本日の作品;vol.61 Janis Joplin・Got Dem Ol Kozmic Blues Again Mama! [デジタル化格闘記]

今回のデジタル化格闘記は、60年代後半、彗星のごとくロックシーンに現れ、僅か4年の活躍で消えていった女性シンガー、亡くなって40年過ぎた今も、ロックロール・クィーンと呼ばれ多くの人を魅了し続けているJanis Joplinの作品を取り上げたいと思います。



       

その作品は、1969年発表の”Got Dem Ol Kozmic Blues Again Mama!”(邦題;ジャニス・ジョプリン・コズミック・ブルースを歌う)です。

ジャニスの作品としては、彼女の死の直前までレコーディングが続き、その死によって未完トラックを残して発表された作品”Pear”が名高いと思いますが、ジャニス初のソロ名義で制作されたこの作品も、彼女の別の魅力を味わえる傑作ではないかと思っています。

ビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーのヴォーカリストして一躍スターダムの座に駆け上がった彼女、バンドの停滞した状況に飽き足らなくこのバンドを脱退、ソロとして自分のやりたい音楽を求め作られたのがこの作品。

全体的にブルース色の強いこの作品、このあたりジャニスが敬意を抱いていたといわれる1920~30年代に一世を風靡した、ブルースの女帝ベッシー・スミスの影響が垣間見えるような気がします。

それでは、このアルバムの冒頭を飾るこの曲をお聴きください。



1969年、伝説のウッド・ストックで歌う、伝説のヴォーカリスト
いかがですか。

魂の奥底から湧き出てくるような叫びにも似た歌声。
翳りと自由奔放さ、その相反したものが同居する中、力強い歌声であっという間に観衆を飲み込んでしまうようなステージ、本当に圧巻だと思います。

そんな彼女、その日常は知的でシャイな女性だったといわれ、クラス会でも一人さびしく浮いていた姿がカメラに捕えられていた、ステージの激しさとは正反対の人であったのだそうです。

そうした日常の心の鬱積を歌に託してすべて吐露している、そこに、とめどもない爆発力が生れ、限りないブルーが会場を包んでいく。

そこに彼女のカリスマがあるような、と考えてしまいます。

       

さてこのアルバム、興味深い曲として、ソウルブルースシンガーのニーナ・シモンの歌唱で有名な、”Little Girl Blue”と同じくシモンの歌っていたビージーズのギブ兄弟の手による”To Love Somebody”が収められています。

ゆったりソウルフルに歌い上げるシモンのそれに対し、熱く身を焦がすように歌い綴るジャニス。
聴き比べることで、ブルースの影を漂わせながらロックを歌うジャニス流の解釈がよくわかるように思えます。

そして、さらにその演奏陣。

ジャニスと共にホールディング・カンパニーを脱退した、ギターのサム・アンドリュー、

このアルバムのプロデュースを手掛け、自身としてもオルガンで参加している、ガブリエル・メクラーの他、

このレコーディングの後、サンタナの”SantanaⅢ”のブラスセクションや、ラテンロックグループ、マロで熱いトランペットを聞かせてくれた、ルイス・ガスカ、

後にサンタナのメンバーとなり来日、その来日Live作品”ロータスの伝説”でチック・コリアばりの流麗なピアノを聞かせてくれた、リチャード カモード等、

アメリカ西海岸に集う新進気鋭のミュージシャン達の演奏も聞きものです。


それでは、このアルバムのタイトル曲の”Kozmic Blues ”、
このコズミックはジャニスの作った造語。

ジャニスの手による彼女自身を歌った唄。
没語40年経った今も、その鮮烈なイメージは色褪せることない、そんな彼女の姿をとくとご覧ください。



Track Llist
1."Try (Just a Little Bit Harder)" (Jerry Ragovoy, Chip Taylor)
2."Maybe" (Richard Barrett)
3."One Good Man" (Janis Joplin)
4."As Good As You've Been to This World" (Nick Gravenites)
5."To Love Somebody" (Barry Gibb, Robin Gibb)
6."Kozmic Blues" (Janis Joplin, Gabriel Mekler)
7."Little Girl Blue" (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
8."Work Me, Lord" (Nick Gravenites)

Personnel
Janis Joplin - lead vocals, guitar
Sam Andrew - guitar, vocals
Mike Bloomfield - guitar (One Good Man, Work Me Lord, Mabye)
Brad Campbell - bass, brass instrumentation
Richard Kermode - electronic organ, keyboards
Gabriel Mekler - electronic organ, keyboards
Maury Baker - drums
Lonnie Castille - drums
Terry Clements - tenor saxophone
Cornelius Flowers - baritone saxophone
Luis Gasca - trumpet

Recorded June 1969



       
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レイラ

ジャニス[複数のハート]

ウッドストックの映像で泣き叫ぶように歌う「CryBaby」
を歌うジャニスの激しい歌いっぷりに圧巻されたこと
思い出します。

ご紹介された2曲はブルースというより、伴奏はちょっとジャズ色濃厚な曲調ですけど、不思議とジャニスが歌うとソウルフルでパワーあふれるブルージんな曲へ変貌して聞こえるから、すごいですよね[嬉しい顔]

かっこいいです!!![嬉しい顔]
by レイラ (2011-01-15 16:49) 

マチャ

ジャニスは今でも伝説ですね[嬉しい顔]まさに唯一無二の存在です。
by マチャ (2011-01-15 20:19) 

せいじ

ジャニスいいですね[嬉しい顔]
by せいじ (2011-01-15 20:49) 

ituki

誰の歌だったか 歌詞の中にジャニス・ジョプリンが出て来ていて何する人なんだろうかと思った記憶があります
圧倒されました[ふらふら]
60年代にこんなスゴイ女性がいたっていうのが驚きです 
by ituki (2011-01-15 23:02) 

えい♪

'80年代のメタル・バンドがジャニスのカバーをやっていたので、それがオリジナルを聞くきっかけとなりました。
シンデレラがムーヴ・オーバー、ラフ・カットがピース・オブ・マイ・ハート…のように。
http://www.youtube.com/watch?v=27Fci256nx4
ところで、このラフ・カットのライブ、日本で撮ったものなのですが、ここがどこだかわかりますか? なんとフジテレビで有名になった『お台場』なんです! '85年のスーパーロックで、ラフ・カットが登場したのは確か朝の4時頃ですよ。。。[落胆した顔]
by えい♪ (2011-01-15 23:08) 

老年蛇銘多親父

レイラさん、お久しぶりです。
そして[ハート]&コメントありがとうございます。

=====
ジャニスが歌うとソウルフルでパワーあふれるブルージんな曲へ変貌して聞こえる
=====

まさに、その通りですね。
本当に凄いミュージシャンだと思います。[パンチ]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-16 08:54) 

老年蛇銘多親父

マチャさん[ハート]&コメントありがとうございます。

実に的を得たいいかたですね。[晴れ]

ジャニスの後にジャニスなし。[嬉しい顔]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-16 08:58) 

老年蛇銘多親父

せいじさん[ハート]&コメントありがとうございます。

私も今回記事に書いてみて、あらためてその良さ痛感しました。[揺れるハート]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-16 09:01) 

老年蛇銘多親父

itukiさん[ハート]&コメントありがとうございます。

40年たった今も、彼女の歌には新鮮さがある。

なにか凄い息遣いが聞こえてきて、いつの間にかその嵐の中に呑みこまれてしまているような、気持ちになってしまいます。

じっくりと味わってください。[複数のハート]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-17 21:23) 

老年蛇銘多親父

えい♪さん[ハート]&コメントありがとうございます。

心のかけら、ピース・オブ・マイ・ハートは、アレサ・フランクリンのお姉さんのアーマ・フランクリンの1枚きりのシングル・ヒット、そのカバーなのだそうですね。

ラフ・カット、ジャニスやジミヘンを心から尊敬し、自分達のスタイルで追悼している姿、好感がもてます。[晴れ]

今の若い人達にも訴える何かがある、ジャニスにしてもジミヘンにしても本当に凄いアーティストだと思います。[ふらふら]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-17 21:39) 

takah

ジャニスはいいですね[嬉しい顔]
個人的には今の若い人たちにももっとこういう音楽を聴いて欲しいと
強く思うんですが、やはりそれはエゴですかね[落胆した顔]
by takah (2011-01-21 01:42) 

老年蛇銘多親父

takahさんコメントありがとうございます。

そうですね。[嬉しい顔]

60年後半から70年代初め、多くの若者が新しい自分の音楽を主張し登場して来た時期で、この頃のロックの面白さはそこにあるようにに思います。

ジャニスは、その中でも特異な存在でした。

草食系の若者が多いといわれている現在、開拓精神に富んだこの頃の音楽を是非味わってもらいたい、そう思いますね。[嬉しい顔]
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-21 06:17) 

老年蛇銘多親父

ぽわちゃん[ハート]ありがとう。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-21 06:18) 

老年蛇銘多親父

りなみちゃん[ハート]ありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-01-23 21:22) 

adansonian

涙が出そうになってしまいました。私も Janis Joplin 大好きです。言葉では説明できない声ですよね。お気に入りの曲についてブログ記事書いてみました。Piece of my heart です。よろしければ来てみてくださいね。

http://adansonian.blogspot.com/2011/06/janis-joplin-piece-of-my-heart.html

by adansonian (2011-07-15 01:40) 

老年蛇銘多親父

adansonianさん、初めまして

心のかけらがお好きですか。
この曲は、彼女を一躍スターの座に押し上げたホールディング・カンパニーのLive盤、チープ・スリルに入っていましたね。

彼女のLiveは孤独でありながら無邪気な心を持った彼女様子が偲べるようで、胸が熱くなるものですが、そういう意味で彼女の死後発表された、ホールディング・カンパニー時代と、ソロになってパール時代のバンドとやっている二つのLiveを収録した、Live盤はなんとも言えません。

そして、彼女の生前の様子を題材とした、べッド・ミドラ―主演の映画 ローズもファンには必見だと思います。
by 老年蛇銘多親父 (2011-07-15 05:06) 

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