秋の気配を運び来るフルートの音・”Phenil Isopropil Amine” Bobby Jaspar  [音源発掘]

梅雨は、とっくに明けたはずなのに、いつまでも続くじとじとした日々。

8月も半ばとなれば、暑い日中の時が過ぎれば、何処からともなく、秋の訪れを間近に感じる風がそよぎ来る時となるはずなのに。

と思ずれるい、これから訪れる来る季節の気配を待ち焦がれながら、今回は一足早く、秋の気配を宿した音楽を探し聴いてみることにしてみました。

そうして、いろいろ聴き、これならばと思ったのがこの作品。

Bobby Jaspar Phenil Isopropil Amine.jpg


ベルギー人のテナーサックス、フルート奏者であるBobby Jasparの1958年の作品”Phenil Isopropil Amine(邦題:スピーク・ロウ)”。

Bobby Jasparというアーティスト、どちらかと言うと知る人ぞ知ると言った類のアーティストだと思うので、そのプロフィールを簡単にご紹介されていただくと、

1926年ベルギーのリエージュで生まれのJaspar 、自国でのレコーディングデビューを果たした後、1950年にさらなる極み求めて、引き続き現代でもヨーロッパにおけるジャズの中心地となっているパリに進出することになります。

そして、そこで高い評価を得たJaspar は、周囲の勧めもあって、いよいよ1956年に渡米、ここでもまたその評価は揺るがすことなく、当時アメリカでの超一流のジャズ・アーティストらに認められ、彼等と行動を共にすることになるのです。

その顔ぶれには、J.J. Johnson、Kenny Burrell、Wynton Kelly、さらにWikiによればMiles DavisやJohn Coltrane、Donald Byrdまで、今や伝説のジャズの巨人となっている多くのアーティストが彼を賞賛し彼を向かえ入れたというのです。

中でも、彼の存在を有名にしたのは、私自身 渡米直後に加入したトロボーンの巨匠J.J. JohnsonのQuintetへの参加だと思っているのですが、そう思うのは、当時、このQuintetのメンバーには、後年ジャズ界の中心的存在となる若き日の Tommy Flanagan (piano)とElvin Jones(drums) が在籍していて、この二人のうち、当時すでに多くのアーティストのレコーディングに引っ張りだこの存在になっていた Tommy Flanagan のディスコグラフィーを見たところ、

そのBobby Jaspar、J.J. JohnsonのQuintetでのアメリカ・レコーディング・デビュー後すぐにFlanagan 、Elvin等と共に彼 自身アメリカでの初のリーダー・レコーディングを行い、その後、多くのアーティストとのレコーディング機会を得ていたことを知ったからなのです。



さて、ここで1曲。
テナー・サックスとフルート、二つの楽器を操るJasparですが、その真骨頂はやはり美しいフルート・プレイ。
全編、フルートの演奏で挑んだこの作品から”Cliff Cliff”を聴いていただくことにいたしましょう。






私が初めてJasparのプレイを聴いたのは、あの名ピアニストWynton Kellyの大名盤”Kelly Blue”だったのですけど、
そこで感じたのは、全体的にBlueな色彩に包まれたこの作品の中で、Jasparの他フロントを支えるのNat AdderleyやBenny Golson等二人のファンキーなホーン・セクションとは、一味違う繊細な響きを奏でいたJasparのフルート、そのプレイが、この演奏に潜むBlueにクリスタルな雰囲気を付加していているように感じ、そこですっかり彼のプレーに嵌り込み気に入ってしまう結果となってしまったのです。

そうして、探した彼のフルート・プレイが聴けるこの作品、
実はヴィブラフォンを加えたこの作品を初めて聴いた時に、ふと、その相似性を思い浮かべたのが、Milt JacksonとFrank Wessのヴィブラフォンとフルートによる名盤1956年の”Opus de Jazz”のこと。

そう思い、その”Opus de Jazz”と、この”Phenil Isopropil Amine”を聴き合わせしたのですが、確かにこの作品、”Opus de Jazz”を意識していると思えるものの、何かが違う、そんなようにも感じられたのです。

そこで、それはなぜかと思い、さらに両者を聴き込んでみたところ、前者の方のサウンドには、その底流に黒人特有のBlueの情念が滲み感じられるのに対し、西欧育ちのJasperのそれは彼自身Blueであろうとしているのにもかかわらずそうした情念は感じられず、その憂いがむしろそのサウンドにせつなさを呼び、繊細なクリスタル感を生んでいたように思えて来たのです。

さてそこで、私の感じた”せつなさ”、それを強く感じた彼の演奏、”Lullaby of the Leaves(邦題;木の葉の子守歌)”を聴いていただくことにいたしましょう。



この作品、ずいぶん前に手に入れたにもかかわらず、これまで、ちゃんと聴き込んでこなかったためその良さに触れることはなかったのですけど、今回こうして聴いてみて思わぬその良さを発見をしたように思います。

Bobby Jasparというアーティスト、このレコーィングから5年後の1963年に37歳の若さで亡くなってしまったため、彼の作品に出会うをことは稀ですが、これからも隠れた彼の名演を探して行こうと思います。

そして、今度は彼のサックス・プレイを中心に、またここで紹介できればと思っています。

Track listing
1 Cliff, Cliff (Hesse) 5:16
2 Phenil Isopropil Amine (Jaspar) 3:24
3 Misterioso (Monk) 3:28
4 Lullaby of the Leaves (Petkere, Young) 3:34
5 There Will Never Be Another You (Gordon, Warren) 3:21
6 Waiting for Irene (Jaspar) 3:53
7 Le Jamf (Jaspar) 4:14
8 Chasin' the Bird (Parker) 5:11
9 Speak Low (Nash, Weill) 4:21
10 Doxology (Memory of Dick) (Jaspar ) 2:32
11 Jeu de Quartes [take 1] (Jaspar) 3:12
12 Jeu de Quartes [take 2] (Jaspar) 3:24

Personnel
[# 1, 2-4, 6, 8, 9, 11 & 12]
Bobby Jaspar - fl
Michel Hauser - vb
Paul Rovère - b
Kenny Clarke - dr
Humberto Canto - perc

Recorded in Paris, at the Hoche Studio ; December 19, 1958


[# 5, 7 & 10]
Bobby Jaspar - fl
"Fats" Sadi Lallemand - vb [not on # 5]
Jimmy Merritt - b
Kenny Clarke - dr

Recorded in Paris, at the Hoche Studio ; December 20, 1958



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raccoon

今年の夏は、曇りと雨で残念でしたが、秋は、からっとした天気で過ごしたいものですね。

ジャズにフルートとは意外にいいですね。秋の気配が感じられる演奏でした。
by raccoon (2017-09-02 11:26) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

今年は夏に限らず、それ以前の春からすっきりしない天気の日が多かったように思います。

そろそろからっとした日々、この秋は本当にそうなって欲しいいものだと思います。

フルートのジャズで秋らしさを感じていただけて良かったです。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2017-09-02 15:46) 

U3

わたくしめ、トランペットとテナーサックスのかなり良いものを持っているんですが、実はまったく吹奏出来ないんです(笑)
by U3 (2017-09-02 18:22) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

U3さん

町中で練習するにはこれらの楽器、音がかなり大きいし音を出すのはちょっと憚れてしまいますよね。

でも、何かもったいないような。

どこかで吹奏のチャレンジができるといいデスネ。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2017-09-04 05:55) 

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