メルヘンの森への招待・Jethro Tull;Songs from the Wood 本日の作品;vol.138 [デジタル化格闘記]

前2回は、これまで腰を据えて聴くことなかったJazz作品を取り上げ聴き直し、そのインプレッションを語って来ましたが、今回はちょっと矛先を変えてそのロック編。

その作品がこちら!!

Songs From The Wood.jpg


ロック界きってのフルート奏者でヴォーカル・コンポーザーのIan Aderson。
その彼が率いるJethro Tullの1976年の作品”Songs from the Wood”です。

1968年にデビューしたJethro Tull、私が彼らを最初に聴いたのは、彼らのデビューから5年後の1972年頃のこと。
フルート奏者がいるロック・バンドと聞いて、果たしてどんなサウンドを生み、聴くに値するものなのかという興味から付き合うことになってのですが、実際に聴いてみて、これまでのロックでは聴けなかった欧州の古き伝統の世界と、ロックという、まさに現代の象徴べき空気が見事に調和したそのサウンドにすっかり魅了されてしまったのでした。

そして、その後は彼らの作品がリリースされるとすぐに手に入れ、度あるごとによく聴いていたものだったのですが、この作品が発表された頃は、何かと忙しく家で過ごすこと時間もなかなか取れない状況で、Walkmanなど、外に好みの音楽を持って聴きながら出掛けることなど願うも不可能の時代のこと、そうであっても聴きたいなどの夢は叶わず、作品を手に入れたもののほとんど聴くことが出来ないままとなってしまっでいたものです。

とは言いながらもこの作品、その最初に聴こえて来た表題曲の”Songs From The Wood”のまるで森を覆う木の精霊たちが歌い語っているかのような雰囲気のサウンドに、静けさの溢れる森の中から湧き出る神秘的な生命のオーラを感じ、それが強く心に残ることになってしまったのです。
そのうえ近年、その思いがとみに強くなって来てしまい、どうしてもじっくりと聴いてみなければと考えるようになってしまったことから、今回、元のアナログ盤をデジタルに変換して持ち運び聴くことが出来るようにした次第。

そこで今回は、私の心に強く刻まれ残ってしまったメルヘン宿る神秘の森の世界、まずは皆さんにも感じてもいただき、ともにJethro Tullの深淵な音の世界に足を踏み入れ、また語らしていただくことにしたいと思います。




聴いていただき、精霊たちの歌声に導かれ、いつの間にか古きイングランドの深き森の世界に迷い込んでしまったような、そうした気分になって来るサウンドだと思うのですが、果たしていかがだったでしたか。


そもそもこのJethro Tull、デビュー当初は、Ian Adersonに加えギターのMick Abrahams もバンドに強い影響力を持っていて、ジャズやブルースのエッセンスを持ったバンドだったのですが、デビュー作品発表後Abrahamsがバンドを脱退すると、そのサウンドは古きヨーロッパの民謡色を強く反映、融合させたロック・サウンド・スタイルへと転換、その後はそのスタイルを持つ唯一無比のバンドとしてその地位を不動のものして行ったバンドなのです。

そして、私自身、ここで聴いていただいたこの楽曲は、そのスタイルにおける彼らの一つの到達点なのではないかと考えているものなのです。

とは言っても、、それだけではなく・・・・・・。

そうした唯一無比のスタイルを誇りながらこのバンド、その魅力に加えてのさらなる見どころは、そのライブ・ステージ。

実はかく言う私も、当時彼らのライブに関しての評判を、とある雑誌で見て、ライブ・ステージの素晴らしさ№1というならThe Rolling Stonesの右に出るものはないと聞いているのに、それを差し置いてのこの高い評価を受けるその要因は一体なになのだろうと思い、1974年の来日の機会にそのライブを観戦すことにした一人なのです。

70年代の初頭というと、多くのロック・バンドが、これまでの演奏とパーフォマンスだけではなく、聴覚に加えビジュアルにも訴える演出をステージ演出を持ち込み、その効果を最大限に引き出そうとする多くの試みが生され始めた時期で、そうしたそれら試みが現在のライブステージの演出の原点となっていると見ているのですが、Jethro Tullの場合のそれは、それまで見て来たライブのそれとは全く一線を画すものであり、その演出に強い印象を覚えさせられることになってしまったものだったのです。

それは、演劇の要素を多分に取り入れた、聴衆の気を惹き付け楽しませようとする、きっちりと計算された演出を盛り込み実現する、匠の心を宿した舞台作り。

演奏の中で演じられるパントマイムや、曲と曲の間を繋ぐいかにも英国的な気品を感じさせるユーモアを感じさせるコント等、その一つ一つのシーンが演劇の場面場面の区切りを作り、その演技で人々を捉える芝居と、その最後にある大団円。

音楽に酔いしれ最後もアンコールで盛り上が終わりを告げる通常のライブとは違い、最後にその場面場面が走馬灯のように脳裏に浮かび、しっとりとした気持ちでそのステージを反芻し、その味わい深さが、一生心の奥底にしまい込まれることになってしまうそのストーリー性。

これこそ、Jethro Tullが現代に残してくれた大きな遺産ではないかと思うのです。

それでは、この辺でこの作品からもう1曲。
今度はライブの映像で、”Velvet Green”をお楽しみください。



けして、テクニックを誇りそれで人々を圧倒するバンドではないのですが、伝統を背景に精緻な音創りを施した味付けで多くの人の支持を得てきたJethro Tull。
この作品では、後にクラシックの世界で指揮、編曲家として活躍するDavid Palmer:がキーボード奏者、編曲者として正式加入、ロックの世界ではあまり見かけない楽器を使用し、それまで以上にその精緻な音創りが施されていることに気付かされます。
Palmerが在籍した70年代後半のJethro Tullの聴きどころの大きなポイント、そしてこの作品のまた一つの大きな聴きどころになっているのではないかと思います。

それは、プログレシッブ・ロック・バンドと言われたJethro Tull、彼らの音楽を分類したプログレシッ・ロックという言葉さえが、薄っぺらなもののようにさえ思えてしまうほど

しかし、その影響はその領域にとどまらず、Led Zeppelin、Iron Maiden、Ritchie Blackmoreなどメタル系のアーティストにも及んでいると言われてます。
そのこと、それは彼らによって英国人本来の遺伝子が呼び覚まされたということなのか!!

と考えれば彼らこそブリティッシュ・ロック真髄であり、彼らを聴くことでその理解が深くなる、とそのように思えて来たのです。


ここ1週間、風邪と胃腸炎に悩まされ続けてきた私。
しかし、彼らの音楽を聴くことで癒され、元気を取り戻すことが出来ました。
そうしたこともあって、またJethro Tull、若い頃接した気持ちを大切にして、またたゆっくり聴き直して見ようかと思いました
インフレエンザが猛威を振るう今年、皆さんも健康に気をつけて日々お過ごしください。


Track listing
All tracks written by Ian Anderson with additional material by Martin Barre and David Palmer.

1. "Songs from the Wood"
2. "Jack-in-the-Green"
3. "Cup of Wonder"
4. "Hunting Girl"
5. "Ring Out, Solstice Bells"
6. "Velvet Green"
7. "The Whistler"
8. "Pibroch (Cap in Hand)"
9. "Fire at Midnight"

Personnel
Jethro Tull
Ian Anderson – vocals, flute, acoustic guitar, mandolin, cymbals, whistles; all instruments on track 2.
Martin Barre – electric guitar, lute
John Evan – piano, organ, synthesisers
David Palmer – piano, portative pipe organ, synthesisers
John Glascock – bass guitar, vocals
Barriemore Barlow – drums, marimba, glockenspiel, bells, nakers, tabor

Additional personnel
Robin Black – sound engineering
Thing Moss and Trevor White – assistant engineers
Keith Howard – wood-cutter
Jay L. Lee – front cover painting
Shirt Sleeve Studio – back cover

Recorded
September - November 1976 at Morgan Studios, London


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ジンジャー

親父さんこんばんは。
私はIRON MAIDENが強く影響を受けたということで、「Aqualung」を前に借りてきましたが、ほとんど聴けておりません…
今度聴いてみたいと思います!
1974年のライブを観られているというのは凄いですね!(私が産まれる前の年です!)
by ジンジャー (2018-03-02 19:51) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

ジンジャーさん

”Aqualung”は、私が一番最初に手にしたJethro Tullの作品でして、これをきっかけに彼らに嵌ってしまった次第。

Iron Maidenの作品の中でTullの影響が一番感じられる作品は、”Seventh Son Of A Seventh Son”のように思うのですが、この辺り是非一度聴き比べてみてください。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2018-03-04 11:39) 

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