ドラマー主催!! ピアニストの饗宴;With All MY Heart ・Harvey Mason [音源発掘]

度重なる台風の襲来を受けた今年の9月、10月!!!!!!。

今年は、特に日本列島直撃のものが、例年増して多いなあと考えながら、その嵐の合間を縫いながら、日々続く私の仕事の方も吹き荒れる今年の台風の如く、今や1年ぶりの大嵐の真っ只中。

昨年まではこの程度の忙しさ、大変だけどやりがいもあると気合を保って乗り切れていたものの、ここ1年余りは若い連中に任せ、自分は黒子に徹すべしと惰眠を貪っていたことから、その環境の急変ぶりに体がついてゆかず、疲労困憊で休みの日はただひたすらに寝て曜日になってしまう始末。

そうは言っても貴重な休日、ただ寝てばかりではもったいない、休息を兼ねて何かをしなければと考え、ならば日頃疎遠となっている作品を聴いてみよう!! と思い立ち、めぼしい作品を見繕ってみたところ、目に飛び込んで来たのがこの作品。

with all my heart harvey mason.jpg


ドラムのHarvey Masonによる、2003年制作の作品”With All MY Heart ”!!!!

とまあ!こうした作品を今回のお題としてしまったわけですけど、Harvey Masonというアーティスト、多くの方がフュージョン系のアーティストだと認識しているのではないか思うのですが、そのこと確かに彼の経歴を見て見ても1973年Herbert Hancock 率いるHeadhuntersのドラマーとしてFunkの幕開けを告げた名盤”Head Hunters”で名を上げて以来、その後は、Dave GrusinやLee Ritenour、フュージョン時代の渡辺貞夫(CALIFORNIA SHOWERなど )、そしてBob Jamesなどといった、フュージョン系の大物アーティストとの共演を多く残していることから、そう認識されるのも当然のこと。

しかし、この作品はそうしたMasonのフュージョン作品ではなく、あくまでアコースティックに徹したオーソドックスなピアノ・トリオ作品で、彼のドラム・プレイの素晴らしさを十二分に堪能出来るものなのです。

そのうえ、この作品、収録された全12曲がMason以外それぞれ違った顔ぶれで、なんとピアニストなど収録曲の数と同じ12人。

つまり、ピアニスト1人1曲ということなのですが、そこに参集したアーティストの顔ぶれを、あらためて見てみると............、

それは、Hank Jones 、Cedar Walton 、Herbie Hancock、Chick Corea 、Kenny Barron 、Bob James、Dave Grusin 、Monty Alexander 、Mulgrew Miller 、Brad Mehldau 、Fred Hersch、 John Beasley の12人。

合わせてベーシストの方も見てみると
Ron Carter 、Charlie Haden、 Eddie Gomez 、George Mraz 、Charnett Moffett 、Dave Carpenter 、Larry Grenadier 、Mike Valerio の8人と、こちらも当代きっての名プレヤーの名が並んでいます。

よくまあ、1曲の収録のために、これだけの大物が集まったものだと驚きながら、興味を惹かれるのはそれぞれのアーティストの個性の違いがどのように発揮され、それにMasonがどんなプレーで応じているのかということ。

そう思いながら、私自身、これまでこの作品をしっかりと聴きこんでいなかったなあと思い、今回は腰を据えて聴いてみたところ、さすが名手たち、それぞれの持ち味を発揮した好プレイを繰り広げ、その演奏をMasonのドラムが包み込み、さらに奥深さを際立たさせている。

これまで聴いてきたピアノ・トリオとは一味違ったその出来栄えに、これまで思いもしなかったMasonの音楽家としての優れた資質を見つけることが出来たように感じたのです。


さて、ここで1曲。
今回聴いてみて、もっとも強く印象に残ったのは、フュージョン系のピアニストのプレイの美しさだったのですが、まずはそのフュージョン系のピアニストの演奏から聴いていただくことにしたいと思います。

曲は、”Bob James の演奏で、”Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)”です。









相対するベーシストは、Charlie Haden 。
フュージョン畑で活躍するBob James と、前衛出身のCharlie Hadenという異色の組み合わせですが、この演奏、私は、もともとメロディ・ラインの美しさでは秀でた存在であると思うBob のピアノに、Hadenの語りかけるようなベースが絡むことで、より一層その美しさに深みが加わっていたように感じたのですが、いかがだったでしょうか。
ここではMasonのドラムもしっとりと二人のプレーをサポートし、控えめながらもその存在感を示しています。


さて、次はアコースティク、フュージョンの両フィールドで活躍する現代を代表するピアニスト、Chick Coreaの演奏を聴いてみることにいたしましょう。

曲は”If I Should Lose You”です。



Chick 言えば70年代の終わりから80年代の初めに、Masonのライバルとも言えるSteve Gaddを、ドラマーとして起用した作品を2作ほど残していますけど、重量感のある切れ味の鋭いドラムを叩くGaddに対して、Masonのドラムがどのような作用をもたらすかかに焦点あてて聴いてみたくなってしまうもの。

そこで、私もGaddをドラムに起用したChickの1982年の作品”Three Quartets”と比べ聴いてみたのですが、ガッツと決まるGaddのドラムに対しMasonのそれは繊細かつビビッドといった感じで、Chick のピアノに潜む抒情的な要素を浮き彫りして見せるに大いなる貢献をしているといった印象を得ることになったのです。

ドラマーの存在一つで、ピアニストの音の表情が異なって聴こえて来る。
これは、なかなか味わえない面白い体験でした。



そして本稿最後のピアニストは........................。
Brad Mehldau!!

実はこのMehldau、私自身、彼が90年代に彼がメジャー・デビューして以来、ずっと気にかけてアーティストなのですけど、どうもそのスタイルに馴染めずその良さがわからずじまいでいたのです。

ところが、Masonとのこの演奏を聴いて、淡々とした面持ちから流れ出る彼の美しい旋律に惹かれてしまい、その良さを理解すると共に、ここで取り上げずにはいられなくなってしまったのです。


曲は”Dindi”。
それでは、早速聴いてみてください。



オーケストラのようにMehldauのピアノを包み込むMasonのドラム、そのプレイがMehldauのピアノをさらに美しく際立たせているように感じます。
このあたりにも、Masonの音楽家として、またリーダーとしての資質の高さが見て取れるのではないかと思います。


こうして聴いて来たHarvey Masonの”With All MY Heart ”。
全曲、異なったピアニストとベーシストの演奏で構成された異例の作品。
それぞれのピアニスト、ベーシストの個性をMasonの華麗なドラムをバックに聴き分けながらゆったりと楽しむ、本当に深まりゆく秋の夜にふさわしい一枚だと思います。

Track listing and personnel
Harvey Mason (drums) plays on every track.

1 "Bernie's Tune"-Kenny Barron (piano), Ron Carter (bass) -
2 "If I Should Lose You" -Chick Corea (piano), Dave Carpenter (bass) -
3 "So Near, So Far" -Fred Hersch (piano), Eddie Gomez (bass) -
4 "Swamp Fire" -Monty Alexander (piano), Charnett Moffett (bass)-
5 "Smoke Gets in Your Eyes" -Bob James (piano), Charlie Haden (bass)-
6 "Hindsight" -Cedar Walton (piano), Ron Carter (bass) -
7 "Dindi" -Brad Mehldau (piano), Larry Grenadier (bass)-
8 "Without a Song" -Mulgrew Miller (piano), Ron Carter (bass) -
9 "One Morning in May" -Dave Grusin (piano), Mike Valerio (bass)-
10 "Speak Like a Child" -Herbie Hancock (piano), Dave Carpenter (bass) -
11 "Tess" -Hank Jones (piano), George Mraz (bass) -
12 ”P's & Q's”- John Beasley & Ron Carter-

Released
2004
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