是非とも聴いて欲しい日本の隠れた逸材の作品;三木敏悟・海の誘い 本日の作品;vol.97 [デジタル化格闘記]

毎日身が縮むような寒さが続く今年の冬。
こう寒いと体だけではなく、心の方まで縮こまり、どうも憂鬱な気分になってしまいます。

ところが先日、そんな憂鬱な気分を少しでも和らげようと、手にした一枚のアルバム、ものは試しと聴いてみると、信じられないことに、あっという間には心を覆っていた深い霧がとれ、とても爽やかな気分になってしまったのです。

そこで、今日の作品は、その爽やかさをもたらしてくれたそのサウンド。
日本の作編曲家、三木敏悟の1978年の作品”海の誘い;Back To The Sea”をご紹介したいと思います。

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この三木敏悟さん、この人の作・編曲を担当した作品については、2年ほど前に、

高橋達也と東京ユニオンの北欧組曲
http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2011-05-28



中本マリ、アフロディーテの祈り:Aphrodite(http://hmoyaji.blog.so-net.ne.jp/2011-06-04

の2作品を取り上げ記事を書かせていただいたことがあるのですが、その2つ今だ多くの方のアクセスをいただているもの。

というのもこの方、WEBを見てもその記事は極端に少なく、その音楽もYOUTUBEへの出展もわずかしかない、そのうえCDもあまり出回っていないせいか中古市場では非常な高値がついていて、この”海への誘い”などはAMAZONで見ると、1枚10000円ももの高値を呼んでいるという、かなり希少な存在なのです。

そうしたことで、私のブログに訪れてくれた方々も、以前、この人の作品を聴き、また聴きたくなったのだけど、その音源が希少であることから探しあぐねたあげく、私のブログで音源を見つけ訪問してくれた、どうもSo-netブログ以外の人が多いようなのです。


このこと、実はこの2つの記事を書いた私自身、30年前の古いレコードだし、その三木敏悟という名、その知名度も低いことから、この記事を訪れてくれる人はかなり少ないであろうと思っていたのですが、それはなんとも嬉しい誤算。
その多くの訪れのおかげで、永きにわたり愛され感動を与え続けている、三木敏悟の音楽の素晴らしい資質をあらためて感じることが出来たのでした。


さてこの”海の誘い”、前に紹介した2作が、三木敏悟が作および編曲家として参加したものだったのに対し、作編曲はもとより自らオーケストラを率いタクトをとった、初の自作自演作品。

文字通り海をテーマにした作品なのですが、このレコーディングに参加したミュージシャンも、テナー松本英彦、トランペット安孫子浩、ピアノ今田勝、エレクトリック・ピアノ菊池ひみこ、ヴォーカル中本マリなど、当時の日本ジャズ界の一流どころが一堂に会した豪華なもの。
その日本名プレヤー達の、知的かつ抒情味溢れるプレーが聴きどころとなっています。

そしてさらにはその使用楽器、ジャズのビッグバンドでは使われることが珍しい、オーボエやフルート、おまけにファゴットといった木管楽器が使われ、いたるところでそのサウンドに斬新な色彩を添えているのです。

そして、そこに使われているビートも、単なる4ビートだけではなく、ロックやファンクのビートも取り入れ、シンセサイザーがそのサウンドを紡いでいく。
今聴いても、とても30年も前のサウンドとは思えない、モダンな感覚に満ちた演奏がそこにあるのです。


そのサウンド百聞は一見にしかず、なにはともあれ三木敏悟とInner Galaxy Ochestraの演奏、爽快さを感じたこの曲から聴いてみてください。






このアルバムの冒頭飾る曲”海に還る(プロローグ);Back To The Sea(Prologue)です。

ロック・ビートも前衛ジャズの要素もある、それまでのジャズの伝統を踏まえながらの斬新なアレンジ、三木敏悟のペンはそうした手法をふんだんに駆使して、海の一日を水彩画のごとくに生き生きと描いています。

他の曲でもそうなのですがこの人ペンなる曲、視覚的世界に訴えかける何かがある、そうした印象を感じるのですがいかがでしょうか。


この人の経歴などについては、以前、高橋達也と東京ユニオン”北欧組曲”の記事で紹介しましたので、そちらを見ていただくこととして、この人の音楽もっと聴いていただきたい。
ということで続いてもう1曲。

曲は同じく海に還るその(エピローグ);Back To The Sea(Epilogue)です。

中本マリのヴォーカルによって歌われているこの演奏、プロローグの演奏とはまた違った表情を見せてくれてます。



I can hear the voice
in the wind from the sea
I will go wherever She'll lead me
The voice is calling,
come back where we were born
          -詩:三木敏悟-


エピローグのドラマティックな活動的な海の世界に対し、しっとりとした穏やかに優しく命をはぐくむ海の世界がここにあるように感じます。

同じ曲でも、これだけ表情の違いがある、三木敏悟のアレンジの冴えが見て取れる演奏ではないかと思います。



この”海の誘い”大変完成度の高い作品でどの曲もお奨めばかりなので、全曲をお聴かせしたいところなですが、PV作りも下手ながらにも音だけではすまない何かをしたくなってしまうものがある。

そうした訳で、作るのにも暇がいるということで、今回はこの2曲でおしまい。
できれば、また次の機会にPvを仕上げて、またお聴かせできればと考えています。


それにしても三木敏悟、前にも書いたことですが、日本にもこうした優れた作曲家がいること、是非とも忘れないでいて欲しいものだと思います。

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Track listing
1.海に還る(プロローグ) Back To The Sea(Prologue)
2.海と空の抱擁 Swingin’On The Horaizon
3.潮騒に聞く When Waves Sing
4.ナチュラル・フロウ Natural Flow
5.野郎人魚の宴 Merman's Dance
6.海に還る(エピローグ) Back To The Sea(Epilogue)


Personnel
中沢健次(tp) 吉田憲司(tp) 安孫子浩(tp、fh) 岡野等(tp、fh) 横山均(tp)
南浩之(hr) 鍵和田道男(tb) 塩村修(tb) 及川芳雄(bt) 岡田澄雄(bt)
久保修平(tub) 西沢幸彦(fr、alt fr、picco) 石橋雅一(oboe) 鈴木正男(cl、ss、as)
森剣治(as、ts、cl) 松本英彦(ts、fr) 大畠條亮(fagotto)
中富雅之(ARPオデッセイ、プロ・ソロイスト、ミニ・ムーグ、ソリーナ)
菊池ひみこ(ep、クラヴィネット) 松本正嗣(g、eg) 古野光昭(b) 成重幸紀(eb)
中村よしゆき(ds) 榎本卓司(ds) 古谷哲也(per) 中本マリ(vo) 原久美子(ヴォイス)


Recorded
1978年6月20、27~30日 
東京エピキュラス・スタジオ

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ミスカラス

この方プロフィールみたら釣りバカ日誌の音楽も担当してるんですね。海に拘りがあるんですね。
by ミスカラス (2013-02-24 17:22) 

老年蛇銘多親父

ミスカラスさん

そのこと気付きませんでしたけど、そういう見方にも出来ますね。

ただ、もう少し考えてみるとこの海の誘いがあったことからこそ、釣りバカ日誌の音楽につながった、なんて、そういう見方もあるのではと思いました。

しかし、それも突飛な考えかも。
やっぱり海に縁があるのですかねえ?
by 老年蛇銘多親父 (2013-02-26 21:49) 

tromboneimai

1977年に大学に入学に入学したので、この頃は初めてビッグバンドジャズに触れ、といいますかJAZZ自体は初めてでしたが何もかもがとても新鮮な時期でした。 当時三木敏悟さんがとても脚光を集めている時で、その時代背景が懐かしく蘇ってきました。
インナーギャラクシーオーケストラならぬミンナーギャラナシーオーケストラなんてもじってあそんでいたのも今や昔です(笑)
by tromboneimai (2013-03-19 02:27) 

老年蛇銘多親父

tromboneimaiさん

お久しぶりです
これが出た時大学生、青春でしたね!!
私は早、しがないサラリーマンでしたけど。

しかし気持ちは学生時代、それまで日本のビッグ・バンドなんてと思っていたのですけど、三木敏悟のおかげでその質の高さを知りましたね。

そして山木幸三郎さんも。
この時代の、日本のビッグ・バンド、本当に素晴らしかった!!


by 老年蛇銘多親父 (2013-03-20 20:21) 

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