60年代!Chaosからの脱出;Chick Corea・Return To Foever- Light As A Feather. 本日の作品;vol.139 [デジタル化格闘記]
3月になりましたね。
そこで、今年に入ってからこれまで聴いて来た作品の傾向を振り返ってみたのですが、その結果は今年になって当ブログの記事で取り上げた作品の傾向と同様、1960年・70年代の作品がその中心となっていたことに気づかされたのです。
考えてみればこの時代、ジャズ・ロック等のポップ・シーンにおいては、Beatlesを核とするブリティッシュ・ロックの台頭、ジャズ・シーンにおいては、無調の世界、所謂フリー・ジャズの世界へと突入し 聴衆離れを引き起こしその活力失いつつも、再びその存在を取り戻そうと、ロックなどの新しい時代の感性を取り入れ、次なる時代の音楽を模索していた時代。
そして、さらには、それまで日常触れることの機会が少なかった黒人たちの音楽、R&Bが、その差別の撤廃を求めた公民権運動に勝利したことから、以降大きく紹介されようになったなど、これらの新しい音楽の潮流が生まれ、なおかつそのそれぞれが融合影響しながら多くの試みがなされ次から次へと世に発信されていた時。
その頃の私はというと、そうした新しい時代の潮流に乗ろうと、次から次へと登場するこれらの作品を追い求め買いあさっていたのですが、いつの間にか溜まってしまったその作品の数の多さから、聴く方が追いつかず、ろくに聴くこともないままお蔵入りにしてしまった作品がかなり数になってしまっていたのです。
しかし、今はあの日から数えて間もなく半世紀。
と言いながら、既にそんな時が流れてしまったのか.................
随分年をとってしまったものだと大きなショックを感じつつも、個性に満ちたあの時代の作品群、このまま埋もれさせてしまうのはもったいないと考え、昨年の終わり頃から、今の評価を下すべく古いレコードを取り出して、ぼちぼちと聴き始めたところ、いつの間にか1960年代・70年代の深み嵌ってしまっていたというのが、この結果。
そうした中で今回は、
あの時代によく聴き熱中した、40年の時を経た今、聴いてみれば、これこそが現代Jazzの原点だったのではと思われてくるこの作品。
こうした美しいジャケットに包まれた、Chick Coreaと第1期 Return To Foreverによる1972年制作の”Light As A Feather”を聴き、そのインプレッションを語ることにいたしました。
本作品は、1960年代の終わりには Anthony Braxton、Dave Holland等と共にフリー・ジャズの世界に身を投じていたChick Coreaが、1970年代に入り突如大きく変貌、その後のJazzの進むべき方向を暗示した言われる歴史的大名盤との誉れ高い前作”Return To Foever"に続いて、前作と同じメンバーにより制作されたもの。
前作に比べよりPop度の増した本作品、発表された当時は前作の安易な2番煎じという目で見られ、けして芳しい評価を得られることなかった作品なのですけど、しかし、今聴いてみると、前作がナチュラルかつ透明な優しさを有しながら、その間に間に顔を覗かす強い緊張感にジャズとしての威厳を感じると共に新たな胎動の息吹を感じさせられるものだったのに対し、その2作目となる本作では、そうしたスタイルを継承しつつも、コマーシャリズム一辺倒に陥ることなく、さらに多くの人々にとって受入れ易いものとなっていて、なおかつグループとしての緊密度がさらに増したことから生まれる前作同様のミュージシャン相互のスリリングな展開がさりげなく随所に填め込まれているという、なかなかの聴き応えのある作品に仕上がっていると思われるようになったのです。
それでは、その透明な優しさとポピュラリティな色彩を有しつつ、密かにスリリングな一面を覗かせるそのサウンド、ここで聴いてみることにいたしましょう。
曲は、浮遊感漂うFlora Purim のヴォーカルとJoe Farrell の小気味良いフルートが活躍する この作品の冒頭に収められている曲 "You're Everything" です。
硬質なエレクトリック・ピアノのイントロでで始まるこの曲、初めて聴いた時は、ナチュラルな優しさに包まれた母の胎内に引き込まれてて行くような安堵感を覚え、これまでのジャズとは大きく異なったその表現法に、ずいぶん驚かされたものでした。
そして、それを演奏する各メンバーのプレイ中で、特に気を惹かれたのは、Stanley Clarke のベース・プレイ。
今でこそ現代を代表するジャズのベース・プレイヤーとして活躍しているStanley ですが、この作品が制作された時は、まだ21歳の若手プレイヤー。
あの大きなダブル・ベースを ギターの如く恐ろしく早いピッチで歯切れ良く鳴らす、パーカッシブなプレイに、これこそ新時代を担う存在になると大きな期待を抱いたものでした。
事実、これ以降のStanley は、エレクトリック・ベースをプレイする機会が多く成って行くのですけど、そのエレクトリック・ベースから、さらに歯切れの良くスピーディなサウンドを創るための改良を重ねて使用して行ったあたり、ビート創出にこだわった新時代のベース・プレイヤーとして意気込みを感じることが出来るのではと
思います。
ところで、この作品、親しみやすい曲ばかりということもあってか、多くのアーティストがここに収められた楽曲を取り上げ演奏しているのですが、次にお聴きいただくのは1972年のMontreux Jazz Festivalでのこの演奏。
ボサノバを世界広めるに大きく貢献したテナー・サックス奏者で、かってのChickの存在を世に知らししめた恩師でもあるStan Getzと Chickの珍しいコラボによるLiveの映像で、曲は"Captain Marvel"!
では早速ご覧いただきましょう。
毎年7月に開催されているMontreux Jazz Festival、そのフェスティバルでのChick CoreaとStanley Clarke の二人と御大Stan Getzと超絶ドラマーのTony Williamsによるこの演奏は、この年の3月のスタジオ・レコーディングを受けてのことだったようなのですが、そのレコーディングがGetzの作品"Captain Marvel"として日の目を見たのは、それから2年後の1974年のこと。
ところが、この”Light As A Feather”が録音は1972年10月でGetzのそれより半年以上後なのにもかかわらず、そのリリースは、翌年の1973年と1年早くなっているのです。
このあたりLiveでは、かってのChick在籍の頃のGetz・Quartetの再来というべき布陣で、Chickの新しいサウンドをいち早く聴衆に印象付け、Chickの本作のリリースによってそのより印象を広範に決定的ずけてしまおうした、プロモーションの思惑が見え隠しているようにも感じ、事実これ以後Chickのこのサウンドは”ジャズ・ノヴァ”と呼ばれ一世を風靡したことを考えると、この思いもまんざらではないのではと考えてしまうのです。
それにしても、この演奏でのTony Williamsのドラムの凄まじさ。
Chickの作品のAirto Moreira のドラムと比べると(もっともMoreira は、本来ドラマーというよりパーカションにストなので比べるのは酷なのですけど........。)、そのパワー溢れる重厚感とスピーディかつ歯切れ感は圧倒的なものがあることがわかります。
このプレイを聴きながら、あらためて、この不世出の天才ドラマーの物凄さを教え覚えさせられてしまいました。
多くのアーティストが、カバーしているこの作品の楽曲群、中でもChickといえばこの曲が思い浮かぶぐらいの、今やChickの代表曲といてスタンダード・ナンバー化したこの曲の初演奏が収められたのが、この”Light As A Feather”。
さて、その曲は?
まずは、何はともあれ聴いていただくことにいたしましょう。
そうです!
あの名曲”Spain”ですね。
1960年代後半、聴衆を無視しその多くの離反を招いてしまっていたJazz。
その聴衆を視線を取り戻そうとして、多くの試みが登場した1970年代の初頭め、その中で生まれ出たChick Coreaの前作””Return To Foever" と本作。
特に前作に比べよりポップな色彩を増した本作は、後に続くフュージョン時代への扉を大きく開かせた作品として、必一聴の作品だと思います。
そして、その内容は後のフュージョンに多く聴かれた心地の良さだけではなく、Jazzには欠かせないアーティスト同士の対話とそこから生まれるスリリングなぶつかり合いの一瞬をも有している。
久々に聴いてみて、その中に秘める奥深さと、その後のJazzにおける歴史的価値を再認識することとなりました。
最後に、アルバム・クレジットの後に、Ghickオリジナルの"Captain Marvel"の演奏を掲載いたしましたので、よろしければ、前記のGetzの演奏と聴き比べてみてください。
Track listing
All tracks written by Chick Corea except where noted.
1. "You're Everything" (Corea/Neville Potter) 5:11
2. "Light as a Feather" (Clarke/Purim) 10:57
3. "Captain Marvel" 4:53
4. "500 Miles High" (Corea/Potter) 9:07
5. "Children's Song" 2:47
6. "Spain" (Corea/Joaquín Rodrigo)
Personnel
Chick Corea – electric piano
Stanley Clarke – double bass
Joe Farrell – tenor saxophone, flute
Airto Moreira – drums
Flora Purim – vocals, percussion
Recorded
8 October and 15 October 1972
そこで、今年に入ってからこれまで聴いて来た作品の傾向を振り返ってみたのですが、その結果は今年になって当ブログの記事で取り上げた作品の傾向と同様、1960年・70年代の作品がその中心となっていたことに気づかされたのです。
考えてみればこの時代、ジャズ・ロック等のポップ・シーンにおいては、Beatlesを核とするブリティッシュ・ロックの台頭、ジャズ・シーンにおいては、無調の世界、所謂フリー・ジャズの世界へと突入し 聴衆離れを引き起こしその活力失いつつも、再びその存在を取り戻そうと、ロックなどの新しい時代の感性を取り入れ、次なる時代の音楽を模索していた時代。
そして、さらには、それまで日常触れることの機会が少なかった黒人たちの音楽、R&Bが、その差別の撤廃を求めた公民権運動に勝利したことから、以降大きく紹介されようになったなど、これらの新しい音楽の潮流が生まれ、なおかつそのそれぞれが融合影響しながら多くの試みがなされ次から次へと世に発信されていた時。
その頃の私はというと、そうした新しい時代の潮流に乗ろうと、次から次へと登場するこれらの作品を追い求め買いあさっていたのですが、いつの間にか溜まってしまったその作品の数の多さから、聴く方が追いつかず、ろくに聴くこともないままお蔵入りにしてしまった作品がかなり数になってしまっていたのです。
しかし、今はあの日から数えて間もなく半世紀。
と言いながら、既にそんな時が流れてしまったのか.................
随分年をとってしまったものだと大きなショックを感じつつも、個性に満ちたあの時代の作品群、このまま埋もれさせてしまうのはもったいないと考え、昨年の終わり頃から、今の評価を下すべく古いレコードを取り出して、ぼちぼちと聴き始めたところ、いつの間にか1960年代・70年代の深み嵌ってしまっていたというのが、この結果。
そうした中で今回は、
あの時代によく聴き熱中した、40年の時を経た今、聴いてみれば、これこそが現代Jazzの原点だったのではと思われてくるこの作品。
こうした美しいジャケットに包まれた、Chick Coreaと第1期 Return To Foreverによる1972年制作の”Light As A Feather”を聴き、そのインプレッションを語ることにいたしました。
本作品は、1960年代の終わりには Anthony Braxton、Dave Holland等と共にフリー・ジャズの世界に身を投じていたChick Coreaが、1970年代に入り突如大きく変貌、その後のJazzの進むべき方向を暗示した言われる歴史的大名盤との誉れ高い前作”Return To Foever"に続いて、前作と同じメンバーにより制作されたもの。
前作に比べよりPop度の増した本作品、発表された当時は前作の安易な2番煎じという目で見られ、けして芳しい評価を得られることなかった作品なのですけど、しかし、今聴いてみると、前作がナチュラルかつ透明な優しさを有しながら、その間に間に顔を覗かす強い緊張感にジャズとしての威厳を感じると共に新たな胎動の息吹を感じさせられるものだったのに対し、その2作目となる本作では、そうしたスタイルを継承しつつも、コマーシャリズム一辺倒に陥ることなく、さらに多くの人々にとって受入れ易いものとなっていて、なおかつグループとしての緊密度がさらに増したことから生まれる前作同様のミュージシャン相互のスリリングな展開がさりげなく随所に填め込まれているという、なかなかの聴き応えのある作品に仕上がっていると思われるようになったのです。
それでは、その透明な優しさとポピュラリティな色彩を有しつつ、密かにスリリングな一面を覗かせるそのサウンド、ここで聴いてみることにいたしましょう。
曲は、浮遊感漂うFlora Purim のヴォーカルとJoe Farrell の小気味良いフルートが活躍する この作品の冒頭に収められている曲 "You're Everything" です。
硬質なエレクトリック・ピアノのイントロでで始まるこの曲、初めて聴いた時は、ナチュラルな優しさに包まれた母の胎内に引き込まれてて行くような安堵感を覚え、これまでのジャズとは大きく異なったその表現法に、ずいぶん驚かされたものでした。
そして、それを演奏する各メンバーのプレイ中で、特に気を惹かれたのは、Stanley Clarke のベース・プレイ。
今でこそ現代を代表するジャズのベース・プレイヤーとして活躍しているStanley ですが、この作品が制作された時は、まだ21歳の若手プレイヤー。
あの大きなダブル・ベースを ギターの如く恐ろしく早いピッチで歯切れ良く鳴らす、パーカッシブなプレイに、これこそ新時代を担う存在になると大きな期待を抱いたものでした。
事実、これ以降のStanley は、エレクトリック・ベースをプレイする機会が多く成って行くのですけど、そのエレクトリック・ベースから、さらに歯切れの良くスピーディなサウンドを創るための改良を重ねて使用して行ったあたり、ビート創出にこだわった新時代のベース・プレイヤーとして意気込みを感じることが出来るのではと
思います。
ところで、この作品、親しみやすい曲ばかりということもあってか、多くのアーティストがここに収められた楽曲を取り上げ演奏しているのですが、次にお聴きいただくのは1972年のMontreux Jazz Festivalでのこの演奏。
ボサノバを世界広めるに大きく貢献したテナー・サックス奏者で、かってのChickの存在を世に知らししめた恩師でもあるStan Getzと Chickの珍しいコラボによるLiveの映像で、曲は"Captain Marvel"!
では早速ご覧いただきましょう。
毎年7月に開催されているMontreux Jazz Festival、そのフェスティバルでのChick CoreaとStanley Clarke の二人と御大Stan Getzと超絶ドラマーのTony Williamsによるこの演奏は、この年の3月のスタジオ・レコーディングを受けてのことだったようなのですが、そのレコーディングがGetzの作品"Captain Marvel"として日の目を見たのは、それから2年後の1974年のこと。
ところが、この”Light As A Feather”が録音は1972年10月でGetzのそれより半年以上後なのにもかかわらず、そのリリースは、翌年の1973年と1年早くなっているのです。
このあたりLiveでは、かってのChick在籍の頃のGetz・Quartetの再来というべき布陣で、Chickの新しいサウンドをいち早く聴衆に印象付け、Chickの本作のリリースによってそのより印象を広範に決定的ずけてしまおうした、プロモーションの思惑が見え隠しているようにも感じ、事実これ以後Chickのこのサウンドは”ジャズ・ノヴァ”と呼ばれ一世を風靡したことを考えると、この思いもまんざらではないのではと考えてしまうのです。
それにしても、この演奏でのTony Williamsのドラムの凄まじさ。
Chickの作品のAirto Moreira のドラムと比べると(もっともMoreira は、本来ドラマーというよりパーカションにストなので比べるのは酷なのですけど........。)、そのパワー溢れる重厚感とスピーディかつ歯切れ感は圧倒的なものがあることがわかります。
このプレイを聴きながら、あらためて、この不世出の天才ドラマーの物凄さを教え覚えさせられてしまいました。
多くのアーティストが、カバーしているこの作品の楽曲群、中でもChickといえばこの曲が思い浮かぶぐらいの、今やChickの代表曲といてスタンダード・ナンバー化したこの曲の初演奏が収められたのが、この”Light As A Feather”。
さて、その曲は?
まずは、何はともあれ聴いていただくことにいたしましょう。
そうです!
あの名曲”Spain”ですね。
1960年代後半、聴衆を無視しその多くの離反を招いてしまっていたJazz。
その聴衆を視線を取り戻そうとして、多くの試みが登場した1970年代の初頭め、その中で生まれ出たChick Coreaの前作””Return To Foever" と本作。
特に前作に比べよりポップな色彩を増した本作は、後に続くフュージョン時代への扉を大きく開かせた作品として、必一聴の作品だと思います。
そして、その内容は後のフュージョンに多く聴かれた心地の良さだけではなく、Jazzには欠かせないアーティスト同士の対話とそこから生まれるスリリングなぶつかり合いの一瞬をも有している。
久々に聴いてみて、その中に秘める奥深さと、その後のJazzにおける歴史的価値を再認識することとなりました。
最後に、アルバム・クレジットの後に、Ghickオリジナルの"Captain Marvel"の演奏を掲載いたしましたので、よろしければ、前記のGetzの演奏と聴き比べてみてください。
Track listing
All tracks written by Chick Corea except where noted.
1. "You're Everything" (Corea/Neville Potter) 5:11
2. "Light as a Feather" (Clarke/Purim) 10:57
3. "Captain Marvel" 4:53
4. "500 Miles High" (Corea/Potter) 9:07
5. "Children's Song" 2:47
6. "Spain" (Corea/Joaquín Rodrigo)
Personnel
Chick Corea – electric piano
Stanley Clarke – double bass
Joe Farrell – tenor saxophone, flute
Airto Moreira – drums
Flora Purim – vocals, percussion
Recorded
8 October and 15 October 1972
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