プログレシッブ・ロックの夜明けを切り拓いたベーシスト達を偲んで Part.1 [音源発掘]

今年1月末のJohn Wettonの訃報。

つい最近まで、自らが率いるASIAで精力的な活動を続けているという報を聞いたばかりだったのに、その突然の出来事に驚いたと同時に、思い起こされたのが、2015年6月以来、度重なるプログレシッブ・ロック創生期に活躍した名ベーシスト達の死。

2015年6月のChris Squire 、2016年12月のGreg Lake、そして今年の1月のJohn Wettonと 3人いずれもが70歳を前に相次いで他界してしまったことに、さらに大きな衝撃を受けてしまったのです。


そこで、これからは3回に分けて、その3人を偲び、その音楽の思い出についてそれぞれ語ってみたいと思います。

まず最初のベーシストは、2015年に亡くなったChris Squire。
ロックに交響曲的手法を取り入れたサウンドで一世を風靡した、プログレシッブ・バンドのYesの中核的存在として、そのサウンドの底辺を支え続けたことで知られるSquire.。

彼のベースの真骨頂は、バンドメンバーそれぞれが思うがままに奏でるサウンドのウェーブを、そのベース・で一瞬にして一つ壮大なウェーブに取りまとめ合体仕上げてしまう、その音造りの腕前の鮮やかさ。

あのQueenのベーシストであるJohn Deaconが、自身の目標としたという、その重厚なベース・サウンド。

メンバーの入れ替わりが多かったYesにおいて、20年ぶりの往年のメンバー集結による復活を果たした1996年のライブの模様を捉えた1997年に発表の、


Keys to Ascension.jpg


”Keys to Ascension”

そのライブ映像をご覧いただき、しっかりとサーチしていただければと思います。








曲はオープニングのストラヴィンスキー作曲の”火の鳥”から1972年発表の作品”Close To The Edge (邦題:危機”より”Siberian Khatru”。

Squireの重厚かつサウンドの礎となるベース・プレイ、しっかりとリサーチすることが出来たでしょうか。

このベースその重厚さに加え、こうやて聴いて、さらに感じられるのは、音の奥行の深さとステージ全体を覆い尽くすその大きな広がり、70年代、彼らをして世界一小さなオーケストラだという評価がありましたが、これもSquireのベースがあったればこそだったことが分かります。

さて”Keys to Ascension”、今回、私がこの作品をチョイスしたのは、70年代初め彼の全盛期の彼らの作品を聴いた時から気付いていたYesの中でのSquireの重要性が、このライブ作品ではさらに浮上がって聴こえていたように感じ、あらためてその重要性を認識させられたことがあったからなのです。

それは、この再結成を遡る8年ほど前、Squireを除く全盛期のメンバーであるJon Anderson、Bill Bruford、Richard Wakeman、Steve Howe の4人が集結、当時Trevor Rabin、Chris Squireの率いるYesが活動を続けていたためABWHの名で作品をリリース、ライブ・ツアーを行ったのですが、
この事実上のYesともいえるべき彼らのライブを聴いた時に、特に名曲”Roundabout”等の全盛時の楽曲では、4人の演奏は個々としてその力量を発揮しているものの、各楽器相互間の絡み付きが希薄で、まるで気の抜けたコーラを飲んだ時の感じであったことから、Squireの果たしていたバンドの中の大きな役割に気付かされ、このSquireの参加したこの作品のサウンドを聴き大きな納得を得たからなのです。


さて、それではこの辺で、今度は再びこの”Keys to Ascension”から、Yes往年の名曲、その”Roundabout”を、Squire参加したYesの演奏で味わうことにしたいと思います。



Squireのベースが発する重厚さに加え、各楽器の絡み付き融合させる強力な粘りのある吸引力。
この粘りが、世界一小さなオーケーストラと言わしめたYesの、壮大な音楽世界の源だったのでは考えているのですが、一方、聴き方によって彼のベース、そこには、かなりファンキーな一面もあったように思えます。

そしてそのことが、1980年の活動停止後、1983年のTrevor Rabinを加えての復帰作品”90125”での、これまでとは異なったポップ指向のサウンドへの道へとバンドを導いていったのではと思えるのです。

Yesというバンドを軸に、最後まで47年の長きに渡り、バンドの姿を支えてきた偉大なるベーシスト。

それでは、最後にYES唯一の全米Billboard Hot 100における1位獲得この復帰作から、日本でも当時大ヒットなった"Owner Of A Lonely Heart"聴きながら、この偉大なプログレシッブ・ロックのベーシストを偲び、あらそのためて冥福を祈ることにしたいと思います。




Track listing
Disc one (Live tracks)
1. "Siberian Khatru" Jon Anderson, Steve Howe, Rick Wakeman
2. "The Revealing Science of God (Dance of the Dawn)"
   Anderson, Chris Squire, Howe, Wakeman, Alan White
3. "America" Paul Simon
4. "Intro: Unity / Onward" Howe / Squire
5. "Awaken" Anderson, Howe

Disc two (Live/Studio tracks)
1. "Roundabout" Anderson, Howe
2. "Starship Trooper" a. "Life Seeker"
b. "Disillusion"
c. "Würm"
Anderson, Squire, Howe
3. "Be the One" a. "The One"
b. "Humankind"
c. "Skates"
  Anderson, Squire, Howe
4. "That, That Is" a. "Togetherness"
b. "Crossfire"
c. "The Giving Things"
d. "That Is"
e. "All in All"
f. "How Did Heaven Begin?"
g. "Agree to Agree"
   Anderson, Howe, Squire, White

Personnel
Jon Anderson – vocals, guitars, harp
Steve Howe – 6- and 12-string electric and acoustic guitars, steel and pedal steel, 5-string bass on "Be the One", vocals
Chris Squire – bass guitar, (piccolo bass on "Be the One"), vocals
Rick Wakeman – keyboards
Alan White – drums, vocals
Recorded
March 4-6, 1996 at the Fremont Theatre, San Luis Obispo, CA (live)
Fall 1995–Spring 1996 (studio)










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raccoon

プログレッシブより、どちらかというと、「Owner Of A Lonely Heart 」の方が、馴染みがあります(笑
でも、その実力があったからこそ、全米1位なんでしょうね。

70歳を前に、3人ものプログレッシブの巨匠が亡くなるとは、何かあるのでしょうかね。

by raccoon (2017-03-25 22:49) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

70歳を前に、相次いで3人ものプログレッシブの巨匠が亡くなるなんて、何か不思議な因果が働らいたのではと考えてしまいますよね。

Yes、このバンドの名、、私も、今では「Owner Of A Lonely Heart 」で記憶をしている方の方が多いと思っているのですけど、これは亜流で、70年代にその姿の本質があったこと、また聴いていただければと思います。





by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2017-03-26 20:03) 

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