストに共演を嘱望されたこの名ピアニストとペデルセンの超絶技巧の組み合わせ、どんななのか、早速、聴いてみることにいたしましょう。
曲は、ビリー・ホリディの名唱でも有名な”I Can't Get Started(言い出しかねて)”です。
この演奏がレコーディングされた1994年と言えば、ペデルセンにとってはその前年、敬愛するパートナーであったドリューを失ったばかりの深い悲しみにくれていた時期だったのですが、一方相対するしぺトルチアーニは、この年アメリカからフランスに帰国、フランス政府から名誉あるレジオンドヌール勲章を授与を受けた、然も勢いにのっていた時期。
そうした対局の境地にあった二人、その演奏は波に乗るぺトルチアーニのピアノに導かれ、ペデルセンも在りし日のドリューとの対話を思い出しながらこの敏腕ピアニストの誘いに秘術に応えて行く、そこには何かしら二人の奥深いところで語り合う心のあやが見えている、そんな気がしてしまうのです。
それでは、このぺトルチアーニとの演奏からもう1曲。
今度は、マイルス・ディビスの演奏でも名高いスタンダード・ナンバーから”My Funny Valentine”を聴いてください。
2005年、心不全のため58歳の若さでこの世を去ってしまったペデルセン。
35年ほど前、デキスター・ゴードン、ケニー・ドリュー等と共に来日したおり、そのステージで見た超絶技巧を駆使しながらも暖かみを感じさせた彼の姿。
この2つのデュオ作品には、そうしたペデルセンの心根がしかっりと生きている、大名盤ではないけれど、じっくりと聴いていただきたい作品だと思います。
Duo
Track listing
1.I Skovens Dybe Stille Ro (Traditional)
2.Come Summer
3.Lullabye" (Niels-Henning Ørsted Pedersen)
4.Kristine" (Pedersen)
5.Serenity"
6.Det Var en Lørdag Aften" (Traditional)
7.Do You Know What It Means to Miss New Orleans?" (Louis Alter, Eddie DeLange)
8.Wave" (Antonio Carlos Jobim) - 5:22
9."Duo Trip"
10.Hush-A-Bye(Traditional)
Personnel
Kenny Drew ( p )
Niels-Henning Ørsted Pedersen ( b )
Recorded
April 2, 1973 Wifoss Studios, Copenhagen, Denmark
Petrucciani NHOP
Track listing
Disc 1
1.All The Things You Are
2.I Can't Get Started
3.Oleo
4.All Blues
5 Beautiful Love
6.Someday My Prince Will Come
7.Billie's Bounce
8.Autumn Leaves
Disc 2
1.St. Thomas
2.These Foolish Things
3.Stella By Starlight
4.Blues In The Closet
5.Round Midnight
6.Future Child
7. My Funny Valentine
Personnel
Michel Petrucciani ( p )
Niels-Henning Orsted Pedersen ( b )
Recorded
Llive at copenhagen jazzhouse April 18. 1994
今日取り上げるアーティストは、Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス・ヘニング・ エルステッド゙・ペデルセンとういう、とても長い名前の人。
通常はニールス・ペデルセンと呼ばれているデンマーク出身のべーシストのDuo作品、2つをご紹介したいと思います。
そのペデルセン、その経歴は1960年代半ばに登場し、ピアノのケニー・ドリューら共にヨーロッパにおけるジャズクラブの名門コペンハーゲンのカフェ・モンマルトルの専属リズムセクションとして活動、当地を訪れたデキスター・ゴードン、ベンウェブスター、ジョニー・グリフィン等の一流ミュージシャンとのセッションを通じ、その超絶技巧を屈指した華麗なベース・プレイで頭角を現してきたベーシストなのです。
この頃の彼の演奏は、ヨーロッパのジャズ・レーベルBlack Lionレコードによってレコーディングされ、レコード化されているのですが、日本でも70年代初頭に当時誕生したばかりのTRIOレコードがその版権を取得、世に送り出し多くのジャズ・ファンの間で評判を呼んだことが思い出されます。
かく言う私も、それらの作品を通じ、ペデルセンの存在を知った一人。
これまで記事でも、それらのドリュー・ペデルセンのリズム・セクションが活躍する作品を取り上げてきましたが、そのどれもが、そのリズム・セクションに支えられて、往年の名プレヤー達もそのベスト・パーフォマンスともいうべき演奏を聴かせてくれていました。
ベン・ウェブスターとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2009-11-07
ジョニー・グリフィンとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2012-09-08
デクスター・ゴードンとの作品はこちら→http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2012-11-29
そうした、演奏の中でもとくに驚かされたのがペデルセン。
もの凄いスピードで、ベースをまるでギターのようにかき鳴らしている。
今でこそこうしたベース・プレイは珍しくなりましたが、当時はこれまで聴いたことなかったそのプレイに、ベースという楽器の可能性と新たな魅力を発見したように感じたものでした。
その演奏可能にしたのがスリーフィンガー・ピッキング奏法。
親指から中指を順番に動かして分散和音やトレモロなどを演奏する奏法で、ベースにおいてはペデルセンよって始められ、その後多くのベーシストが追随するも、今だペデルセンを越えるものは現れていないといないとう超絶技巧なのです。
その超絶技巧を駆使して弾かれるペデルセンのベースは、元来リズムの一翼を担っていたベースに、旋律楽器であるホーン的要素を取り入れ開花させたポール・チェンバース以来の革命的なもので、これによってベースによる音楽表現の枠を大きく広げることになったのです。
さて、今日取り上げるデュオ作品は、ピアノとの対話の中でこうしたペデルセンのベースが特徴が聴ける最良のもの。
本来、ピアノのサポートしその後ろに隠れてしまいそうなベースが、ピアノと対等の立場で旋律を綴っていく。
ペデルセン華麗なベース・ワークを、二人のピアニストとの演奏でお聴きいただこうと思います。
その1つ目の相方となるピアニストは、ペデルセンと多くの時を共にしたKenny Drew。
その作品は、1973年制作の”Duo"
そしてその2つ目は、フランスの名ピアニストMichel Petruccianiとの1994年の作品”Petrucciani NHØP”。
それぞれ、独特の個性を持つ二人との対話に、ペデルセンがどんな秘儀をもって挑むのか、まずはドリューとの演奏からお楽しみいただこうと思います。
曲は、ペデルセンのオリジナルで”Kristine”です。
ペデルセンが、メジャーなジャズ・シーンに登場したのは、1971年頃のこと。
オスカー・ピータソンやディジー・ガレスピ―といった巨匠のレコーディングにも参加し、大いに名を上げることになったのですが、このドリューとの作品は、そうして名をなしたペデルセンが、再び旧知のドリューと組み二人の名を冠した作品を創り上げたほぼ最初のもの。
その後、ペデルセンは1993年ドリューが他界するまでドリューのパートナーを務め、ドリューと共に多くの名作を残して行くことになるのですが,、この演奏には、その後の生涯に渡り、再び共に歩むことになる二人の親密な関係を感じさせるものがあるように思います。
それは、1964年の出会い以来、一緒にヨーロッパ訪れる多くのアメリカ本国を離れたアーティストのバックを務め互いの手の内を知りつくした二人が、共に相方の最良の資質を引き出しつつ、楽しみながらリラックス感溢れるあるプレイをしていることが、この演奏の様子からも感じ取れるのではないかと思います。
さて、次は二人目の相方ピアニスト、ぺトルチアーニの登場。
多くのジャズ・アーティストに共演を嘱望されたこの名ピアニストとペデルセンの超絶技巧の組み合わせ、どんななのか、早速、聴いてみることにいたしましょう。
曲は、ビリー・ホリディの名唱でも有名な”I Can't Get Started(言い出しかねて)”です。
この演奏がレコーディングされた1994年と言えば、ペデルセンにとってはその前年、敬愛するパートナーであったドリューを失ったばかりの深い悲しみにくれていた時期だったのですが、一方相対するしぺトルチアーニは、この年アメリカからフランスに帰国、フランス政府から名誉あるレジオンドヌール勲章を授与を受けた、然も勢いにのっていた時期。
そうした対局の境地にあった二人、その演奏は波に乗るぺトルチアーニのピアノに導かれ、ペデルセンも在りし日のドリューとの対話を思い出しながらこの敏腕ピアニストの誘いに秘術に応えて行く、そこには何かしら二人の奥深いところで語り合う心のあやが見えている、そんな気がしてしまうのです。
それでは、このぺトルチアーニとの演奏からもう1曲。
今度は、マイルス・ディビスの演奏でも名高いスタンダード・ナンバーから”My Funny Valentine”を聴いてください。
2005年、心不全のため58歳の若さでこの世を去ってしまったペデルセン。
35年ほど前、デキスター・ゴードン、ケニー・ドリュー等と共に来日したおり、そのステージで見た超絶技巧を駆使しながらも暖かみを感じさせた彼の姿。
この2つのデュオ作品には、そうしたペデルセンの心根がしかっりと生きている、大名盤ではないけれど、じっくりと聴いていただきたい作品だと思います。
Duo
Track listing
1.I Skovens Dybe Stille Ro (Traditional)
2.Come Summer
3.Lullabye" (Niels-Henning Ørsted Pedersen)
4.Kristine" (Pedersen)
5.Serenity"
6.Det Var en Lørdag Aften" (Traditional)
7.Do You Know What It Means to Miss New Orleans?" (Louis Alter, Eddie DeLange)
8.Wave" (Antonio Carlos Jobim) - 5:22
9."Duo Trip"
10.Hush-A-Bye(Traditional)
Personnel
Kenny Drew ( p )
Niels-Henning Ørsted Pedersen ( b )
Recorded
April 2, 1973 Wifoss Studios, Copenhagen, Denmark
Petrucciani NHOP
Track listing
Disc 1
1.All The Things You Are
2.I Can't Get Started
3.Oleo
4.All Blues
5 Beautiful Love
6.Someday My Prince Will Come
7.Billie's Bounce
8.Autumn Leaves
Disc 2
1.St. Thomas
2.These Foolish Things
3.Stella By Starlight
4.Blues In The Closet
5.Round Midnight
6.Future Child
7. My Funny Valentine
Personnel
Michel Petrucciani ( p )
Niels-Henning Orsted Pedersen ( b )
Recorded
Llive at copenhagen jazzhouse April 18. 1994
ケニー・ドリュー、親父さんセレクトの「Impressions」をよく聴いていて、ベースのソロがいいなぁと思っていましたが、あれがペデルセンなんですね。
ほんとにペデルセンのテクニックはスゴイですね!
ベースの弦は太くて音程の間隔も広いと思うんですが、よくあんな速くてキレイな音が出せるのか不思議なくらいです。
「Kristine」のアルコは、あまりにも繊細な美しさでビックリしました。まるで、チェロの低音部のソロみたいだし。
それに、ここでぺト様とのデュエットが聴けるなんて感激しました。^^[ラブラブハート]
あの力強いぺト様のピアノに負けない芯のある美しい音、「I Can't Get Started」の和音なんて聴き惚れました。
ライブの映像があったので貼っておきますね。
指使いは見なきゃ損ですよね(笑)
「Samba Petit」
http://www.youtube.com/watch?v=_M-LnU2F4CY#at=165
by ituki (2013-08-15 10:55)
イッチ―
「Impressions」を聴いていたんですか。
あの旅情というか、しっとり雰囲気にはペデルセンの北欧人らしいセンスのベースの存在が大きいですね。
「Kristine」のアルコの演奏の美しさ、この辺などクラシックで修練を積んだヨーロッパ出身のベーシストならではものがあると思います。
チェコ出身のベーシスト、ミロスラフ・ヴィトスなども綺麗なアルコを聴かせてくれますしね。
そのヴィトスの音、次回にまた変わった手法で掲載いたしますので、また聴いてみてください。
それにしても、ペデルセンの指使い、本当に見なきゃ損。
その昔、コンサートにい行ったのもその指使いを生で見ったかったかなんですよね。
ライブ映像を見ながら、その昔を思い出させてもらいました。ありがとう。
by 老年蛇銘多親父 (2013-08-16 08:48)