1955年のカラオケ 本日の作品;vol.126 [デジタル化格闘記]
今回はカラオケのお話。
と言っても,そのカラオケ、その制作は1955年という骨董品もののカラオケ。
エーッツ、カラオケってそんな古いの???
今から、60年も前からあったなんて
という声が聞こえて来そうですけど。
そこで、Wikiを調べてみると
カラオケ........!!
その始まりは1970年代半ばの日本とのこと。
実は、その当時私は、ミュージック・ボックスを扱う人達を懇意していたこともあって、カラオケ登場に至るまでの経過を身を以て体験しまったのですが、その時の様子、ここでお話させていただくと。
私が目撃体験したカラオケの始まり!!
その発端となったのはミュージック・ボックス、いわゆるジューク・ボックスの普及だったのです。
ジューク・ボックスというと今の人にはあまり馴染みはないのかもしれませんが、それは、ボックスの中に50枚~200枚の程度のEP盤(アナログ・レコードの2曲入りシングル盤)が入った機械で、コインを入れてその中の入れられた曲を選ぶと、中でレコード・プレヤーが移動し選びEP盤を再生聴かせてくれる演奏装置。
その起源は、かなり古く、アメリカで1920年代後半に登場、1950年代にはレコード産業の大きな収益源となっていたようなのですが、日本でも1970年代、40枚ほどのEP盤を収納するコンパクトサイズのものが生まれ、それがスナックや居酒屋など飲食店のカウンターなどに置かれるように普及していくことになったのです。
そしてそのジュークボックスの普及は、酒場でただ曲を聴くだけでなく、歌手の歌う歌に合わせ自らも歌う客たちを呼ぶことなり、次世代モデルでは、さらにマイク・ジャクを持ったモデルも出現、ここに来て、歌手の歌が入らないオケ演奏だけのEP盤登場への要望が高まりを見せ、カラオケEP盤が登場、カラオケラが生まれることになったのです。
ところが、今回ご紹介する作品は、
そのカラオケ発祥を遡ること15年ほど前のもの!!
一体、それなんなの????
そんなものあるの? と思われるでしょうけど。
あるのです。
それが、これ!!!!
なんともレトロなジャケット!!
”Jazz Laboratory Series vol.1”です。
そう、タイトルからお察しの通り、この作品はジャズのカラオケ。
と言っても、この演奏、ヴォーカル抜きのカラオケではなく、ホーン楽器(ここではアルト・サックス)抜きのカラオケと言う大変珍しいもの。
演奏するは、バップ期の名ピアニストDuke Jordan率いるトリオを中心としたものなのですが、そのレコード構成は、A面がアルトが入った通常の演奏で、B面がトリオだけのカラオケと言うもの。
それは一体どんなものなのか、早速カラオケ・サイドからその演奏、お聴かせすることにいたしましょう。
曲は、Jordan自らのペンによる名曲”Jor-Du”。
テーマの後の演奏が本来あるはずホーンの伴奏となっていること、お分かりいただけたでしょうか。
そしてホーンのパートが終わるとJordanのピアノ・ソロが聴こえてくる。
これ、まさにカラオケの世界でしょ!!
私が、この作品を見つけたいきさつ、
それは、このDuke Jordanというアーティスト、50年代、Art Blakey & The Jazz Messengerの演奏で映画音楽として有名になった”No Problem(邦題;危険な関係のブルース)”や、バップ・ジャズの船出を高らかに告げたClifford Brown & Max Roack Quintetの看板曲となったこの”Jor-Du”など、作曲の才にも恵まれたピアニストでもあったことから、出来ればこれらの曲をJordan自身の演奏で聴いてみたいと思い、それらの曲の収録されている作品を探し求めたことから始まったのです。
ところがその演奏、探してみると”危険な関係のブルース”の方は、比較的容易に見つけることが出来たのですが、”Jor-Du”の方はなかなか探せど見つけることが出来ず、そうこうしているうちに諦めの気分から探すことを止めてしまったのです。
そして、それからだいぶ経たとある日、レコード・ショップで輸入盤の廉価版コーナー物色していると偶然目に留まったのがこのジャケット。
収録曲を見てみると、なんとお目当ての”Jor-Du”が入っている、さらに演奏メンバーも粒ぞろいということで喜び勇んで買い求めてしまったのです。
しかし、そのアルバムにカラオケが収録されていたことを知ったのは、家に帰ってからのこと。
レコード盤をよく見ると、A面もB面も記載されている曲は同じ。
と言うことは、片面がホーン入りのQuartetの演奏で、もう一方がPiano Trioの演奏なのかと思ったのですけど、聴いてみると、カラオケ!!
いやいや、この時は、こんなものがあったのかと本当に驚かされたものでした。
この作品、A面のGigi Gryceのアルトサックスが入った演奏は、カラオケ用のお手本手抜き演奏のように思われしまうかもしれませんけど。
実は、そうではなく、これがかなりいいのです。
というところで、今度は、そのQuartetの演奏、百聞は一見にしかずといところで、またお聴かせすることにいたしましょう。
50年代の黒人ジャズ・プレヤーとしては珍しくクラシックの基本を身に着けていたというGigi Gryce。
Clifford Brownの演奏にある華麗さはないものの、美しい音色でシンプルではあるものの、曲想を広げ淡々と歌い上げている。
50年代の黒人ジャズ・プレヤーとしては珍しくクラシックの素養をしっかりと身に着けていたというGigi Gryce、
このトラックは、演奏活動期間も短かったことから、その残された音源も希少であるため忘れられがちな彼の優れた資質を知ることには打ってつけの、貴重な録音ではないかと思うのです。
さて、今回聴いていただいたジャズのカラオケという、珍しい一品。
音楽を楽しむには打ってつけの肌合いとなった今日この頃、この演奏を聴きながらご自身のソロを奏でてみるのもまた一興、アドリブこそ命のジャズ、そうしたことでジャズの醍醐味、また知っていただければと思います。
Track Listings
1.Sometimes I'm Happy
2.Embraceable You
3.Jor-Du
4.Oh Yeah
5.Sometimes I'm Happy(Karaoke)
6.Embraceable You(Karaoke)
7.Jor-Du(Karaoke)
8.Oh Yeah(Karaoke)
Personnel
Duke Jordan(piano)
Gigi Gryce(alito sax)
Oscar Pettifford(bass)
Kenny Clarke(drums)
Recorded
March 7 1955 NYC
と言っても,そのカラオケ、その制作は1955年という骨董品もののカラオケ。
エーッツ、カラオケってそんな古いの???
今から、60年も前からあったなんて
という声が聞こえて来そうですけど。
そこで、Wikiを調べてみると
カラオケ........!!
その始まりは1970年代半ばの日本とのこと。
実は、その当時私は、ミュージック・ボックスを扱う人達を懇意していたこともあって、カラオケ登場に至るまでの経過を身を以て体験しまったのですが、その時の様子、ここでお話させていただくと。
私が目撃体験したカラオケの始まり!!
その発端となったのはミュージック・ボックス、いわゆるジューク・ボックスの普及だったのです。
ジューク・ボックスというと今の人にはあまり馴染みはないのかもしれませんが、それは、ボックスの中に50枚~200枚の程度のEP盤(アナログ・レコードの2曲入りシングル盤)が入った機械で、コインを入れてその中の入れられた曲を選ぶと、中でレコード・プレヤーが移動し選びEP盤を再生聴かせてくれる演奏装置。
その起源は、かなり古く、アメリカで1920年代後半に登場、1950年代にはレコード産業の大きな収益源となっていたようなのですが、日本でも1970年代、40枚ほどのEP盤を収納するコンパクトサイズのものが生まれ、それがスナックや居酒屋など飲食店のカウンターなどに置かれるように普及していくことになったのです。
そしてそのジュークボックスの普及は、酒場でただ曲を聴くだけでなく、歌手の歌う歌に合わせ自らも歌う客たちを呼ぶことなり、次世代モデルでは、さらにマイク・ジャクを持ったモデルも出現、ここに来て、歌手の歌が入らないオケ演奏だけのEP盤登場への要望が高まりを見せ、カラオケEP盤が登場、カラオケラが生まれることになったのです。
ところが、今回ご紹介する作品は、
そのカラオケ発祥を遡ること15年ほど前のもの!!
一体、それなんなの????
そんなものあるの? と思われるでしょうけど。
あるのです。
それが、これ!!!!
なんともレトロなジャケット!!
”Jazz Laboratory Series vol.1”です。
そう、タイトルからお察しの通り、この作品はジャズのカラオケ。
と言っても、この演奏、ヴォーカル抜きのカラオケではなく、ホーン楽器(ここではアルト・サックス)抜きのカラオケと言う大変珍しいもの。
演奏するは、バップ期の名ピアニストDuke Jordan率いるトリオを中心としたものなのですが、そのレコード構成は、A面がアルトが入った通常の演奏で、B面がトリオだけのカラオケと言うもの。
それは一体どんなものなのか、早速カラオケ・サイドからその演奏、お聴かせすることにいたしましょう。
曲は、Jordan自らのペンによる名曲”Jor-Du”。
テーマの後の演奏が本来あるはずホーンの伴奏となっていること、お分かりいただけたでしょうか。
そしてホーンのパートが終わるとJordanのピアノ・ソロが聴こえてくる。
これ、まさにカラオケの世界でしょ!!
私が、この作品を見つけたいきさつ、
それは、このDuke Jordanというアーティスト、50年代、Art Blakey & The Jazz Messengerの演奏で映画音楽として有名になった”No Problem(邦題;危険な関係のブルース)”や、バップ・ジャズの船出を高らかに告げたClifford Brown & Max Roack Quintetの看板曲となったこの”Jor-Du”など、作曲の才にも恵まれたピアニストでもあったことから、出来ればこれらの曲をJordan自身の演奏で聴いてみたいと思い、それらの曲の収録されている作品を探し求めたことから始まったのです。
ところがその演奏、探してみると”危険な関係のブルース”の方は、比較的容易に見つけることが出来たのですが、”Jor-Du”の方はなかなか探せど見つけることが出来ず、そうこうしているうちに諦めの気分から探すことを止めてしまったのです。
そして、それからだいぶ経たとある日、レコード・ショップで輸入盤の廉価版コーナー物色していると偶然目に留まったのがこのジャケット。
収録曲を見てみると、なんとお目当ての”Jor-Du”が入っている、さらに演奏メンバーも粒ぞろいということで喜び勇んで買い求めてしまったのです。
しかし、そのアルバムにカラオケが収録されていたことを知ったのは、家に帰ってからのこと。
レコード盤をよく見ると、A面もB面も記載されている曲は同じ。
と言うことは、片面がホーン入りのQuartetの演奏で、もう一方がPiano Trioの演奏なのかと思ったのですけど、聴いてみると、カラオケ!!
いやいや、この時は、こんなものがあったのかと本当に驚かされたものでした。
この作品、A面のGigi Gryceのアルトサックスが入った演奏は、カラオケ用のお手本手抜き演奏のように思われしまうかもしれませんけど。
実は、そうではなく、これがかなりいいのです。
というところで、今度は、そのQuartetの演奏、百聞は一見にしかずといところで、またお聴かせすることにいたしましょう。
50年代の黒人ジャズ・プレヤーとしては珍しくクラシックの基本を身に着けていたというGigi Gryce。
Clifford Brownの演奏にある華麗さはないものの、美しい音色でシンプルではあるものの、曲想を広げ淡々と歌い上げている。
50年代の黒人ジャズ・プレヤーとしては珍しくクラシックの素養をしっかりと身に着けていたというGigi Gryce、
このトラックは、演奏活動期間も短かったことから、その残された音源も希少であるため忘れられがちな彼の優れた資質を知ることには打ってつけの、貴重な録音ではないかと思うのです。
さて、今回聴いていただいたジャズのカラオケという、珍しい一品。
音楽を楽しむには打ってつけの肌合いとなった今日この頃、この演奏を聴きながらご自身のソロを奏でてみるのもまた一興、アドリブこそ命のジャズ、そうしたことでジャズの醍醐味、また知っていただければと思います。
Track Listings
1.Sometimes I'm Happy
2.Embraceable You
3.Jor-Du
4.Oh Yeah
5.Sometimes I'm Happy(Karaoke)
6.Embraceable You(Karaoke)
7.Jor-Du(Karaoke)
8.Oh Yeah(Karaoke)
Personnel
Duke Jordan(piano)
Gigi Gryce(alito sax)
Oscar Pettifford(bass)
Kenny Clarke(drums)
Recorded
March 7 1955 NYC
この曲聴いた事あります。妙に心が落ち着く。
by ミスカラス (2015-10-25 18:34)
ミスカラスさん
この曲、私には、心が落ち着くと言う印象がなかったので、言われて聴き直してみたのですけど、確かにおっしゃる通りですね。
Clifford Brown & Max Roack Quintetの演奏では感じられなかった雰囲気、このあたり知的なGigi Gryceのアルトの効果なのかなと思いました。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-10-27 06:26)
こんばんは。
この盤は、お店で最近見ていませんね。
Gigi Gryceは、個人的にやかましい音という
イメージがあり、とっつきにくいのですが、
この盤のGryceの音はゆったりしてて聴けますね。
by ハンコック (2015-11-01 18:05)
ハンコックさん
Gigi Gryceというアーティスト、けしてやかましいことはなく、この演奏などのように中庸をわきまえたプレイが彼のアルトの魅力じゃないかなと思うのですけど。
一度、Art Farmerの”When Farmer Met Gryce”等などで彼のプレイを聴いてみるのもいいかと思います。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-11-02 17:25)
こんばんは。
Gryceは55年辺りのがいいのかもしれません。
When Farmer Met Gryceは、一番いい盤かもですね。
Nica's Tempoも好きです。
煩いイメージがついたのは、The Rat Race Blues、Saying Somethin'あたりを最初に聴いてしまったせいですかね。
by ハンコック (2015-11-02 21:01)
ハンコックさん
最初に聴いた作品のせいで.......。
私も、そうした経験ありますよ。
When Farmer Met GryceやNica's Tempoがお気に入りなら、せいぜいこの当たりを聴いて彼に対するイメージ、もう一度再考していただければと思います。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-11-03 17:50)