スタジオ・ミュージシャンの苦労が生んだピアノ;Joe Sample・Carmel(渚にて) [音源発掘]

70年代半ばから80年代初めに吹き荒れたフュージョン旋風。

今日のお話は、そのフュージョン旋風の中心となったのバンド、The Crusaders、そのキーボード奏者として、バンド結成当時よりバンドを牽引し続けてきた、Joe Sampleの作品を取り上げることにしたいと思います。



最初に、お聴きいただいたこの曲、ピアニストJoe Sampleとしての初のリーダー作品”Rainbow Seeker"(邦題;虹の楽園)の中の1曲”Melodies Of Love”。

今やフュージョンを代表する名曲となっている曲なので、ご存知の方も多いと思います。

そこで今回の作品は、この作品・・・・・・・    ではなく、この作品でクルセーダースの音楽とはまた違った魅力を生み成功を収めたサンプルが、自身もベストの作品と称賛している1979年発表の2作目のリーダ―アルバム、

carmel joe sample.jpg

”Carmel”(邦題;渚にて) といたしました。

サンプルがその母体であるクルセーダーズ共にデビューしたのは、1961年のこと。
グループ名もクルセーダーズの頭の上ににジャズの名を冠したThe Jazz Crusadersとしてでした。

ところが、その頃の彼らの演奏は、今とは違いこんな風だったのです。



ファンキーな香りを漂わせたオーソドックスなジャズ演奏ですね。
ここでのサンプルのピアノも、彼が極めて優れたジャズピアニストであることがわかる好演を繰り広げています。。

このジャズを冠したクルセ―ダ―ズ、当時一応の成功を収め全部で17枚のアルバムを残しているのだそうですが、その時期サンプルは、このグループでの活動のかたわらスタジオ・ミュージシャンとしての活動も精力的に行い、さまざまなジャンルの音楽を演奏しつつ、それらの音楽を吸収していたのです。

Wikiにも、1966年、パーシー・フェイスのオーケストラのピアニストとしてが、彼の初来日だったとあり、そのあたりにも彼のジャズの範疇にとどまらない、行動範囲の広さの片鱗を垣間見れるように思います。

そして70年代、マイルス・ディビスを中心とファミリーの手によりフュージョンの幕開けが告げられると、それまで培ってきた豊かな音楽経験の発露の当然の帰結として、それまでのジャズに範疇にとどまらない音楽を始めるとともに、グループの名前も頭に冠していたJazzを外し、The Crusadersとして活動を開始、一躍ビックネームの階段を駆け上ることになったのでした。


さて、主にアコースティック・ピアノ中心にした、クルセーダーズのファンク色の強いサウンドと異った、軽快な爽やかさと美しくよく歌うサウンドが魅力のサンプルのピアノ・リーダー作品。

前作””Rainbow Seeker"(虹の楽園)も素晴らしいのですが、”Carmel”(渚にて)では、さらにそのリリカルなメロディに磨きがかかり、サンプルの美しいアコ―スティックピアノのプレイにもその響きが増し、深い余韻が感じられるようになっていると思えるのです。

そして、そのピアノと共にサンプルも訪れたという、アメリカ西海岸で最も美しい場所といわれるカーメルの風景が目の前に浮かび上がり、あたかもその場所に連れこまれてしまったような気分にさせられてしまうのです。

長い習練の時を経て、開花した新しいピアノの世界、そのサウンドの一コマ一コマに深い味わいが潜んでいる、それがサンプルのピアノのように思えます。



Track listing

1 Carmel
2 Paintings
3 Cannery Row
4 A Rainy Day In Monterey
5 Sunrise
6 Midnight And Mist
7 More Beautiful Each Day


Personnel

Joe Sample(Piano、Keyboards), Abraham Laboriel(Bass), Byron Miller(Bass), Dean Parks(Guitar), Dean Parks(Guitar (Electric)), Hubert Laws(Flute), Milton Jackson, Jr.(Guitar (Electric)), Paul Jackson Jr(Guitar), Paulinho Da Costa(Percussion), Robert Wilson(Drums), Stix Hooper(Drums)

Release
1979


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コメント 14

せいじ

透明感のあるピアノからファンキーなピアノまで
とても器用なピアニストですね。
by せいじ (2011-08-21 09:43) 

かなっぺ

CARMEL
この一枚だけ我が家にありました。
私は聴いた事が無かったので[__あせあせ]
ジャケットも初めて見たよ~[__あせあせ]
ダーが今かけて聴いています[__るんるん]


by かなっぺ (2011-08-21 21:01) 

ダー

そのダーです。内輪でまわして失礼します。

久々に聴きましたが、時代を感じますね。
例えば、トラック4の”A Rainy Day In Monterey”なんて
『Fender-Rhodes』の素の音、小細工なしのそのものでした。
時間をおいて聴くと改めて気付く事もありますね。

by ダー (2011-08-21 23:15) 

マチャ

ちょうど同じ日に僕もジョー・サンプルを取り上げました[__チョキ]
本当に素晴らしいミュージシャンですよね[__わーい]

by マチャ (2011-08-23 18:26) 

老年蛇銘多親父

せいじさん

私も最初は器用なピアニストという風に思っていたのですけど、よく聴いてみると、それだけではなく、それが幅広い音楽性に裏打ちされている本物であることが見えて来たように思います。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-24 04:48) 

老年蛇銘多親父

かなっぺさん ダーさん

ご夫妻でコメントありがとうございます。

フュージョン全盛時代、私自身、この手の音楽はあまり好きではなかったですけど、10年ほど前、冒頭の映像で紹介したのと同じく1983年のクルセーダ―ズLive Under The Skyのエアチェックテープで、この”Melodies Of Love”を聴いて、サンプルのピアノが気に入り聴くようになったのです。

そういう意味で、時間をおいて聴き直すとまた新たな発見があるは同感ですね。

本当にいい作品というのは、時を経ても輝きを失っていない、それを見極められますしね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-24 05:10) 

老年蛇銘多親父

マチャさん

Legendsのサンプル、CARMELのクリアな演奏とは異なり、クルセーダーズ・タッチのファンク的ピアノという印象でした。

ファンクとクリアなフュージョンが混在しているあたり、そこにサンプルのピアノの魅力があるように思います。

by 老年蛇銘多親父 (2011-08-24 17:30) 

ituki

うれしい^^[ラブハート] 
親父さん このアルバムよくご存知だったんですね
うちのどの記事で 親父さんとジョー・サンプルの話をしたか探しましたよ^^;
丁度モンクの名前が出て そっちに行っちゃったんでしたね  笑

サンプルがクルセーダーズにいたなんて ちっとも知りませんでした[汗汗]
このアルバムに出会った時 これが私の求めてたものって感じでした
【軽快な爽やかさと美しくよく歌うサウンドが魅力】
まさにこのとおり!さすが親父さん^^

親父さんのおかげで とても懐かしいサンプルに再会できて感謝です[ぴかぴか]

私の為に これ残しておいてくれました?  笑
Joe Sample  「More Beautiful Each Day 」
http://www.youtube.com/watch?v=vIokSYqnmYQ&fmt=18

by ituki (2011-08-25 00:37) 

yukihiro

当時、ビバップ中心に聴いてたこともあり
こんなのジャズじゃない!!と思ってましたが・・・・・・
今、聴いてみると深い演奏であることに気づきました。

by yukihiro (2011-08-27 13:09) 

老年蛇銘多親父

itukiさん

「サンプルがクルセーダーズにいたなんて ちっとも知りませんでした」とのこと、80年代以後サンプルを知った人って、そうなんだという思いです。

ということは、この虹の楽園とカーメルの二つのアルバムでピアニスト サンプルの方が有名になってしてしまったということなのだなと思いました。




by 老年蛇銘多親父 (2011-08-28 11:46) 

老年蛇銘多親父

yukihiroさん

私も当時はフュージョンに懐疑的な思いを抱いていたのですけど、10年ほど前にクルセーダ―ズの80年代の演奏を聴き、サンプルのピアノに興味を覚えたものなのです。

時おいて再評価する、そういう姿勢、大切ですね。
by 老年蛇銘多親父 (2011-08-28 11:56) 

老年蛇銘多親父

ねこのめさん
R8さん
thisisajinさん
Lobyさん
りなみさん

niceありがとうございます。
by 老年蛇銘多親父 (2011-09-05 18:01) 

ミスカラス

The Jazz Cruseders時代の唯一のラテン・ジャズアルバム。
どうしても聴きたくて、中古盤ですが最近手に入れましたよ。
タイトルはChile Con Soul。これが実に私好みで気に入りました。ウェイン・ヘンダーソン(トローンボン)、ウェルトン・フェルダー(テナーサックス)音のブレンドが実に心地よく、そこにピアノのジョー・サンプルが絡んでくる。ゲストのヒューバート・ローズのフルートも高揚感が高まります。ジョー・サンプルのカーメルのアルバムは今聴いても実によいアルバムです。Cruseders時代のフュジョーンアルバム?アナログ盤何枚か持っていましたが、今聴くと何か古臭くて全然ファンキーじゃないし高揚感が感じられない。リアルで聴いてないJazz Crusedresのアルバムの方がファンキーです。Chile Con Soulの一曲目のAgua Dulceという曲。ジョー・サンプルの曲らしいのですが心地よいですよ。

http://youtu.be/8X83jo7o7Hw
by ミスカラス (2012-11-22 22:09) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

The Jazz Cruseders時代のラテンジャズアルバム、あるんですね。

それにしてもクルセーダーズ、ずいぶん聴いていたんですね。
ファンク自体、ラテンのエッセンスを取り入れていたことを考えると、ミスカラスさんの今の好味よくわかります。

確かに、クルセーダーズのファンク、今や古色蒼然となってしまった感がありますが、なぜか今でもストリート・ライフは好きなんですよね。
by 老年蛇銘多親父 (2012-11-25 20:04) 

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