紆余曲折の末、見つけた己が道;Eric Clapton・461 Ocean Boulevard [音源発掘]

その昔、聴くも我ライブラリーに長い間眠ってしまっていた作品、今年になって、これまで3作を聴きこなし語ってまいりましたが、今回も引き続きそうした作品のお話。

今回の作品は、これまでの取上げた3作が全てジャズの作品であったことから、3月ともなり陽気もだいぶ良くなってきたこともあり、ここで元気を蓄えようと選ぶことにしたのは、ロックの作品。

それは、日本でも大きなヒット作となり、私的には余り好みスタイルではなかったサウンドなれど、巷から聴こえてくるその音に、このまま聴かずにいては流行に乗り遅れてしまうとGetすることにしてしまったもの。

Eric Clapton 461 Ocean Boulevard.jpg


その作品が、ギターの神様として、洋楽に疎い方々にもその名を知られるEric Claptonの1974年発表の第2作目ソロ作品のあたる”461 Ocean Boulevard”。

今でこそ、ギター抱えてのソロ活動が定番となっているClaptonですが、この作品が発表された1970年代前半は、英国のロックギタリスト三聖に一人としての評価を確立した、あの伝説のロック・バンドCreamやそれ以前のJohn Mayall & The Bluesbreakersのギタリストとして その時のプレーに対する熱狂の余韻が色濃く残っていた時期で、多くのファンが彼のギター・プレーの呪縛から逃れられず、その興奮の渦を期待する中、ほとんどそれ行わないCream解散以後の彼の活動には、それらファンにおおいなる落胆の思いを抱かせることになってしまっていたのです。

そうしたファンの風潮、私もそのご他聞に洩れず、Creamの大名盤”Wheels of Fire”のLive面における彼の凄まじいギター・プレーすっかり洗脳されてしまっていて、以来長きにわたりCream以後のClaptonの良さがわからずじまいのままでいたのでした。

その私が、ソロになってからの彼の良さをほのかにわかるようになったのは、TVで放送されたロックの名盤の誕生の顛末を記録紹介したドキュメント番組を見てからのこと。

その番組で取上げられた作品は、The Policeの”Reggatta de Blanc(白いレガッタ)”、Fleetwood Macの”Rumours(噂』)”Jimi Hendrixの”Electric Ladyland”など、ロック史上欠かすことの出来ない名盤が取上げられ、それぞれが各1時間の枠で紹介されていたのですけど、その中でも、私に記憶に深く印象が残ったのが、The Band”The Band”という作品。

というのも、このThe Bandのこの作品に大きな影響を受けたアーティストとして、ClaptonやあのGeorge Harrisonが登場して、二人してこの作品を共に絶賛、さらに、これが自分たちのやりたかったサウンドだと語り、その言葉から私自身、二人がソロになって制作した70年代半ば以降の作品には、土の香りするのカントリー・ブルースの色合い濃いサザン・ロックの要素があったことを思い出し、そのことから、そのサウンドが彼等の究極の憧れであったということをあらためて認識させられたからでした。

そして、60年代後半、即興演奏による激しいバトルによりロック界に大きな衝撃をもたらしたCream時代のClapton、しかし、その解散前のステージでは、他のメンバーサウンドに没頭陶酔状態であった中、Clapton自身はめた目でヘキヘキとしながらその状態を見ながら演奏いていたと、後年語っていたことを思い出し、Cream解散後は、一時自分自身の道を見失ったのか、麻薬に溺れ心身ともに荒んだ状態なったものの、その後、アメリカに渡り Delaney Bramlett等とDerek and the Dominos を結成し再起の幕を開けたことを考えると、そこには、サザン・ロックの祖とも言われるThe Bandの存在が大きく影響していると思えるようになったのです。

さて、こうしてサザンロックの道を歩き始めたClaptonのこの”461 Ocean Boulevard”、こうしたことを踏まえて聴いてみると、最初に作られた”Derek and the Dominos”のまだ荒削りな感じがしたそのそのサウンドは、ここでははさらに洗練され、Claptonのヴォーカルもかなり上達の後が見える辺り、この作品こそが、真の意味での現在につながるClaptonの出発点といえるので作品ではないかと思えるようになって来たのです。


それでは..............、ここで1曲。
この作品から、まずは、そうしたThe Bandを中心としたサザン・ロックのと血脈を感じる、”Motherless Children”を聴いてみることにしたいと思います。



実は、この作品を久々に聴くに当たり、Claptonが語っていたThe Bandこそ自分の目指したサウンドだとの話から、ならば最初にThe Bandの作品を聴きその流れでそのまま続けてこのClaptonの作品を聴いてみたらどう感じるだろうかと思い、その試みを実行してみたのですが、やってみると続けて聴いたClaptonの曲が、あたかも、それまで聴いていたThe Bandの作品の中の1曲であるかのように聴こえて来たのです。

そのこと、これまで私としては、サザン・ロックに傾倒したClaptonのサウンドは、大地の香り漂ういささか武骨な感じのするThe Bandのそれに比べ、洗練度がかなり高く、名声を勝ち得たアーティストのいささかの遊び心を混じえた単なる模倣であるような気もしないではなかったのですけど、こうやって聴いてみると、その心はしっかり引き継がれ、そこにClapton独自のスタイルが注ぎ込まれていると思うようになったのです。

そして、その独自性がはっきりと現れているのが、曲の間に間に聴こえる彼のギタープレイ。
John Mayall&the BluesbreakersやCream時代のように、ギタープレイが大きく前面に立ちサウンドをリードするといったようなものではないですけど、控えめながらも、新たなブルース・フィーリングを付加しつつ、曲自体のサウンドのカラーを十分に引き立て聴かせてくれているあたりに、ミュージシャンとして一皮剝けた姿を感じます。

さすが、「ギターの神様!!」、といったところで思い出したのが、この写真!!!

Eric Clapton Tommy Movie-LesPaul.jpg


ギターを弾き歌い、人々を救済する教祖となったClapton。

これは、1975年に公開された英国のロック・バンドThe Whoが1969年に発表した史上初のロック・オペラ・アルバム”Tommy”を映像化したミュージカル映画でのワン・シーンで、マリリン・モンローを崇拝する妖しげな新興宗教の教祖に扮し登場したClapton姿なのです。
この配役、当時ギタリストとして、神格化されつつあったClaptonのイメージから生まれたものだったのではと思うのですけど、見てみればどこかキリスト的な雰囲気もあって、私などギターの神様Claptonというと、この姿を思い出してしまうくらい。
実際の演奏も、Claptonの方が、オリジナルのThe WhoのヴォーカリストRoger Daltrey より板についている感じでその良さが伝わってくるあたり、やはりそれは神!Claptonの風格によるものだったと考えてしまうのです。

Eric Clapton Tommy-1.jpg


ちょっと横道にそれてしまいましたが、元に戻って”461 Ocean Boulevard”

さて、当時この作品が発表された時、その意外性に驚きを感じたことに、この時期にわかにブームが始まっていたレゲエの楽曲が収録曲としてあったことあります。

その曲は、レゲエの神様と言われるジャマイカ出身のーティストBob Marley作曲の”I Shot The Sheriff”。

今ではClaptonの大ヒット曲としてよく知られている曲ですが、このClaptonのこのカバーが出た時は、既にBob Marleyの原曲が世に知れ渡っていた頃。

もともとレゲエ嫌いだった私は、なに!これ!!Claptonとあろう者が軽薄にも時の流行に迎合してしまってと、このClaptonのカバーには冷淡であったのですけど、数年後友人の誘いでのBob Marleyの来日公演に行ったことで、レゲエの表向きのヒョウキンのイメージとは裏腹に、その内面に込められたジャマイカの人々が受けてきた差別への疎外感や反抗といった黒人ブルースと同様の心が心が込められていることを知り、ブルースに傾倒し自身の道を磨いてきたClaptonがこの曲をカバーした意味を理解することになったのです。


と理解をしたところで、”461 Ocean Boulevard”となれば、やはりこの大ヒット曲、聴かずのままではすまされませんよね!!!

そこで、1974年、Billboard Hot 100で№1を獲得したClaptonヴァージョンの”I Shot The Sheriff”、今度は、後年のLive演奏でさらに進化したClapton姿、お楽しみいただくことにいたしましょう。



Cream時代は、歌うことを恥ずかしがり歌うことが少なかったClaptonですが、Derek and the Dominos 以来に積極的に歌いはじめ、本作品の頃にはその才も開花、そしてこのLiveではさらに味わい深さが増している様子は、彼のギター・プレイとともにそのヴォーカルも今や彼の大きな魅力となっているということ、この映像から感じ取れるように思います。


さて、今回取上げた”461 Ocean Boulevard”という作品、この機会に腰を据えて聴いてみて、英国ロックの黎明期、The Yardbirds、John Mayall & The Bluesbreakers、Creamのギタリストとして歩み、若くしてロックの世界に大きな足跡とその後への大きな影響を残したClaptonが、その後、ドラックや酒に溺れるなど紆余曲折を経ながらも己が道を提示、彼のその後に繋がる大きな支持を獲得した最初の作品として、その内容の充実は当然こと、今に繋がるClaptonを知るうえでも重要な作品であったことを、再び学ぶことになりしました。

昔聴きお、蔵入りにしていた作品を取り出して、その思い出と新たな出会いを語ってゆくこの試み、一つこなすごとに、また違った側面に気付かされるその面白さ、またしばらくは新たな素材見つけ出し、こうした形で音楽を楽しみ語って行くことにしたいと思います。

末尾に、神の伝道師となったClapton、その映画”Tommy”の映像を掲載しておきましたので、よろしければご覧ください。


Track listings
1. "Motherless Children" Traditional (arrangement by Eric Clapton · Carl Radle)
2. "Give Me Strength" Eric Clapton
3. "Willie and the Hand Jive" Johnny Otis
4. "Get Ready" Eric Clapton · Yvonne Elliman
5. "I Shot the Sheriff" Bob Marley
6. "I Can't Hold Out" Elmore James
7. "Please Be with Me" Charles Scott Boyer
8. "Let It Grow" Eric Clapton
9. "Steady Rollin' Man" Robert Johnson
10. "Mainline Florida" George Terry

Personnel
Eric Clapton – lead vocals, guitar, dobro
George Terry – guitar, backing vocals
Albhy Galuten – synthesizer, acoustic piano, ARP synthesizer, clavichord
Dick Sims – keyboards
Carl Radle – bass guitar
Jamie Oldaker – drums, percussion
Al Jackson Jr. – drums on "Give Me Strength"
Marcy Levy – harmonica, backing vocals
Tom Bernfield – backing vocals
Yvonne Elliman – backing vocals
Tom Dowd – producer

Recorded
April–May 1974
Studio:Criteria, Miami, Florida




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コメント 4

yuzman1953

老年蛇銘多親父さん、こんばんは。
”461 Ocean Boulevard”なつかしいです。
学生の頃に買ったLPを今も持っていますがプレーヤーがないのでずっと聴いていませんでした。
下宿代を切り詰めて手に入れた新盤で、
出だしの”Motherless Children”に戸惑いつつも、
”I Shot The Sheriff”で元をとった気分になった事を
思い出しました。
by yuzman1953 (2019-03-28 01:31) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

yuzman1953さん

”461 Ocean Boulevard”学生時代に買ったLP、お持ちなんですね。

どおりで、私のつたない音楽ブログにたびたびコメントをいただいることから、音楽好きの方なんだろうなと思っていいましたが、若き日にこの ”461 Ocean Boulevard”に手を付けるとは、なかなかの通と察しました。

そうしたこの作品には、いろいろ思い出がある様子、私も久々にこれを聴いてみて、いろいろな思い出に浸っていました。

是非、アナログが無理なら、デジタルでまた聴いてみてください。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-03-28 21:51) 

raccoon

こんばんは。
Claptonは、Cream と Derek and the Dominos は持っています。あとソロでは、アコースティックのみです。
このアルバム、ジャケットは知っていたけど、聴いたことなかったです。

Clapton 今週 東京に来ているみたいですね。
https://rockinon.com/blog/yogaku/185503
セットリストも公開されていますが、
Crossroads、Badge、Layla、Tears In Heaven
など聞きたい曲もありました。
今回は無理そうですが、いつか生で聞きたいですね。


by raccoon (2019-04-17 22:28) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

raccoonさん

長きに渡り、Claptonをリアルタイムで聴いてきた私にとって、この作品こそ彼の今に続くソロの原点だと思っていまして、今回はこの作品を取り上げ語らさせていただきました。

全曲を聴き、そうすればさらにClaptonの良さが見えて来る、といったことでこれを機会に是非紺作品聴いていただければと思います。

ライブの方もさらに深い味えるようになると思いますので。




by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2019-04-20 22:03) 

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