ビッグ・ネームを従え輝く隠れた逸材の快演:Hal Galper・Now Hear This [音源発掘]

なかなか収まらないコロナの嵐が吹き荒れる中、開催か中止かと騒がれながらもいよいよ始まった東京オリンピック。
無観客とはいえ天下の大イベント、世紀の一瞬を見ようとブルー・インパルスの曲技飛行や開会式の競技場から打ち上げられる花火を見ようと、多くの人が集まっている様子が伝えられると、その無事をいのるばかりの憂鬱さを感じていたのですが、いざソフト・ボール、サッカーと競技が始まり、その後続々と日本人選手の活躍、メダル獲得の報が届くと、それまでの憂いはすっかりと消し飛んでしまい、今は、日々熱く応援に勤しんでいるところ。

そんなオリンピック、各自にいかれましても、それぞれのスタイルで日本のみならずお気に入り選手の活躍に胸をたぎらせ声援を送っていることかと思いますが、当ブログの方は今回もいつもに引き続き昨今目に留まったジャズ作品のお話。



その作品は、前回取り上げた土岐英史が日野皓正のクインテットにに在籍していたことから、私の知っている作品の他にも土岐在籍中の作品はないかと日野皓正のディスコグラフィに目を通していたところ、偶然見つけたもの。

Hal Galper Now Hear This.jpg


クレジットされていた演奏メンバーを見て、これは有望と早速聴いてみたところ、日野のトランペットの切れの素晴らしさに圧倒されて選んでしまったのですが、日野のトランペットが目的であったこの作品。
見つけた時は、Terumasa Hinoの名が最初にあったことから、渡米ニューヨーク在住後の日野皓正のリーダー作品だと思ったのですけど、そうではなく??、
よく調べてみるとピアニストのHal Galperの1977年のリーダー作品。作品のタイトルは、”Now Hear This”です。

Hal Galperというピアニスト、私もこの作品で目にするまで知らなかったかったのですけど、この演奏を聴いて日野皓正は元より、この作品を聴いてみたいと思わせた他の二人のアーティストであるドラムのTony Williams、ベ-スのCecil Mcbeeという当時のジャズ界を代表するアーティストと十分に渡り合い対等以上のプレーを聴かせてくれている。

これだけのビッグネームを集め、そこで対等以上のプレーを演じているHal Galperとは一何者かと調べてみると、1938年生まれで、この作品のレコーディング時点ではベテランの域にあったともいえるアーティストなのだそうなのですけど、70年代に入ってCannonball Adderleyのクインテットの一員となるまでメジャー・シーンでの活動歴は気薄で、今だ過小評価されているアーティストなのだとのこと。

それにしても、この熱いサウンド。
Hal のピアノをは元より当時を代表する面々の生み出すそのサウンド、やはり、ここで聴いていただかねばなりませんね!!

曲は、Halのオリジナルで"Now Hear This" .です。






Tony Williamsの激しさと細やかさが複雑に絡まった強烈なドラム・プレイをバックにして艶やかな音色で炸裂する日野のトランペット。

1990年頃、富士山麓の山中湖畔で開催されたMt Fuji Jazz Festival出演のため来日していたTonny Williamsに日野がインタビューいている映像を見た時、その極めて親密で打ち解けあった表情に、以前共演しお互いをよく知り得る関係となっていると感じたことから、二人の共演はかなり白熱したものだったのだろうと常々思い、以後その作品を探すも見つけられずにいたのですが、やっと見つけたこの作品でその様子を聴いてみると、のそのパワフルな熱さは想像以上!!!!

そして、初めて聴くHal Galperのピアノ。
McCoy Tynerを思わせるスタイルで、熱く燃える日野、Tonyに迫っている。
そのMcCoyを思わせるHal ですが、Tonyとの相性は、McCoyの持つ土俗的空気のピアノに対しTonyの都会的な洗練を感じるドラムといった相反したスタイルだったことから、今一つしっくりとこない感じがあったのに対し、Hal の場合は、McCoy的土俗的空気は薄く現代音楽的響きが感じられる分、Tonyとの相性はぴったり。

聴きどころ盛りだくさんのこの作品、私もすっかりのめり込みでしまい、さらに続けてもう1曲聴きたくなってしまいました。
曲は、バップの高僧と言われたThelonious Monk作曲の”Bemsha Swing”、再びお付き合い願いましょう。



本家Monkの作品”Brilliant Corners”に収められたこの曲の演奏に勝るとも劣らないモダンな仕上がりを感じる演奏。

この作品が制作された1977年は、日野皓正が1975年その活動拠点を日本からアメリカに移して間もない時期(1975年に渡米)で、そのプレイにもっとも油が乗っていたところ、そこにもって最良のメンバーに囲まれてか、それまで以上の高いパフォーマンスを見せてくれていることが魅力の原動力。

そして、Cecil McBeeのベース・プレイ。
彼は、1960年代半ば、Charles Lloyd のカルテットでKeith JarrettやJack DeJohnetteと共に将来を担う若手として有望視されたアーティストで、実は私の好きなベーシストの一人なのですが、安定したベース裁きでビートを刻みバンドのサウンド空間を広げている。

これまでいろいろなアーティストによるこの名曲”Bemsha Swing”を聴いてきましたが、これは新時代の空気が脈動する”Bemsha Swing”というのがその感想、これまた楽しさを感じる演奏です。



さて、今回は、偶然見つけたこの作品。
本来は、ピアニストHal Galperの作品なのに、過小評価され知名度が低いことから日本では日野皓正名義となっている。
とはいえ、Hal のピアノもなかなかの聴きもので、おまけに油の乗りきった最良の日野日野テルまで聴けるという。
これぞ、隠れた名盤 !!!
久々に出会った痛快なサウンド、心行くまでジャズの魅力、堪能することができました。

Track listing

All compositions by Hal Galper unless noted.
1.Now Hear This
2.Shadow Waltz
3.Mr. Fixit
4.First Song in the Day
5.Bemsha Swing (Thelonious Monk, Denzil Best)
6.Red Eye Special
7.First Song in the Day [alternate take]

Personnel
Hal Galper - piano
Terumasa Hino - trumpet
Cecil McBee - double bass
Tony Williams - drums

Recorded
February 15, 1977

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