現代に花咲いた驚異のビ・バップの音;Jacky Terrasson・Lover Man [音源発掘]

緩に急にめまぐるしく変化するピアノ。
それにしても急のスピード、なんという速さか!!

実はこのピアノ、新生Blue Noteレコード10周年を記念して企画されたアルバム”Shades Of Blue”に収録されていたこの演奏を聴いた時の第一印象なのです。



この”Shades Of Blue”というアルバム、ジャズの名門レーベルBlue Noteが1939年設立以来放ってきた往年のジャズの名曲を、現在の新生Blue Noteのミュージシャンの手によって、現代のアレンジで蘇えらせた企画作品なのです。

この作品、Bule Noteが発信したジョン・コルトレーン、ホレス、シルバー、ハンク。モブレー、ハービー、ハンコック等の名曲を、意表を突く現代風のアレンジで登場、往年の名曲が新しい活力を得て迫って来る、その楽しさ溢れるものなのですが、先にお聴きいただいたのは、モダン・ジャズピアノの開祖、バド・パウェルの”The Amazing Bud Powell, Vol. 1 ”に収められていた”Un Poco Loco”という曲。

1951年に録音されたこの曲、速いテンポの多いビバップ・ジャズの中でも、とりわけテンポの速いパウェルの代表曲なのです。

速さ ♪=274でピアノを弾くパウェルの指先からほとばしるようにこぼれ出る、アドリブの凄まじさに驚異の視線が集まったものでした。
それでは、ここでパウェルのオリジナルに耳を傾けてみることにいたしましょう。



いかがですか。
パウェルのピアノも鬼気迫るものがありますけど、冒頭にお聴きいただいたこのピアニストも、それに勝るとも劣らない、いやそれ以上かもしれない輝きを放っていますよね。

そのピアニストの名前は、Jacky Terrasson。
1990年代に出現した代表的なジャズ・ピアニストの一人でなのです。

1990年代というと、他にミッシェル・カミロ、ゴンザロ・ルカルカバとといった凄腕のピアニストが出現していますが、同じ凄腕系の前者二人がカリブ海に浮かぶ西インド諸島の出身でラテンの血を色濃く引いているのに対し、テラソンはフランス人の父とアフロ・アメリカ人の母を持つフランス人。

その音楽も、お聴きいただいてわかるように、様々な変化に富みながら、そのそれぞれが必然的に結びつき構築されている極めてクリエイティブで、そこに同時代の二人のピアニストとは異なった魅力を感じることができる、そのように思えるのです。

それでは、1993年彼の2作目となったアルバム”Lover Man”から、彼の敬愛するピアニストのが好んで演奏していた、この曲をどうぞ。



ビル・エヴァンスの演奏で有名な”Nardis"です。

エヴァンスの演奏とは一味違った、骨太感のあるピアノ。
そこには、バッド・パウェル、セロニアス・モンクといったバップのピアニストから大きな影響は受けた彼のピアノの特徴が出ているように思えるのです。

Jacky Terrasson Lover Man.jpg


それでは、ここでもう一曲。
一体どんな演奏となることかということで、やはりビ・バップの名曲から、、”Donna Lee”を聴いてみましょう。



Track listing

1 Donna Lee
2 Nardis
3 First Child
4 In Your Own Sweet Way
5 Wail
6 Lost
7 Broadway
8 Lover Man
9 Close Enough For Love
10 Love For Sale

Personnel

Jacky Terrasson(Piano),Ugonna Okegwo(Bass), Leon Parker(Drums)

Recorded
November 18&19 1993 New York

幾重にもの色彩に変化するテラソンのピアノですが、この人の歌伴は、また別のしっとりした味わいを感じさせてくれます。
そこで最後に、ヴォーカリストのカサンドラ・ウィルソンとのコラボの"Old Devil Moon"を聴いていただきたいと思います。


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コメント 7

ダー

こんばんは。
”Un Poco Loco”、この曲を聴いたのは、
jazzを聴き始めた頃に、FMで流れていたのが最初でした。
当時は単純に”ゴイス~”な感じでした。懐かしいです。

by ダー (2011-08-03 23:30) 

老年蛇銘多親父

ダ―さん

私も、パウェルを初めて聴いたのは、ジャズと親しみ初めて間もなくのことでした。
当時、ルースト盤のパウェル芸術という、絶頂期のパウェルを捕えたが作品が初めてLP化され、それを買ったのがきっかけです。
このLP、原盤が紛失していて個人所有の78回転SP盤から復刻をしたものだったので、音は最悪でしたが、パウェルのピアノの輝きは強烈でした。

この”Un Poco Loco”、3Takeがあって、それぞれ聴いてみるとリズムにかなり苦労している様が見えて、面白かったですね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-05 06:21) 

snowman

お久しぶりです^^
Shades Of BlueはCD持ってます。個人的にはMaiden VoyageやSong For My Fatherのような感じの方が好みですね。あとはAlligator BoogieとかKool-O Kool-Oとかも…^^;
by snowman (2011-08-05 22:30) 

老年蛇銘多親父

snowmanさん

このジャズの名曲ばかりの作品、現在旬のミュージシャンがどんなアプローチをしているかが楽しみな一枚なですけど、どれも工夫を凝らした力のハ入った名演ぞろいの感がありますね。

Maiden Voyageは、ダイアン・リ―ブスの表現力豊かなヴォーカルとジュリ・アレンの独特なピアノがいいですし、

Song For My Fatherは、リニ―の女性らしい優しさ満ちたサウンドが、この曲の別の魅力を引き出してるかのようでまたいいですね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-06 10:51) 

かなっぺ

Jacky Terrasson初めて知りました。
Donna Lee ♪いいですね~
ミシェル・カミロを間近で見ましたが
すっごい弾きっぷりに瞬きを忘れるくらいでした[__目][__ぴかぴか]


by かなっぺ (2011-08-07 23:16) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさん♪

スウィング・ジャーナルでは、出て来た時はカミロよりテラソンの方が評価が高かったのですけどね。

今やYOU TUBEを見てもカミロはたくさんあるけど、テラソンは本当に少ない。

ピアノ協奏曲を書いてからのカミロの音楽、深みが増し創作意欲満々たけど、テラソンは近年新作にお目にかかれない。

今における知名度の違い、そんな所にあるのかなと思っています。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-08 05:35) 

老年蛇銘多親父

TAMAさん
ねこのめさん
Markさん
ぷにょさん
マチャさん
しまりすさん
みー☆さん
せいじさん

niceありがとうございます。

by 老年蛇銘多親父 (2011-08-15 05:21) 

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