名女優の存在が生んだ名曲;Moon River [名曲名演の散歩道]
名曲の散歩道、前回は日本の童謡である”月の沙漠”を取り上げさせていただきましたが、今回取り上げたのは、その月から連想して聴き始めた、あの名画の主題曲。
その曲は1961年公開の映画”ティファニーで朝食を(原題: Breakfast at Tiffany’s)”で、主演を務めた名女優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)の歌唱で映画と共に大きな人気を博した(John Herndon Johnny Mercer作詞、Henry Mancini作曲の”Moon River”です。
現在では多くのカバーがあるこの名曲、調べてみるとMancini自身が、「もしオードリーが映画に登場していなければ、私自身がこの曲を作りジョニー・マーサーが詞をつけるということが果たしてできたかどうか想像できません。」と、語っていたとあり、オードリーの存在があってこそ生まれたものだとのこと。
そこで、まずはオードリー歌うその原曲、早速、聴いてみることから始めることに致しましょう。
軽やかさと可憐を湛えたワルツ、その曲に乗り舞い踊るオードリーを見ていると、まさしくこの曲がオードリーのためのものであることを実感させられる映像でした。
実はこの曲、私は映画”ティファニーで朝食を”の主題曲でオードリーが歌ったものであることは知っていたものの、このオリジナル・ヴァージョンを聴いたのは今回が初めて。
そもそも、あまり映画を見ないうえに、オードリー自身が自分はプロの歌手ではないからとの理由でレコードとしての発表を拒み、レコードとして発表されたのは、彼女亡くなった年の1993年であったため、その頃は仕事も忙しく、結局、聴く機会を失してしまっていたというのが、その次第。
そんな私が、この曲を知ったのは、1960年代の中頃のこと。
当時アメリカを代表するシンガーであったAndrew Williamsがホスト務めていたTVショー番組のアンディ ウィリアムス・ショーによってでした。
というのも、Andrewは、この映画発表の翌年の1962年にいち早く自己のアルバムにこの”Moon River”をカバー収録し大ヒットさせていて、その後、彼の十八番としてこの番組の中で度々歌っていたことから、日本でも放映されていたこのTVショー番組を通じ、この曲が多くの日本人に知られ愛されるようなっていたからなのです。
それでは、そのAndrew Williamsの”Moon River”、Andrew Williamsショー時分の映像と思われるものを見つけましたので、この辺で懐かしい往年の彼の歌唱、味わってみることに致しましょう。
男性が、愛する女性を慕いその思いを切々と語りかけているような雰囲気の”Moon River”。
Andrewの甘い歌声が、そのロマンをさらに奥深いものにしているように感じます。
それにしても懐かしい映像、私も、この映像から母がこのAndrew の”Moon River”が大好きで、家事をしながらよく歌っていたことを思い出してしまいました。
さて、ジャズのフィールドでは、この”Moon River”、女性ジャズ・ヴォーカルの女王と言われるSarah Vaughanが、1965年の作品”Sarah Vaughan Sings the Mancini Songbook”に収録したものが、早い時期のものの一つとして思い浮かぶのですが、最近、私が気に入っているのは、ドイツを代表するトランペット奏者であるTill Brönnerの2014年の作品”The Movie Album”
に収められていた、ヴォーカルにLizzy Cuestaをフューチャーした”Moon River”。
そのしっとりした感触が、原曲とまた違った空気を感じさせてくれ、とてもいい感じという訳で、今度はその演奏、ちょっと耳を傾けていただければと思います。
爽やかな感じがする”Moon River”。
Lizzy Cuestaのキュートなヴォーカルと抑揚の効いたTill Brönnerのトランペットが、恋に揺れる女性の微妙な心の内を静かに歌いあげているような、何とも言えない心地良さが際立つ演奏です。
この作品には、この他”星に願いを”、”STAND BY ME”、”CINEMA PARADISO”などお馴染みの映画音楽が収められいて、Till Brönnerのトランペットだけでなく曲によっては彼のヴォーカルも楽しめるもの。
全体を通して一度聴いてみるのもいいものではと思います。
まずは、ジャズのフィールドからの”Moon River”をご紹介いたしましたが、次は,アコースティック・ギターの名手として知られるこの人の”Moon River”を聴いてみることに致しましょう。
”Fire and Rain”、”You've Got A Friend”、”愛のモッキンバード”などのヒットで知られる シンガーソングライターのJames Taylor 2020年の作品”American Standard”に収められている”Moon River”です。
とは言っても、カントリーフォーク・タッチが色濃いJames Taylorとそのタッチとは色合いの異なる”Moon River”、ちょっと違和感を覚えてしまいますよね。
果たしてどんな”Moon River”となっているのか、何はともあれ異色のこの演奏、聴いてみることに致しましょう。
Jamesの名曲”Fire and Rain”を連想させるイントロに始まる”Moon River”。
明るい日射しが降り注ぐ草原で、柔らかい風に穏やかに揺れる緑の様子が目に浮かんで来るようなナチュラルな演奏。
70年代に聴いた飄々としたJamesのヴォーカルとアコースティック・ギターの美しい響きが心に残りました。
2001年にJamesは、ジャズ・サックス奏者Michael Breckerの作品”Nearness Of You-The Ballad Book”に参加、
ジャズの中に清々しい風を吹き込んでいたのですが、この彼の”Moon River”の原点はそこら辺にあったのかなあ、などと考えてしまいました。
先にSarah Vaughanの”Moon River”と書きながらその演奏を割愛してしまいましたが、考えてみるとジャズ・ヴォカールの女王的存在である彼女のヴァージョンを聴かずに終えるのはやはり心残り。
ということで、最後はこのSarah Vaughanの”Moon River”で締め括ることにしたいと思います。
さすが、ジャズ・ヴォカールの女王!!
1オクターブと1音しかないオードリー・ヘプバーンの声域に合わせて作られたと言うこの曲に、彼女ならではの装飾を施して、完全に一回りスケールの大きな自身の歌に仕上げています。
さて、今回は、オードリーのオリジナル・ヴァージョンに始まり、4ヴァージョンの”Moon River”を聴いて来ましたが、その演奏の違いからそれぞれの異なった情景や心の表情が見えてくる。
今回はこの曲と良さと共に、オードリーと言う名女優の永遠の魅力を感じることになりました。
3月も半ば、まもなくソメイヨシノも開花です。
彼の地での2月の終りに勃発した悲惨な戦火拡大が続く今、その花々が放つ平和の心の力を借りて、一刻も早い平和の訪れを祈ることにしたいと思っています。
その曲は1961年公開の映画”ティファニーで朝食を(原題: Breakfast at Tiffany’s)”で、主演を務めた名女優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)の歌唱で映画と共に大きな人気を博した(John Herndon Johnny Mercer作詞、Henry Mancini作曲の”Moon River”です。
現在では多くのカバーがあるこの名曲、調べてみるとMancini自身が、「もしオードリーが映画に登場していなければ、私自身がこの曲を作りジョニー・マーサーが詞をつけるということが果たしてできたかどうか想像できません。」と、語っていたとあり、オードリーの存在があってこそ生まれたものだとのこと。
そこで、まずはオードリー歌うその原曲、早速、聴いてみることから始めることに致しましょう。
軽やかさと可憐を湛えたワルツ、その曲に乗り舞い踊るオードリーを見ていると、まさしくこの曲がオードリーのためのものであることを実感させられる映像でした。
実はこの曲、私は映画”ティファニーで朝食を”の主題曲でオードリーが歌ったものであることは知っていたものの、このオリジナル・ヴァージョンを聴いたのは今回が初めて。
そもそも、あまり映画を見ないうえに、オードリー自身が自分はプロの歌手ではないからとの理由でレコードとしての発表を拒み、レコードとして発表されたのは、彼女亡くなった年の1993年であったため、その頃は仕事も忙しく、結局、聴く機会を失してしまっていたというのが、その次第。
そんな私が、この曲を知ったのは、1960年代の中頃のこと。
当時アメリカを代表するシンガーであったAndrew Williamsがホスト務めていたTVショー番組のアンディ ウィリアムス・ショーによってでした。
というのも、Andrewは、この映画発表の翌年の1962年にいち早く自己のアルバムにこの”Moon River”をカバー収録し大ヒットさせていて、その後、彼の十八番としてこの番組の中で度々歌っていたことから、日本でも放映されていたこのTVショー番組を通じ、この曲が多くの日本人に知られ愛されるようなっていたからなのです。
それでは、そのAndrew Williamsの”Moon River”、Andrew Williamsショー時分の映像と思われるものを見つけましたので、この辺で懐かしい往年の彼の歌唱、味わってみることに致しましょう。
男性が、愛する女性を慕いその思いを切々と語りかけているような雰囲気の”Moon River”。
Andrewの甘い歌声が、そのロマンをさらに奥深いものにしているように感じます。
それにしても懐かしい映像、私も、この映像から母がこのAndrew の”Moon River”が大好きで、家事をしながらよく歌っていたことを思い出してしまいました。
さて、ジャズのフィールドでは、この”Moon River”、女性ジャズ・ヴォーカルの女王と言われるSarah Vaughanが、1965年の作品”Sarah Vaughan Sings the Mancini Songbook”に収録したものが、早い時期のものの一つとして思い浮かぶのですが、最近、私が気に入っているのは、ドイツを代表するトランペット奏者であるTill Brönnerの2014年の作品”The Movie Album”
に収められていた、ヴォーカルにLizzy Cuestaをフューチャーした”Moon River”。
そのしっとりした感触が、原曲とまた違った空気を感じさせてくれ、とてもいい感じという訳で、今度はその演奏、ちょっと耳を傾けていただければと思います。
爽やかな感じがする”Moon River”。
Lizzy Cuestaのキュートなヴォーカルと抑揚の効いたTill Brönnerのトランペットが、恋に揺れる女性の微妙な心の内を静かに歌いあげているような、何とも言えない心地良さが際立つ演奏です。
この作品には、この他”星に願いを”、”STAND BY ME”、”CINEMA PARADISO”などお馴染みの映画音楽が収められいて、Till Brönnerのトランペットだけでなく曲によっては彼のヴォーカルも楽しめるもの。
全体を通して一度聴いてみるのもいいものではと思います。
まずは、ジャズのフィールドからの”Moon River”をご紹介いたしましたが、次は,アコースティック・ギターの名手として知られるこの人の”Moon River”を聴いてみることに致しましょう。
”Fire and Rain”、”You've Got A Friend”、”愛のモッキンバード”などのヒットで知られる シンガーソングライターのJames Taylor 2020年の作品”American Standard”に収められている”Moon River”です。
とは言っても、カントリーフォーク・タッチが色濃いJames Taylorとそのタッチとは色合いの異なる”Moon River”、ちょっと違和感を覚えてしまいますよね。
果たしてどんな”Moon River”となっているのか、何はともあれ異色のこの演奏、聴いてみることに致しましょう。
Jamesの名曲”Fire and Rain”を連想させるイントロに始まる”Moon River”。
明るい日射しが降り注ぐ草原で、柔らかい風に穏やかに揺れる緑の様子が目に浮かんで来るようなナチュラルな演奏。
70年代に聴いた飄々としたJamesのヴォーカルとアコースティック・ギターの美しい響きが心に残りました。
2001年にJamesは、ジャズ・サックス奏者Michael Breckerの作品”Nearness Of You-The Ballad Book”に参加、
ジャズの中に清々しい風を吹き込んでいたのですが、この彼の”Moon River”の原点はそこら辺にあったのかなあ、などと考えてしまいました。
先にSarah Vaughanの”Moon River”と書きながらその演奏を割愛してしまいましたが、考えてみるとジャズ・ヴォカールの女王的存在である彼女のヴァージョンを聴かずに終えるのはやはり心残り。
ということで、最後はこのSarah Vaughanの”Moon River”で締め括ることにしたいと思います。
さすが、ジャズ・ヴォカールの女王!!
1オクターブと1音しかないオードリー・ヘプバーンの声域に合わせて作られたと言うこの曲に、彼女ならではの装飾を施して、完全に一回りスケールの大きな自身の歌に仕上げています。
さて、今回は、オードリーのオリジナル・ヴァージョンに始まり、4ヴァージョンの”Moon River”を聴いて来ましたが、その演奏の違いからそれぞれの異なった情景や心の表情が見えてくる。
今回はこの曲と良さと共に、オードリーと言う名女優の永遠の魅力を感じることになりました。
3月も半ば、まもなくソメイヨシノも開花です。
彼の地での2月の終りに勃発した悲惨な戦火拡大が続く今、その花々が放つ平和の心の力を借りて、一刻も早い平和の訪れを祈ることにしたいと思っています。
2022-03-26 17:12
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コメント(2)
”Moon River”、どのバージョンも素晴らしいですね。
曲が「1オクターブと1音しかないオードリー・ヘプバーンの声域に合わせて作られた」ことは初耳です。
マイ・フェア・レディのサントラ盤を高校生の頃、よく聴いてましたが、主演女優の歌唱が吹き替えらていたことに納得できました。
by yuzman1953 (2022-03-17 10:30)
yuzman1953さん
マイ・フェア・レディのイライザ役、ブロードウェイ初演時は、映画”サウンド オブ ミュージック”で有名なジュリー・アンドリュースだったのですが、映画にするにあたり興行収入の関係から、当時無名だったアンドリュースからオードリーに替えられたもののようですね。
まあ元がアンドリュースですから、オードリーの歌を吹き替えとしたのは、後の評価を考えれば正解だったと私は思っています。
しかし、オードリー自身の歌う”Moon River”を聴いて、マイ・フェア・レディもオードリー自身の歌唱を収録した音源が残っていることなので、これもまた聴いてみたいものだ思うようになってしまいました。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-03-17 15:47)