本日の作品;vol.72;中本マリ、アフロディーテの祈り(Aphrodite) [デジタル化格闘記]

今回は日本人のジャズ・ヴォーカル。
前々回ご紹介した北欧組曲で名を上げた作・編曲家の三木敏悟が、アレンジャーそしてプロデュサーとしての手腕を発揮した1979年の作品、中本マリのアフロディーテの祈り (Aphrodite) としました。

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当時この作品、ジャズヴォーカルの作品としては異例の豪華な布陣で制作されたもので、録音はロンドンのオリンピック・サウンド・スタジオ、バックのオーケストラには名門ロイヤル・フィル・ハーモニー管弦楽団を迎え、またジャズ界からは、ピアノにハロルド・メーバン、ギター ジョー・べック等の大物が顔を揃えている、まさにドリーム・セッションというべきもの。

どんなサウンドか[exclamation&question]長々とお話しする前に、

「北欧組曲」の稿でも聴いていただきました,三木敏悟の作品”グレタ・ガルボの伝説”を、まずはこの豪華演奏陣をバックに歌う中本マリの歌唱で聴いていただきたいと思います。



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しっとり歌い上げる、中本マリ、ロイヤル・フィルのストリングスが、この曲の奥行きをよりの深いものに仕立て上げ、さらにそ優雅さを盛り上げている。
中本マリの資質をきっちりと把握した、三木敏悟のアレンジも冴えも聴きどころです。

さて、このほかの曲、中本マリの資質を十分生かすためには、全曲彼女のためオリジナル曲でという、プロデュースを担当した三木敏悟の意図により、このアルバムのために曲を提供したアーティストの驚きの布陣。

ミッシェル・ルグラン、スティビー・ワンダー、CTIレーベルの多くのフュージョン作品でいくつもの名ストリング・アレンジを提供しているドン・セベスキー、そして当時、爽やかさと知的な憂いをたたえたサウンドで話題を集めていた女性シンガー、ジャニス・イアンと、当代最高のライター揃い、その彼らの曲を東洋の女性シンガーが果たしてどのように料理してるのか、そうした興味が大きく湧いてきます。

そこでその中の一曲、ミッシェル・ルグラン作曲の”You're Gone”を聴いて下さい。



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巨匠ルグランにひるむことなく堂々と歌いきる、中本マリ いかがですか。
渦巻くような音の波の中、それに呑まれることなく、むしろそれを牽引するかのような説得のある歌唱力、痛快ですね。


この痛快なサウンドの一方、今度は女性の憂いの満ちた優しさを感じる曲も彼女は歌っています。
ジャニス・イアン作曲の”Orchids”、三木敏悟のどこか儚さのある美しいアレンジをバックに歌うこの曲も大変魅力的です。



力の入ったこの作品、当時はジャズの作品としてはかなりヒットしたようで、この作品発表以後TVやFM放送で中本マリさんに出会う機会が増えていたように思います。

しかし、けしてコマーシャルベースではなかたためヒットチャートで騒がれることもなく、そんな中で、当時私には、多くの人にこの作品を知ってもらおうと、曲の紹介して回った思い出があります。
そして、それを聴いた方々からは必ずと言っていいほど、賛辞の言葉をいただいたのでした。


さらに今、世界の著名アーティストの力を集めて制作された日本人の手によるこのジャズ作品、30年も前にこんなクオリティー高い作品があったことを、皆様にあらためて知っていただければと思っています。

締め括りは、やはりこの人の曲。
ということで、スティビー・ワンダー作曲の”I'll Get What Is Mine”を聴いてください。



Track listing

1. Purple Dawn-Prologue 栄光のささやき-序曲(Patrick Nopaken,Bingo Miki)
2. Not Another Day (Janis Ian)
3. Too Many Springs(Alan & Marilyn Bergman,Don Sebesky)
4. Orchids(Janis Ian)
5. I'll Get What Is Mine(Syreeta Wright,Stevie Wonder)
6. Legend Of Garbo グレタ・ガルボの伝説(Alice Vipe,Bingo Miki)
7. Strange Diseases(Janis Ian)
8. You Are Gone(Mort Goode,Michel Legrant)
9. Purple Dawn-Epilogue 栄光のささやき-終曲(Patrick Nopaken,Bingo Miki)

Musician

Mari Nakamoto(vo)
Harold Maybern(p)
Paul Heart(p)
Tony Hymas(el-p)
Joe Beck(g)
Frank Stroger(as,fl)
Jamil Nassar(b)
Brian Odgers (el-b)
Louis Hays(ds)
John Martial(ds)
Dave Mattocks(ds)
Dave Snnel(harp)
Jack Rothstein(cond)
London Royal Philharmonic Orch.

Recorded

May 1979

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かなっぺ

この年のダーの大学祭に中本マリさんがゲストで来たそうです。
夜なのにサングラス、秋なのに毛皮のコートの出で立ちに
何を歌ったのかぜんぜん覚えてないそうです[__失恋]
しょうもない、コメント失礼しました[__ふらふら]
私は、名前は知っていましたが歌は聴いたことがなかったです。
by かなっぺ (2011-06-05 20:18) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさんコメントありがとうございます。

そう言えば中本マリさん、この頃よくTVにも出ていて、よく見かけたのですが、何故か毛皮コートのいで立ちっだたように覚えています。(サングラスはなかったけど)

ダ―の大学祭では、当時このアルバムの中の曲をよく歌っていたので、おそらくその中でも一番人気のあったこの曲を歌っていたのではないかと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=i1rdauFWf7A


by 老年蛇銘多親父 (2011-06-08 21:46) 

老年蛇銘多親父

またじさん
SORIさん
thisisajinさん
ねこのめさん
OakCapeさん
neoponさん
ヒサさん
高燃費クララさん
マチャさん
こーいちさん
raccoonさん
Kさん

皆さんご訪問ありがとうございます。

by 老年蛇銘多親父 (2011-06-11 08:42) 

ituki

中本マリさんは 以前ジャニス・イアンの話題が出た時に上の曲を教えてもらいましたよね^^
一番人気の曲だったんですね
「Orchids」にしても ジャニス節というかカラーがよくでていますね

それにしても 豪華なメンバーの曲揃い  びっくりです!
Alan & Marilyn Bergmanも作詞で以前コメント欄にでてきてたけど 何の曲だったかな?^^;

それだけ マリさんへの期待の大きさが伺えますね[ぴかぴか]
by ituki (2011-06-12 15:51) 

老年蛇銘多親父

itukiさん

確かに以前、コメントで紹介しましたね。

今度は、前々回に、このアルバムのプロデュースをした三木敏悟の作曲した作品を紹介したことの続編として、そしてmp3が使えることから、You Tubeにもない曲を紹介できることから取上げてみることにしました。

ちょっと、手に入りにくい作品なので、少しでもこの作品の全貌に触れてもらい、その良さを味わってもらえばと思っています。

by 老年蛇銘多親父 (2011-06-12 20:30) 

老年蛇銘多親父

xml_xslさん

ご訪問ありがとうございます。


by 老年蛇銘多親父 (2011-06-14 04:58) 

tromboneimai

はじめまして。学生時代にビッグバンドをやっていまして、
リサイタルのゲストに中本マリさんをお呼びしました。
その年にアフロディーテの祈りがジャズディスク大賞受賞した直後であり、非常に印象深いコンサートになりました。
Orchids も you are goneもビッグバンドアレンジで
演奏しました。
当時を懐かしく思い出させていただきました^^

by tromboneimai (2012-02-05 09:44) 

老年蛇銘多親父

tromboneimaiさん

初めまして。
中本マリさんのバックで演奏した、いい思い出をお持ちですね。

この当時中本マリさん、このアルバムが当たってTVにもずいぶん自分コンボを従え出演してましたけど、このアルバムの曲のバックは、やはり大編成のオーケストラやビッグ・バンドの方がいいように思います。

それにしても、ビッグ・バンドアレンジで歌う中本マリ、考えただけでも身震いしますね。
by 老年蛇銘多親父 (2012-02-05 10:58) 

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