プログレ復活の救世主 Marillion:Misplaced Childhood(過ち色の記憶) [音源発掘]

異常なほど早い今年の梅雨の訪れ。
西日本では、例年に比べ2週間近く早いと言われているその訪れですが、聞けば台湾・フィリッピン付近の海水温度が高く多くの水蒸気が天に上り、それが雨雲となり日本に流れ込んでいるためなのだとか。
今年は台風の発生も早かったことから、南の海の水温が高いのではと思っていたのですだが、案の定という感じ。

そう聞くと思い出されるのが、インド近海で発生した大量の雨雲が日本に流れ込み西日本各地に大きな災害を引き起こした昨年の梅雨のこと。

この分では、今年の梅雨は、昨年同様大きな災害をもたらす危険性大のように思え、何か心も落ち着かなくなってしまう今日この頃。

と言いながら、その心配を慰めようと、前回記事以来懲りもせず浸り続けているのが、ネオ・プログレの世界。
前回は、長きに渡って活動を続けている2つのプログレ・アーティストを取り上げましたが、その彼らを聴き続けているうちに、彼らと共に80年代に入り滅亡寸前であったプログレの世界に、逆風を吹き込むかのようにネオ・プログレ・ムーブメントを立ち上げた、そ代表格ともいえるアーティストであるMarillionを聴き直してみなければと思い立ち、今は、前回紹介のArena、IQに加えMarillionのサウンド釘付け傾聴中となってしまったところ。

しかし、そのMarillion、ヴォーカルのFish在籍時の初期においては大きな評判を呼びアルバム・セールスも一定の成果を上げたのにも関わらず、それと裏腹に元祖プログレの雄であるGenesisの単なるコピーじゃないかという批判が多々あったとにこと。
かく言う私も、彼らを最初に聴いた時は、余りにもGenesisの影が濃すぎるなと感じ、これは単なるGenesisのコピーではないかと失望、1988年のFish脱退、後任ヴォカーリストのSteve Hogarth加入までは、彼らの作品からは遠ざかってしまうことになってしまった批判者の一人だったのですが。

しかし、前回取り上げたAreaやIQなどの作品に出会ってから、ネオ・プログレ・ムーブメントのアーティストには多かれ少なかれあのGenesisの影が宿っているような空気を感じ、そのネオ・プログレの代表格であるMarillionが、その地位を築き上げたFish在籍時の作品も毛嫌いせずあらためて聴いてみたくなり、今はそれらを聴き楽しんでいるところ。

そして今、中でも気に入っているのは、やはりFish在籍時代の最高傑作と言われるこの作品。

Marllion Misplaced Childhood .jpg


1985年リリースの”Misplaced Childhood(邦題:過ち色の記憶)”です。

当時バンドの中心的存在であったFishが、ドイツ生まれのスイス人作家のヘルマン・ヘッセの小説「デミアン-エーミール・シンクレールの少年時代の物語」より影響を受け、自身の体験を題材にして作られたストーリーを持つコンセプト・アルバムであるこの作品、そうしたことを知るとプログレ・オールド・ファンの私などは、Genesisの6作目となる1974年の作品”The Lamb Lies Down on Broadway(邦題;眩惑のブロードウェイ)”が思い起こされてしまい、この作品もGenesisの作品同様、難解で馴染みにくいような気がして聴くのはやめようかと思いつつ、
とにかく、聴いてみなければわからないとその音源にスイッチを入れてみると、それが聴き始めた途端に我が身にフィット。

プログレらしい緻密さと音楽美を保ちながらも、ポピュラリテかつ快活なサウンドが耳に届いて来たのです。


というところで、このMarillionの”Misplaced Childhood”、Fish在籍の1987年のライブ映像でお聴いただこうかと思います。

曲は、"Pseudo Silk Kimono(絹の着物)/Kayleigh(追憶のケイリー)/Lavender"の3曲です。







シングル・カットされ全英2位となった”Kayleigh(追憶のケイリー)と全英5位となった”Lavender"の演奏を含むこのライブ映像、ヴォーカルのFishは、GenesisnのPeter Gabriel と、そしてギターのSteve Rotheryは同じくGenesisnのSteve Hackettと、それぞれその強い影響は感じられるものの、サウンド全体としてはGabriel ・Genesisの漂い煙る暗い影の奥に宿る神秘性は希薄で、沈んだ心に内面を希を明るい太陽の陽の元に導くかの如くの力強いビートの存在が、体を通してこのサウンドの心を伝えてくれているように感じます。

私にとっては、そのことが、Gabriel ・Genesisのとはまた違った、次の世代のプログレとしてのMarillionの魅力であり、それが彼らをネオ・プログレの代表格としての成功に導いた大きな要因のように思えるのです。


そこで、Fish・Marillionの演奏をもう1つ。
今回、Fish時代のMarillionのライブ映像を見ながら執筆して、スタジオ作品だけでは感じられないMa
rillionのサウンドに接してみて、いろいろ得ることも多々あったことから今度もそのライブ映像をご覧いただこうと思います。

曲は、”Bitter Suite(苦い記憶)/Heart Of Lothian(ロジアンの心) ”です。


久々に聴いてみたFish時代のMarillion、聴き終えて確かに初めて聴いた時に感じたGenesisの色の濃さ感じるものの、Gabriel時代のGenesisに比べリズムのメリハリが明瞭で、またGabriel時代のGenesisにあった、暗闇から湧き出るもやっとした神秘の美の世界というイメージ要素は幾分あるも、それよりは明るく何か訴えるようなムード+躍動感を感じる当たりに、やはりロック=ポップ化の波の上にあった80年代にプログレを蘇らせたアーティストの真骨頂を見たように思いました。

それにしてもGenesis、前回に引き続きネオ・プログレのアーティストを聴いて来て、そのスタイル・様式美が後の世代にもしっかりと受け継がれ大きく花開いていること、同様なことを感じているKing Crimsonと共に、今のロックの世界を形作る原点的存在だったのだと、あらためて認識することになりました。



DSC_6198m.jpg


それにしても、いつもに比べ季節の早い訪れを運んでいる今年の気候、そのせいか、私の庭の紫陽花も5月の半ばにはこの通り。
しかし、家の近所を歩いてみても、どこの紫陽花もまだ緑の若芽の状態。

おかげで、私の体の季節時計もここのところ大きく狂いだしてしまって、頭の中はもう6月終わりの気分。
気候に惑わされずに時の感覚、失わなぬように注意、注意の毎日です。



Track listing
All lyrics are written by Fish; all music is composed by Mark Kelly, Ian Mosley, Steve Rothery and Pete Trewavas.
1.Pseudo Silk Kimono
2.Kayleigh
3.Lavender
4.Bitter Suite
 i) "Brief Encounter
 ii) Lost Weekend
 iii) Blue Angel
 iv) Misplaced Rendezvous
 v) Windswept Thumb
5.Heart of Lothian
 i) Wide Boy
 ii) Curtain Call
6.Waterhole (Expresso Bongo)
7.Lords of the Backstage
8.Blind Curve
 i) Vocal Under a Bloodlight
 ii) Passing Strangers
 iii) Mylo
 iv) Perimeter Walk
 v)Threshold
9.Childhoods End?
10.White Feather

Personnel
Fish – vocals;Peter Brian Gabriel cover concept
Steve Rothery – guitars; additional bass guitar;
Mark Kelly – keyboards
Pete Trewavas – bass guitar
Ian Mosley – drums, percussion

Recorded
March – May 1985 Hansa Tonstudio(Berlin, Germany)




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