次世代のJAZZをリードし続けたクリエーター:Wayne Shorter・Speak No Evil [音源発掘]

前回は、Freddie HubbardとWayne Shorterとのコラボによる作品を取り上げ語らせていただきましたが、その作品を聴いているうちに、次第に聴きたくなってしまったのがHubbardの相方を務めアレンジを担当していたWayne Shorterの作品。

しかし、何を聴こうかと考えてみたところWayneの作品、私自身、71年以降キーボードのJoe Zawinulと共に伝説のフュージョン・バンドのWeather Weporatを立ち上げ、その活動を通じジャズのみならず多くの音楽分野に新しいスタイルを提示して来た、重要なアーティストだということは十分に認識してたのですが、いざ彼の作品となると、これまで、どうも彼のソロに感じられた中低音でボソボソと語るイメージがあって、それが好きになれず深く聴くことないまま来てしまっていたことから、聴きたい作品をなかなか思い浮かべることが出来ず、そのうえ、時期によってそのスタイルが大きく異なるWayne Shorterともあってその選択はさらに混乱状態となってしまったのです。

そこで考えあぐねた末、やはり聴くはその原点とBlakey、Milesの下でその才腕を発揮した60年代と、Weather Weporat以後の80年代の彼の作品から1作ずつをチョイスして、しっかりと聴いてみることにしたのです。


こうした試行錯誤のうえ、ようやく今回選んだのがこの作品。

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1964年制作の”Speak No Evil ”。

Wayneの代表作といわれているこの作品、この作品が制作された1964年6月という時期は、Wayneにとってはあの60年代を代表するMiles Davis Quintetに参加する直前にあたるもので、ジャズ界全体を見ても新しい萌芽が胎動し始めていた頃のもの。

そして、さらに興味を惹かれるのは、この作品の制作に参加したアーティストの顔ぶれ。

それは、
既にMiles Davis Quintetの一員して、このQuintetにフレッシュな空気を醸し出していたピアノのHerbie Hancock、ベースのRon Carterを始め、Art Blakeyの下でWayneと共に60年代Jazz Messengersのフロントの重責を担い、この年Blakeyの下を離れたばかりのトランペッターのFreddie Hubbard、
そして当時ジャズ界を席巻していた、現在もジャズ史上最高のQuartetといわれているJohn Coltrane Quartetのドラム奏者Elvin Jones と、その新しい時代の萌がは育て上げ現代のジャズの礎を築いた巨匠達が一同に会しているという、それだけで、そこから生まれ出る新鮮な息吹が聴こえて来るような気にさえなってしまうほどの組み合わせ。

そうした幾重にも期待高まるこの作品、そうなるとそこから聴こえる新鮮な息吹、早く耳してみたくなるのではないかと思います


そこで、早速そのサウンド、まずはここでご一緒に聴きながら、その新鮮な息吹を感じてみることにいたしましょう。











 
曲は、Witch Hunt”。
1950年代のバップの色合いを内包しながらも、新時代の息吹を強く放つこの演奏、作られた時から半世紀経った今聴いても、その新鮮さは失われていない、時を超越した演奏ではないかと思います。

そして、私にとってこの演奏、これまで中低音でボソボソと語るイメージが強く感じ毛嫌いしていたWayneのソロ、しかし、ここでの彼のプレーは、あのColtraneのスタイルを吸収しつつも、芯が通った彼自身ならでの独自スタイルを貫き通していたその痛快さに、Wayneというアーティストを再評価を迫られてしまったのでした。

これまでWayneのサックスについて、私がそうしたイメージを持ってしまったその原因、考えてみれば、それは彼のMiles Davis Quintet時代の演奏にあったことが思い起こされたのです。
その証拠に、この作品に参加している、この時、既にMilesのQuintetに一員であったHerbie HancockとRon Carterのプレイにも耳を傾けてみると、なんとこちらの方もMilesの下でのプレイ以上の若さと溌剌感に満ちた力強いサウンドを奏でていることに気付かされ、その彼ら変貌ぶりから、Wayneについても同様Miles以前と以後の違いとなって現れたのではないかと考えたのです。

そのHerbieとCarterの変貌、それは、Milesの強力な統率力の呪縛から逃れ、自由闊達さを取り戻した結果だった。
となれば、Wayneの場合もMilesの配下ではその指揮の下のプレイをした結果が、あのボソボソだったのではないかと思い、この作品での彼の姿がこの当時の彼の本来の姿だったと、そんな風に思えて来てしまったのです。

こうした力演を聴かせてくれているWayne、しかし、さらにその上を行っていると感じられたのがトランペットのFreddie Hubbardのプレイ。
トランペットという楽器の音域をフルに使い、パワーフルかつスピーディなトランペット捌きでサウンド全体を盛り上げ率いて行く、そのプレイに他のメンバーのソロも影が薄くなって聴こえてしまうほど。

実は、私がこれまでこの作品を何度なく聴きながらも、、このWayneの素晴らしいプレイの存在を忘れてしまっていたのもこのHubbardの輝かしいプレイのせいだったようなのです。


そしてさらにある、この作品の聴きどころ、それは、これまでのBlue Note作品で度々共演して来たWayne以下3人のメンバーのプレイの背後より強烈な喝の風を送り込んでいると感じられる、ドラムのElvin Jonesの存在。
その彼が、このサウンドの要所々で叩き込む土着的な1発、、それがこのサウンドに一瞬のはりつめた緊張感を生んでいると感じられるのです。
それは、Coltane Quartetでのプレイほどの凄まじいもではないものの、4人が醸し出す洗練された雰囲気をしっかりサポートしつつも、一瞬にしてそれに相反する土俗的な楔を打ち込み、それまでの流れを組みかえてしまったその底力。
さらにその力が、この作品に新たな価値を付加する原動力となっているように見えてきて、Elvin無にしてはこの作品けして名盤の誉れを勝ち得ることは出来なかった”、その存在を突き止め、

それでっはこここで、もう1曲。
今度は、スティック・ワークでの荒々しさとは真逆の、ブラッシュ・ワークの名手としても知られるElvin の繊細一面なスティック捌きが光るバラード曲を1曲。
曲は、"Dance Cadaverous"を、お聴き下さい。


曲 ”Dance Cadaverous”

今回、iこの作品をじっくりと聴いて強く思ったのは、Wayne Shorterというアーティストの音楽性の幅の広さ。
50年代末期より現代に至るまでの長き渡り、新たなスタイルを創造しつつその第一線で活動を続けて来た、それは、優れたプレヤーという以上に、クリーエターとしての優れた資質を持った稀有の存在だからこそなし得たことであり、そうした彼のようなアーティストは、その一時の作品を聴くだけでなく、その歩み全体を俯瞰することで本当の姿が見えて来るのではないかと考えてしまったのです。

そうしたことで、これを機会にWayne Shorter、今年は、この60年代初頭の作品だけではなく、1971年Weather Weporat結成直前、そして1980年代半ばWeather Weporat解散前後、そして近年の諸作品等を聴き直し、その偉業のエッセンス、あらためて発見できればと思っています。

Track listing
All compositions by Wayne Shorter.
1. "Witch Hunt"
2. "Fee-Fi-Fo-Fum"
3. "Dance Cadaverous"
4. "Speak No Evil"
5. "Infant Eyes"
6. "Wild Flower"

Personnel
Wayne Shorter — tenor saxophone
Freddie Hubbard — trumpet
Herbie Hancock — piano
Ron Carter — double bass
Elvin Jones — drums

Recorded
December 24, 1964
Van Gelder Studio Englewood Cliffs

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