2022年! 相次いで世に出た往年のロック・アーティストの新作・2作 [音源発掘]

ここ数年、時への感覚が鈍くなってしまったのか、気付いてみれば時はもう11月。

あらためて、年の瀬なんだなと思いつつ、街を歩いてみてもその空気は感じられず。

年のせいで不感症に陥ってしまったのではと気にしながらも、よく目を凝らしてみるとX’masの飾りつけの準備をしている様子も見えてくる。

そうした様子に、2022年も間もなく終わりかの感を強くし考えてみれば、今年もいろいろな音楽を聴いて来たけれどあらためてどんな新作が出て来たのかと、調べてみると目に入って来たのが私の若き日に活躍していたアーティストのデビュー以来半世紀近くを経ての新作品。

メンバーも高齢となった彼等の新作は、もうないものと思っていたところにこの朗報。

懐かしさも手伝い早速聴いてみたところ、聴こえて来たのは今だ老いを感じさせることのなく初々しささえ感じてしまうそのサウンド。

ということで、今回は今やロックの殿堂とも言える存在となったアメリカの超ビッグ・ネームであるChicagoとJourneyの新作をご紹介することにしたいと思います。


その作品は、Chicagoの38作目の作品となる”Born For This Moment”と、

chicago born for this moment.jpg


そして、Journeyの15作目の作品となる”Freedom”。

journey freedom.jpg


まずは、Chicago。

1969年に、当時では珍しかったブラス・セクションをオリジナル・メンバーに加えたバンドとして、またデビュー作品としては極めて異例のLP2枚組の形で発表された作品”The Chicago Transit Authority(邦題:シカゴの軌跡)”を引き下げデビューしたChicago。

デビューするやいなや、先にブラス・セクションを加えたロック・バンドとして活躍していたBlood Sweat & Tears(BS&T)と共に、ブラス・ロックの創始的存在としてたちまちのうちに注目を浴び、これまで”Make Me Smile (ぼくらに微笑みを)-1970年” 、”25 or 6 to 4 (長い夜) -1970年)”、”Lowdown -1971年”・Saturday in the Park -1972年”、 "If You Leave Me Now(愛ある別れ)- 1976年"、 "Hard to Say I'm Sorry( 素直になれなくて) -1982年"等、多くの人に知られる名曲を残して来たアーティストなのです。

そうしたChicago、私は1970年に発表された2作目の作品”Chicago(シカゴと23の誓い)”を友人より紹介されて初めて聴き、これまで聴いたことなかったそのサウンドに大きな衝撃を受け、折に触れて彼らを思い出し聴いて来たのですが、1982発表された”Chicago 16(ラヴ・ミー・トゥモロウ)"以降の作品はどうも肌が合わず、ここのところはすっかり疎遠となってしまっていたところ。

ところが、今年発表されたこの”Born For This Moment”。

最初は、どうせ肌が合わないサウンドが聴こえて来るのだろうとあまり期待せず聴いてみたところ、昨今の彼らの作品では感じることが出来なかった、往年の彼等らしい香り漂うサウンドが聴こえて来た。

おっ!これは行けそうと、さらに聴きこんでみて感じたのは、私が好んだ1972年発表の”Chicago V”付近のエッセンスがいたるところに散りばめられているなということ。

久々に聴いた往年の彼等らしさ一杯のそのサウンドに、忘れかけていた自分の若き日の心意気を目覚めさせられることになってしまったのが、この作品なのです。


それでは、ここで私に若き日の元気を掘り起こしてくれたそのサウンド、早速聴いていただくことに致しましょう。








曲は、”If This Is Goodbye”でした。

現在の彼らの姿が映った映像で曲を聴いていただきましたが、印象に残ったのは、このバンドのデビュー当時からのオリジナル・メンバーで現在もこのバンドの中核をなしている3人のアーティスト。

半世紀に渡りこのバンドを率いて来たその3人の年齢は、リーダーでキーボード担当のRobert Lamm 78歳、ブラス・セクションのリーダーでトロンボーン奏者のJames Pankowは 75歳、そしてトランペット奏者のLee Loughnane 76歳と、皆80歳に迫る超高齢者。

にもかかわらず、この映像から見ることの出来る彼等の姿は、年相応の風格は身に着けてはいるものの、皆、実年齢より若々しく溌剌としている様子。

これを見ながら、ここで彼ら奏でているこのサウンド、これまで時代を追い続けて来たそのスタイルから、年輪の極め若い日の姿に立ち返り戻って来た、彼等が培って来た音楽の総結晶であるかのように思えて来ます。



そして、もう一枚の作品、Journeyの”Freedom”。

1972年、当時 ラテンをロックを融合したサウンドで一台旋風を起こしたバンドのSantna。.
そのSantanaのリーダーであるCalros Santanaとメンバーの確執から発生したバンドの分裂騒動により、このSantanaを脱退をしたSantnaのメンバーであったNeal Schonと同じくメンバーであったGregg Rolieを中心に1973年に結成されたこのJourney。

当初は、プログレシッブなインストメンタル系のスタイルを軸としたバンドとして、1975年にファースト・アルバム”Journey(宇宙への旅立ち)” をレコード・デビュー。
しかし、Santanaの大きな魅力を支えた二人によるバンドとして鳴り物入りで登場した彼等でしたが、その始まり期待と反する惨憺たるもであったのです。

それは、Schon、RolieがSantna在籍時に見せつけられた、Calros Santanaのギターに戦いを挑むかのように絡みつき燃えた二人の強烈なソロの印象が、前提にあったからのように思えるのです。
当時、私もデビュー作にそうした期待をもって接したのですが、その期待は大外れ、大いに失望してしまった記憶があることから、そのことが、そうした結果を招く大きな要因となってしまったのではないかと察するのです。

そうしたJourneyに転機が訪れたのは、1978年のこと。
その転機のきかっけとなったが、その後のJourneyのスタイルを決定づけたヴォーカリストであるSteve Perryの加入。
それにより、Perryの加入の年に発表した作品” Infinity”で初のプラチナ・ディスクを獲得、続いて80年には脱退したGregg Rolieの後を受けて加入した キーボード奏者でメロディ・メーカーとしての素質を持つJonathan Cainの参加により、バンドは黄金時代を迎え、今に続く不動の地位を獲得することになったのです。


さて、ここで取り上げた作品 ”Freedom”。

本作は、1996年、Journeyの顔ともいうべき存在となっていたSteve Perryの脱退後、新たなヴォーカリストを迎え活動を開始するも人気低迷はいかんともしがたくなっていた彼らが、Perryの再来を思わせるフィリッピン出身の新たなヴォーカリストであるArnel Pinedaと出会い再始動を開始してから3作目の作品となるもの。

このPinedaとの出会い、それはSchonがYou Tubeを見ていてその歌声に惚れたのがその始まりなだとか。

そして、こうして迎え入れられたPinedaの存在は、彼が加わった2008年は発表の最初の作品” Revelation”より、このJourneyにPerry在籍時の再来とも思われる活気と躍動感をもたらし人気も復活を果すことの原動力となったのですが、この3作目のこの作品に至り、そのスタイルにもさらに磨きがかると同時に、新たなセンスも付加されてきたという感じ。

なにはともあれ、往年のJourneyが蘇り、再び彼等ならではの王道を歩み続けている姿、それはなんとも喜ばしい限りというところ。


そこで、Journeyのこの新作から1曲。
こちらの方も、Chicago同様、現在のライブ映像がありましたので、そこで今の彼らの様子をご覧いただきお楽しみください。

曲は、”You Got the Best of Me”です。



17歳でSantanaに加入デビューし、リーダーのCalros Santanaのギターを食うほどのプレイを見せたNeal Schonも、今や68歳。

しかし、カッコよさ、そしてそのギター・ワークは衰えることなく今だ健在。
これが最後かなと思われるChicagoとは裏腹に、もうしばらくは一線での活躍が期待できそうな気がして来ます。



以上、往年のビッグ・ネームの作品から1曲ずつ聴いて参りましたが、まだまだ聴いていただきたい曲がある。

特に、Journeyは、そのバラード曲。

2004年に日本でも、映画『海猿』の主題歌として使われ大ヒットした名曲”Open Arms”。
その美しい響きは、多くの人の心を打ち、この時は既に活動停止状態であったJourneyの名を日本においてもその名を知らしめた。

今回のこの作品にも、メロディ・メーカーCainならではの美しく心に残るバラード曲が数曲収められています。

そうしたことから、最後に全盛期Chicagoを彷彿とさせる曲、”Born for This Moment”と、Cainのペンの冴えが光るJourneyの”Live to Love Again”をお聴きいただき、私がこの年末に往年のビッグ・ネームの躍動を共に味わっていただこう思います。

日々新しいサウンドが充満、人気を博している今、私にとってはちょっとレトロなかもしれないけど、彼らのサウンドの方が深くフィットする。

しかし、年寄りの戯言かもしれませんが、当初のハートを失わず訴えかけてくるこれら往年のビッグ・ネームの心にも耳を傾けていただければと思っています。







Chicago XXXVIII: Born for This Moment
Track listing
1.Born for This Moment (Robert Lamm, Jim Peterik)
2.If This Is Goodby (Christopher Baran, Brandon Lowry, Ben Romans, Joe Thomas)
3.Firecracker (Greg O'Connor, James Pankow)
4.Someone Needed Me the Most (O'Connor, Pankow, Dennis Spiegel)
5.Our New York Time (Lamm, Peterik, Thomas)
6.Safer Harbours (Neil Donell)
7.Crazy Ideas (Lamm, Peterik)
8.Make a Man Outta Me (Keith Howland, Pankow )
9.She's Right (Michael Burns, Lamm, Thomas, Ramon Yslas)
10.The Mermaid (Sereia Do Mar) (Lamm, Marcos Valle)
11.You've Got to Believe (Baran, Romans, Thomas)
12.For the Love (Bruce Gaitsch, Lamm)
13.If This Isn't Love (John Durill, Lee Loughnane)
14.House on the Hill (John Van Eps, Lamm)

Personnel
Robert Lamm – keyboards, guitar, bass, lead vocals, backing vocals, programming
Lee Loughnane – trumpet, guitar, synthesizer bass, backing vocals, brass arrangements
James Pankow – trombone, keyboards, brass arrangements
Walfredo Reyes Jr. – drums
Ray Herrmann – saxophone
Neil Donell – lead vocals, backing vocals
Ramon "Ray" Yslas – percussion
Loren Gold – piano

Released
July 15, 2022


Journey Freedom
Track listing
1.Together We Run (Narada Michael WaldenRachel EfronRandy JacksonJonathan CainNeal Schon)
2.Don't Give Up on Us (SchonCainWalden)
3.Still Believe in Love (SchonCainWalden)
4.You Got the Best of Me (SchonCainWalden)
5.Live to Love Again (Cain)
6.The Way We Used to Be (SchonCainWalden)
7.Come Away with Me (SchonCainWalden)
8.After Glow (SchonCainWalden)
9.Let It Rain (SchonCainWalden)
10.Holdin' On (SchonCainJacksonWalden)
11.All Day and All Night (SchonCainWalden)
12.Don't Go (Arnel PinedaSchonWaldenCain)
13.United We Stand (SchonCainWaldenJackson)
14.Life Rolls On (SchonWalden)
15.Beautiful as You Are (SchonCainWalden)

Personnel
Arnel Pineda – lead vocals (except "After Glow")
Neal Schon – guitars, backing vocals, keyboards
Jonathan Cain – keyboards (except "All Day and All Night" and "Don't Go"), backing vocals, synth bass on "Still Believe in Love"
Jason Derlatka – backing vocals on 5, 6, 9, 12, 14, 15
Randy Jackson – bass (except "Still Believe in Love"), backing vocals
Narada Michael Walden – drums, backing vocals, keyboards
Deen Castronovo – lead vocals on "After Glow"

Released
July 8, 2022



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moriyoko

chicagoいいですね〜
なんとなくしか聞いたことなかったのですが
笑顔いっぱいの余裕であんなに素晴らしい演奏できるなんて、円熟の円熟
じっくり聞きたいと思いました
by moriyoko (2022-12-02 23:20) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

moriyokoさん

初めて聴いた時、Chicagoは7人編成の大所帯であったことから、50年以上続くと思わなかったのですが、確かに、この作品には、円熟境地により得た余裕が感じられますね。

じっくり聞きたいとのこと、よろしければ”Saturday in the Park”が収められている”ChicagoⅤ”や”Hard to Say I'm Sorr(素直になれなくて)”が収められている”Chicago 16(ラヴ・ミー・トゥモロウ)"あたりも聴いていただければと思います。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-12-04 10:28) 

mk1sp

レジェンドバンドの業かな共演、最高ですね♪

特にベテランと若手(ピネダ)の相乗効果、Journeyのアルバム、もう3作品目になるのですね、近いうちに聴いてみたいと思います!

by mk1sp (2022-12-04 16:48) 

tarou

こんばんは、富貴寺の国宝大堂(だいどう)に
コメントを有難うございました。
イチョウの絨毯の中、大堂の姿が浮かび上がって
いました。
”If This Is Goodbye”
これでさよなら、私には彼女がいないので
2022にさよなららと聞こえました。
良い曲ですね(^^)v
by tarou (2022-12-04 16:52) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

mk1spさん

Pinedaが加入した作品、1作目は全盛期のJourneyが戻って来たという喜び一杯の勢いで聴いていましたが、これからを期待して聴いた2作目は、何か肩透かし食ったような気がして、おかげで次作については、半ば諦めかけていたのですけどね。

3作目で、Pinedaを加えたそのスタイルもかなり板についてきた感じで、楽しんでしまいました。

その”Freedom”、是非聴いていただき、また詞の持つ意味を教えてください。


by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-12-04 19:17) 

老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)

tarouさん

イチョウの絨毯の上に立つ富貴寺の国宝大堂に、一層の侘びを感じさせていただきました。

”If This Is Goodbye”を聴きながら富貴寺の境内を歩いたら、また違った魅力に出会えるような気がしてきます。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2022-12-04 19:24) 

U3

JOURNEYの一連のスカラベをモチーフにしたLPジャケット好きでしたね。
特にESCAPEのジャケットは秀逸でした。
by U3 (2022-12-19 09:44) 

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