今あらためて強くする平和への思い;五つの赤い風船・まぼろしのつばさ共に 本日の作品;vol.125  [デジタル化格闘記]

長かった夏休みもいよいよ終わり。
子供さんを持つお母さん方の中には、子供たちが学校に行きホット一息と考えている方も多いと思いますが、この8月という月、いつも思うことなのですけど、何故かお盆前後に傷ましい事件が起きる、そうしたこと多い月のように感じるのです。

そして、今年もその例にもれず、中国天津市の危険化学物質倉庫の爆発、高槻の中学1年生殺害事件と哀しい出来事が相次いで発生、この季節どこかに見えない魔物が潜んでいるのではと考えてしまうほど。

そうした哀しい出来事のあった8月、さらに回想してみると、今年は戦後70年。

実際に戦争の体験をした世代の高齢化、年々減少して行く中、お盆中は、多くの犠牲を戦争の愚かさ、悲惨さを今の世代に伝えようということだったのか、TV番組も例年に増して各局先の大戦関係の特番を組み、また、皆さんのブログにもそうした話題に触れたものが多かったように思いました。


私も、その番組や皆さんの記事を拝見して、あらためて戦争を愚かしさを認識、その無意味さを後世に伝えていかねばならないと考えたのですけど、そこで思い出したのが、若き日、巷で騒がれていた反戦運動に心を惹かれ、その真っ只中で聴いたとある曲のこと。

当時の反戦への思いと、この夏に起きた哀しい出来事、そのやるせない辛い気持ちから、確かあの歌の録音テープが残っていたはず。
今、聴けばあの当時とは違った何かを感じるかもしれぬ、だからもう一度聴いてみたい!!
と、部屋の中を引っ掻き回し探し出しようやく見つけたそのテープ、早速デジタル化の作業にとりかかることにしたのです。

そうして出来たデジタル、その思い入れのサウンドが、こちら!!!
いかんせん古い曲なので、ご存じない方も多いかと思いますけど、一度耳を傾けてみてください。



西岡たかし率いる五つの赤い風船の演奏で、曲は”まぼろしのつばさと共に ”です。

この演奏は、1972年に解散した五つの赤い風船が、その7年後の1979年に2回のライブのために再結成、その時のステージ模様を収録したものなのです。


さて、”まぼろしのつばさと共に ”という曲、お聴きになっていただき、そこにダイレクトに語られる強い反戦へのプロパガンダがあるのを感じていただいた思うのですが、そうした曲が生まれ歌い継がれることとなった背景には、この五つの赤い風船の活躍した時代の世情が大きく反映されているのです。

このグループが誕生したのは1967年のこと。

それは、1960年代半ば、太平洋戦争後、活発化した民族独立の戦い、そこに東西冷戦の火種が加わり暴発寸前の危機にあったベトナムでの紛争、そこにアメリカが本格的軍事介入を始めた頃で、その攻撃は日増しに激しさ加えて行き、このグループの誕生したこの年には、B52大型爆撃機がその戦線に投入され、北ベトナム爆撃(所謂 北爆)に向け沖縄より作戦を開始した時期だったのです。

そして、さらに日本では、1960年に締結された新日米安全保障条約(新安保条約)が、1970年に10年間の期限が切れ、その後1年毎の自動延長となるその期をとらえ、条約を破棄させようという機運が高まり、ベトナム攻撃の後方基地となってしまった当時の日本の現況と合わせ、反戦、安保破棄を唱える学生運動の波が急速な広がりを見せていた時期だったのです。

そうした時代の流れの中、当時の音楽界は、英国ではビートルズ旋風が吹き荒れる中、戦争の当事国であったアメリカでは、Bob Dylan、Joan Baez、Peter, Paul and Mary 等、反戦を唱え歌うアーティスト(プロテスト・シンガー)が現れ、多くの若者とともに平和訴えるフォーク・ソングのウェーブを展開していたのですが、それから少し遅れて日本にもその波が押し寄せ、この五つの赤い風船をはじめ岡林信康、小室等、高田渡などといった人たちが登場、反戦、平和を唱える日本の若者の心を摑んでいったのでした。

五つの赤い風船 元.jpg


と当時のことを思い出しながら、ここまで書いてふと思ったのは、中東の動乱に端を発した世界規模の拡散発生するテロ問題、そして国内では国の防衛のあり方を巡って審議が続く安保法制問題などの諸問題に揺れる現代の世情、そこに当時とくらべ、それに対する人々の熱気、そして問題の質の違いはあるけれど、その底辺には、何か共通項があるように思えてきたのですが、どうお感じでしょうか。



このような時代背景に誕生した五つの赤い風船をはじめとするフォーク・ソングのウェーブ、しかし、1970年の安保条約延長成立後は、それまでの熱き運動の波は次第に沈静化、反戦・平和を唱えたプロテストなサウンドはその影が薄くなって行くことになってしまうのです。

ところが、その後60年代後半に生まれたこのフォークの波、それは既に多くの人々の日常となっていたのか、今度は、次の世代のアーティストとして登場した吉田拓郎、井上陽水、南こうせつ等によって、プロテストいう衣を脱ぎ引き継がれて隆盛を極めることになり、それが現在に続くJ-POPの道への礎となって行くことになったのです。

実はこの五つの赤い風船も、それ以前の時代にあってプロテストの衣を脱いだ爽やかで軽快なフォークソングを歌っているのです。
ということで、次の曲はそうした演奏から”恋は風に乗って”聴いていただくことにいたしましょう。



今の私たちにとっては、あまりにもシンプルで、ストレートな表現で、時代を感じてしまいまったかもしれませんが。
この時35歳になっていた西岡たかしさんも、どこか照れくさそうに歌っている、そんな様子が聴きものです。


それにしても赤い風船、西岡たかしと藤原秀子のPeter, Paul and Maryを模したようでありながら、不協和音的な響きを感じるハーモニーと、こういったフォーク・グループには珍しいヴァイブラフォンの響きが、彼らのサウンドに独特得な味付けをもたらしている。
それが、彼らが解散してから40年以上もたった今でも、新鮮な響きとなって聴こえてくように思いました。
懐かしさと共にその独特な味わいを、久々に聴いてみて心も体も若返ったような、そんな気分を堪能することが出来ました。

そして、戦後70年だった今年8月、この記事を書きながら、平和であることの有難さ、そして平和を維持することが難しくなっている現代、その平和を維持して行くためには何をすればいいのか、あらためて考えさせらることになりました。


さて、次回はこのブログも数えて500回。
よくまあネタも尽きずに、ここまでもったものだワイと、我ながらに感心しつつ、新たな気持ちで再出発しようと思っていますので、これから、引き続きよろしくお願いいたします。

収録曲
1.風が運んできたもの
2.私たちは今
3.まぼろしのつばさと共に
4.幸せの魔法
5.もしも僕の背中に羽が生えてたら
6.恋は風に乗って
7.おとぎ話を聞きたいの
8.血まみれの鳩
9.これがボクらの道なのか
10. 遠い世界に

メンバー
西岡たかし
藤原秀子
長野隆
東祥高

録音日
1979年9月19日 大阪サンケイホール

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ハンコック

老年蛇銘多親父さん こんばんは。
良い曲ですね。
このような曲を日本中の人達で共有できていた時代が
あったのですね。
学生運動が盛んだった時代は、みんな本気で活動をしていたのですよね。直向きに頑張られていたと思います。
昔は純粋だったんですよね。

最近では、皆さん頭が良すぎて、ある意味社会が冷めた感じがします。
それでも、今も集会など直向きに活動をされている方々もいらっしゃいますし、まだまだ捨てたものではないですね。

by ハンコック (2015-08-30 20:20) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ハンコックさん

年寄りの冷や水と思われそうなので言うのを控えてしまっていたこと、ハンコックさんが代弁してくれたよう、ありがとうございます。

当時の学生運動、確かに純粋だったと思うのですけど、あまりにも純粋すぎて最後には方向を誤り自滅してしまったように見ていますけど、おしゃる通り、その純粋さが希薄となってしまった今、逆にそのことに懐かしさを感じています。

やはり、年ですかね~。






by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2015-09-01 05:28) 

きたろう

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) さんコメントありがとうございます^-^

(返コメントあります)



by きたろう (2015-09-02 14:55) 

青空おばさん

五つの赤い風船のLPレコードを聴いていた高校生の頃から50年近くになりますが、折にふれてというのか何かのきっかけでひとり口ずさむのが「まぼろしの翼とともに」です。そうだ、YouTubeというものがあると初めて検索してみて47年ぶりくらいに聴くことができました。心にしみました。先ほど特攻隊の映像も見て泣きそうな気持ちです。外出自粛の雪の日の歌との出会い、ありがとうございました。
by 青空おばさん (2020-03-29 12:16) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

青空おばさん
コメントありがとうございます。

若き日、学生運動にも参加したことのある私ですが、その頃から、この歌と共に五つの赤い風船は、その独特なハーモニーが好きで、再結成のライブがFMでオン・エアされることを知り、その時、録音しておいたのがこのPVです。

時折、口ずさむほどお好きな歌とか、長い間大切に保管し公開してお聴かせ出来たこと、本当に良かったと思っています。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-03-31 09:38) 

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