ベースのヴァチュオーソは今 Ron Carter & Golden Striker Trio / Golden Striker Live At The Theaterstubchen [音源発掘]

例年になく厳しい暑さ残るこの年の9月。
そこに、9号・10号と日本近海で生まれ急速に発達し、立て続けに九州を襲った二つの台風の到来と、コロナに加え災害への備えへにも気を配らなければならなくなってしまったしまった様相となってしまった今年の秋の始まり。

前回は、穏やかな秋の訪れを願ってベーシストEddie Gomezのデュオ作品を聴いていただきましたが、なかなか定着しない鑑賞の秋の陽気、そこで今回も、さらにその穏やかな秋の日々が続くことを願って、そうした季節を想起させるベーㇲの音に耳を傾けてみることにしました。

そうして今回、探し見つけたのがRon Carterのこのピアノ・トリオ作品。

Rpn Caarter GOLDEN STRIKER LIVE AT THE THEATERSTA  BCHEN. KASSEL .jpg


”Golden Striker Live At The Theaterstubchen”です。

実はこの作品を選ぶに至ったのは、前回のEddieの記事をUpした後、TVでこのRon Carterの昨年のライブが放映されることを知り見たところ、これまで聴いてきたCarterがリーダーである作品・演奏では、全体としてその内容は良いものが多いも、ベースのリーダー作品としては、5,60年代にジャズ界を席巻したベースのヴァーチュオーソであるPaul Chambersの諸作品と比較すると、ベースという楽器の存在感が薄く何かが欠けているような気ばかりが残ってしまっていて、常々自然に彼のベースの存在感がダイレクトに伝わり聴けるような演奏はないものかと思い続けていたのに対し、そこから聴こえて来たのは、その待ちに待った期待に応えるサウンドでだったのです。

そうして、このTVで放映されたメンバーによる作品はないかと探したところ見つけたのがこの作品だったのです。

ところでこの作品、冒頭に ピアノ・トリオによる作品と書きましたが、実はここでのピアノ・トリオは、ピアノ・トリオといっても通常思い浮かぶピアノ・ベース・ドラムといった楽器編成のピアノ・トリオではなく、ドラムの代わりにギターが加わったピアノ・トリオなのです。

ちょと変則なピアノ・トリオと思われるかもしれませんが、元々は、ピアノ・トリオというとドラムではなくギターを加えたこうした編成が通常であったそうで、後に歌手として名声を獲たNat King Cole などは、彼がピアノ奏者としてして活躍したスウィング・ジャズ期の1940年頃に結成しその後も続いたたピアノ・トリオは、この編成にだったというのです。

そうした、古風な編成によるRon Carterによるこのピアノ・トリオ、その結成は、2003年。
Golden Striker Trioという名で活動を開始、当初のメンバーは、ベースに御大Ron Carter、ピアノMulgrew Miller、ギター Russell Malone の3人 だったのですが、2013年にMulgrew Millerが死去、その後は、Millerの後任としてニカラグア出身のDonald Vega が加入、現在もこのメンバーで活動が続いているトリオなのです。


さて、それでは古のピアノ・トリオのスタイルを模したGolden Striker Trio の演奏は、まずは2008年Mulgrew Millerが在籍のライブ映像をがありましたので、その演奏から始めることにしたいと思います。
曲は、The Modern Jazz Quartetのピアニストして知られるJohn Lewis作曲の曲で、このトリオの名前にもなっている”Golden Striker ”です。





私としては80年代に登場したピア二ストしてMulgrew Millerが大のお気に入りであることから、昨年のライブを見た後は、どうしてもMillerが在籍していた頃の演奏も見てみたいと思い、探し見つけたのがこの映像なのです。
いささか華やいだ感のあるDonald Vegaのピアノに対し、しっとり感と煌びやかさの相反が光るMillerのピアノ。
曲によって柔と剛を使い分け最良のソロを聴かせてくれる彼のプレイが、ここでもCarterをしっかりと支えつつ、、その資質を最大限に生かしつつサウンドを盛り上げて行く痛快さに、してやったりとの好ましさを覚えることになりました。

さてRon Carter、1960年代黄金期のMiles Davisnのクィンテットのメンバーとしてその名を知らししめたアーティストとして、その名を思い出す方も多いと思いますが、その彼のベースの魅力というと骨太で豊かな音色と粘りこく残り響くその余韻。

そこで今度はこの作品から、Donald Vegaの軽快なピアノとCarter の深みのあるベースの音が奏でるサウンドが、しっとりとした華かさと安らぎを感じさせてくれる楽曲を1曲。
曲は、”Eddie's Theme”です。



後半に聴かれた趣味の良いギター・ソロは、Russell Malone。
90年代の中ごろに女性ヴォーカリストのDiana Krallの作品で、久々に登場した正統のジャズ・ギタリストとして、その存在を知られるようになったMalone。

Ron Carterが、過去にたびたび共演しレコーディングしたギタリストというと1972年以降、共に数々の名作を世に送り出してきた、1962年 Bill Evansとのデュオから生まれた不朽の名盤”Undercurrent”で知られるJimの存在が思い出されますが、ここで聴くMaloneのプレイは、その Hallとのサウンドを彷彿とさせるものがあるようにも思え、Caterの意図するところにその楽曲を導いて行くに大きな要となっているように聴こえるのです

今や、Sonny Rollins、Wynton Marsalis、Branford Marsalis、Christian McBride等の著名アーティストのセッションに引っ張りだことの様相にあるMalone、正統派のジャズ・ギタリストして、現代のジャズ・シーンにおいても欠かせざる存在となったそのプレー、じっくりと耳を傾けていただければと思います。

それでは最後に、秋の夜長、虫の音に身を包まれながら聴いてみたいとの考えが浮かんだ、私のお気に入りの楽曲を1曲。
曲は、”A Nice Song"です。



御年83歳のRon Caterを筆頭に、57歳のRussell Malone、46歳のDonald Vegaの世代の異なる3人が集うこのトリオ、そこには、Ron Carter自身もその感性の違いが毎回演奏をするけ新しい刺激があると語っている通り、その世代ごとに異なる感性がぶつかり合いながらも新鮮な調和を生んでいる、そうした場面が至る所に見え隠れしています

それにしても83歳のRon Cater、その演奏する姿は探求心溢れる若々しさに満ちていた、さすが半世紀を越えトップべーストの地位に君臨して来た、真に偉大さ感じるアーティストだということ、実感しました。

さて、前回のEddie GómezそしてRon Carteと続けて聴いて来た、ベーシストによるリーダー作品、ディスコグラフィを覗いてみれば、興味をそそられる作品が、あだまだ目に飛び込んでくる。
この秋は、この辺りを一つの芯にして、またミュージックを楽しむことにしようかと思っています。

Track listing
1 Laverne Walk
2 Candle Light
3 Golden Striker
4 Samba De Orgeu
5 Eddie's Theme
6 A Nice Song
7 My Funny Valentine
Personnel 
Ron Carter (b)
Donald Vega (p)
Russell Malone (g)

Release
28 Apr 2017

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SORI

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)さん おはようございます。
珍しいジャズを紹介していただきありがとうございます。いろんなジャズがあるのですね。自由だからこそいろんなタイプがあるのでしょうか。
ジャズと言えばシカゴで聞いた小さな部屋での生演奏の雰囲気が今でも印象に残っています。
by SORI (2020-09-19 07:53) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

SORIさん
ジャズというのは、そもそも自由な即興演奏がその要で、アーティスト一人一人の個性や好みがサウンドに強く表れてくるもの。
そうしたことから、アーティストによっていろいろなタイプのジャズが生まれるのではと思います。

シカゴで生のジャズを聴いたとのこと、シカゴのジャズはニューヨークのものとは、多少スタイルが違うので、それを生で聴いたとは、私もそこに同席させていただきたかったなあと思いました。

by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2020-09-22 17:38) 

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