日本人の企画が生んだ名クインテット;David Matthews・Manhattan Jazz Quintet [音源発掘]

前回の記事「虹を渡った少女が今に残した名曲;Over the Rainbow(虹の彼方に)」では、コメントをいただいた皆様より、それぞれお好きな”虹の彼方に”をご紹介いただき、世に出てから75年を経た今も多くの人に愛され続けているこの曲の魅力の新たな一端を見させていただきましが、今回はその記事の中で取り上げた一人のアーティストの作品のお話。

ストリングスを加えたジャズの”虹の彼方に”を聴かせてくれた、ピアニストでアレンジャーのDavid Matthews。

前の記事でもご紹介いたしましたが、このマシューズ、彼を中心としたクインテットであるManhattan Jazz Quintetや、彼の絶妙のアレンジ・テクニック駆使し聴かせるビッグ・バンドのManhattan Jazz Orchestraで今も幅広い活動をつけているアーティスト。

今回は、その彼の現在の活動の出発点となったこの作品。

Manhattan Jazz Quintet.jpg


1984年 発表の"Manhattan Jazz Quintet"を取り上げることにしたいと思います。

さて、このマシューズを中心に中堅どころのプレヤーを配したこのクインテット、この結成は通常あるミュージシャン同士の自発性によるものではなく、今は廃刊となってしまいましたが、当時の日本のジャズ・メディアの核として出版されていたジャズ月刊誌スィング・ジャーナル社とキング・レコードの共同企画によるものだったという、メディア主導により誕生したものだったのです。

こうしたメディア主導による企画作品、本来、こうした作品に興味の持つことの少ない私なのでが、この作品、演奏ンバー見てみると、トランペットにLew Soloff、そしてドラムにSteve Gaddと私の贔屓アーティスト2
人の名が見える。

特にトランペットのルー・ソルフは、1968年、当時彼が在籍していたブラスロック・バンド Blood, Sweat & Tears時代からの演奏で聴き始め、私をジャズの世界に案内してくれたアーティスト。
その後は、Miles Davisとの共演でモード・ジャズ時代の幕を開いたコンポーザーでアレンジャーのGil Evansのオーケストラの秘蔵っ子となった彼のプレーに注目、そこでの素晴らしいプレーにも接したこともあって、もっと彼のトランペットをに聴いてみたい思っていた矢先のこと、そこに登場したのがこの作品、いつもならその素生から敬遠してしまうはずなの作品なのに思わず手が出してしまったのです。

そしてそのサウンド、ソルフのプレーの輝きもさることながら、日本人の企画とあって収録された日本人にお馴染みの楽曲も、マシューズの手によって新な衣装に身を包みかえられ、とてもメディア先行で生まれたクイッテッとの音とは思えない新鮮な趣を持って耳に届いて来たのです。

それではそのサウンド、皆さんお馴染みのこの曲を聴いていただき、このクインテット放つ深いジャズの香り、まずは味わっていただくことにいたしましょう。




偉大なアメリカの作曲家 ジョージ・ガーシュウィンの名曲 ”Summertime”ですね。

静謐さと激しさが、入り混じる”Summertime”。
バリバリと吹きまくるルー・ソルフのトランペットの輝きが光ります。

そして、それに続いて現れるマシューズのエレガントな装いを纏ったピアノ・ソロ。
そのバックをサポートする絶妙のタイミングでアクセントを打ち鳴らすガットのドラムと、このクインテット唯一の黒人プレヤーであるCharnett Moffettの粘りけのあるベースが、そのソロをさらに引き締まったものに仕上げているように思います。


だいぶ以前のことですが、あるTV番組でデビット・マシューズを取り上げ、ニューヨーク・テイストを感じさせるアーティストして紹介していましたが、今度の曲はそのニューヨーク・ティストが感じられる演奏を1曲。
曲は、あの偉大なるアーティストの有名なオリジナル曲です。



マイルス・ディビスの”Milestones”。
どこかブルーな翳りを感じるマイルスの演奏に対して、こちらの演奏は、夜の大都会の躍動のムードと明るい快活が感じらるように思えます。

そうした感覚、実は、この作品が出た当時には、このクインテットの演奏のようにブルーが希薄でく、ソロを含めて緻密なアレンジが施された音楽は、ジャズではないという批難がかなりあったように記憶しているのですが、このクインテットも結成以来、早30年。

その間、メンバーを変えながらもマシューズ中心に活動を続け、未だ高い人気を誇っていることを考えれば、それは、多くの聴衆によって、これも現代のジャズ・スタイルの一つとして認知されたということ。

音楽を、一つの形に決めつけ聴くのではなく、その時代時代の背景を感じながらそのスタイルの変遷を聴き楽しんでみる。
そのことの大切さを、このクインテットは教えてくれたように思います。

それでは、最後にJohn Coltraneによって取り上げられジャズの名曲となった” Favorite Thing”を聴きながら、日本人の企画によって誕生したこの名クインテット、その彼らの生み出す現代のジャズの響きを楽しみながら、今回のお話を締め括ることとしたいと思います。



Track listing
1..Summertime
2 .Rosario
3.Milestones 4.My Favorite Thing
5 .Airegin
6 .Summer Waltz

Personnel
David Matthews(p)
Lew Soloff(tp)
George Young(ts)
Charnett Moffett(b)
Steve Gadd(ds)

Recoded
July 11, 1984
nice!(9)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:PLAYLOG

nice! 9

コメント 5

ハンコック

こんばんは。
David Matthewsは、自分がjazzを聴き始めた頃は、既に超人気みたいで、
タワレコでも紹介されて試聴して直ぐに買いました。たしかMatthewsが中央に写ってて、青いジャケットで、ビッグバンドっぽかったような気がします。
swingとかeast,westとか余り分からず、なんでも吸収してたので、大編成でも
とても楽しめ、良く聴いてました。
まだ棚の何処かに仕舞い込んでるので、引っ張り出して聴いてみようかと。他の面子が、気になります。

Steve Gaddはよく耳にしますが、
何に出てたかなあと調べたら、
jimm hallのアランフェス協奏曲とかで
やってた人でしたね。そう言われると、なんとなく演奏の雰囲気が、似ているような気がします。
by ハンコック (2015-01-24 22:49) 

ハンコック

それから、Lew Soloffのペット良いですね!
こういう吹き方好きです。
by ハンコック (2015-01-24 22:51) 

老年蛇銘多親父

ハンコックさん

Matthewsが中央に写ってる青いジャケットのアルバム?

マシューズの作品、メンバーが写っているジャケットのものって意外と少ないので何かなと思ったのですけど、もしかするとそれ結成20周年の時の、”A列車で行こう”なのではない
でしょうか..........。

このマシューズのクィンテット、往年のジャズのスタンダードを現代のアレンジで、ロックやフュージョンの曲も取り上げ新たなアレンジで聴かせてくれている、このあたりがジャズ初心者の方にも馴染みやすく、また通の方には往年の名曲がどんな風に生まれ変わっているのか等、人それぞれ、いろいろな聴きどころを持っている、そうしたところに彼らの人気の秘密があるように思えます。

ガッド、彼のドラムの魅力は重いリズムと、スピーディーなスティックさばきから来るそれとは裏腹の軽快感。
このプレイ、Chick Coreaの”Friends”と言う作品など聴いてみるのもいいかかと思いますよ。

それにしても、Lew Soloff、いいトランぺッターでしょ。
こういっていただくと、長年彼のトラペットに親しんで来た私としても、大変嬉しく思います。


by 老年蛇銘多親父 (2015-01-25 09:18) 

ハンコック

こんにちは。
問題のCD見つかりました。
David Matthewsがやってるのでは無くて、アレンジ&プロデュースでした。
それで、ジャケの真ん中に写ってたのは、Matthewsではありませんでした。
大変失礼しました。
今日までMatthewsの盤だと思ってたのでくけど。ちゃんと覚えていないものですね...
当時Matthewsの名前は売れてましたので、これで買った盤ですね。
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/B00005HUFR/ref=mp_s_a_1_7?qid=1422156775&sr=8-7&pi=AC_SX110_SY165_QL70&dpPl=1&dpID=41892DYNDCL&ref=plSrch#

当時、洋楽から流れてjazzにいったからですかね、B.scaggsの曲とか何度も聴いてました。
by ハンコック (2015-01-25 12:46) 

老年蛇銘多親父

ハンコックさん

聴いているとダレがちなトロンボーンのジャズ。
そのトロボーン4本のアンサンブルでこの楽器の新しい魅力を引き出したスーパー・トロンボーンとマシューズのアレンジのコラボとは。

興味をそそられますね。


by 老年蛇銘多親父 (2015-01-27 06:42) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0