年の瀬・新年はクラシカルな弦の響きで・Tony Banks;Six Pieces for Orchestra [音源発掘]
いよいよ2022年も残すところあと僅か
今年は振り返ってみると、コロナ・ロシアのウクライナ侵攻に始まって、知床遊覧船遭難事故・安倍元首相銃殺事件・エリザベス女王逝去等々と、世界を揺るがすような大きな事件が相次いだ騒々しさに明け暮れた1年だったと思うのですけど、来たる2023年もウクライナでの戦争はまだまだまだ終わりそうにもなく、この戦争による世界的な食糧やエネルギーの不足は、さらなる災禍を呼び起こしそうな今の様相。
そうした暗澹たる空気の中、今はただ来たるべき年の安寧をただ祈るばかり、とこんなことを考えると、この先々に不安が湧いてきてしまうもの。
とはいえ、1年の終り。
そこで、今、聴いているのが心の平穏と明日の希望を切り開く力を与えてくれように感じた、オーケストラによるクラシカルな楽の音の優しい心良さが光るこの作品。
オーケストラによるクラシカルな楽の音と聞くとこのジャケットの作品、クラシックのアーティストによる歴史的著名作家の作品かと思われるかもしてませんが............!?
これは、元祖プログレシッブロックの雄として知られる、Genesisのキーボード奏者であるTony Banksのペンになる、2004年の”Seven(邦題;セブン:オーケストラのための組曲)”に続くBanksの2作目となるクラシック作品、2011年制作の”Six Pieces for Orchestra(邦題;管弦楽のための6つの小品)”という作品。
と言っても、ロックのアーティストによるクラシック作品などというと、ちょっと首を傾げてしまうかもしれませんけど!?
Genesisが誕生した英国という国は、The Beatlesによる1965年の弦楽四重奏と共演した”Yesterday”に始まって、1967年、初のオーケストラとロックバンド共演作であるThe Moody Bluesの”Days Of Future Passed(邦題;サテンの夜)”に続き1969年 Deep Purpleの”Concerto for Group and Orchestra(邦題:ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ)”や、伝説的ロック・キーボード奏者のKeith Emerson 率いるThe NiceとThe Sinfonia Of London orchestraによる作品”Five Bridges”など、早い時期からクラシックとロック融合に取り組んで来たお国柄。
1980年代に入ると、Freddie Mercuryとオペラ歌手Montserrat Caballéとの作品” Barcelona”や、Sarah Brightmanなどを輩出、クラシカル・クロスオーバーと呼ばれるサウンドの発祥地となっていることから、そもそもクラシカルな響きを内包していたGenesisサウンドの中核を成していたTony Banksついても、私としては、こうした彼のクラシック・オーケストラ作品は、十分期待出来るもののと確信し聴いたものなのです。
とまあ、前置きはこのぐらいにして、ロックのアーティストによるこの純クラシック作品、その成果を聴いていただくことに致しましょう。
曲は、”Siren”です。
これまで、Keith EmersonやPaul McCartney、Deep Purpleのキーボード奏者のJon Lordなど、Banks同様70年代ロックの旗手達がクラシック・オーケストラ作品を発表していて、ロックの楽曲の空気とはまた違った面持ちがあってそこに面白さがあったのですが.........
このBanksの作品は、彼が在籍したGenesisが、70年代プログレッシブ・ロックの中にあって比較的キーボードのソロ・パートが大きな核をとなっていたこともあって、そこで聴いたBanksのキーボードの旋律に似た香りを感じさせるパートが随所に聴かれる辺り、Genesisファンとしては実に楽しいもの。
とにかく、Genesisの音楽性をリードしていた彼の緻密なアレンジの技が、この作品でも遺憾なく発揮されていて、クラッシク音楽ではあるも、そこにはそれを越えた別の何かがあるようにすら感じます。
さて、そうしたBanksの”Six Pieces for Orchestra”、さらに聴き進んで行くと、また違った味わいが感じられます。
ということで、もう1曲。
曲は、”City of Gold”です。
実は、最初にこの作品を聴いた時に感じたのは、曲全体に何気に漂う北欧の香り。
しかし、果たしてそれが何であったのか思い出せそうで思い出せず、そこでBanksについて調べてみたところあったのが、彼のお気に入りのクラシック作品がフィンランドの作曲家Jean Sibeliusの交響曲第4番イ短調と交響曲第7番ハ長調だという話。
私もSibeliusは好きで、たまにではあるも機会があればその都度聴いていたのですが、そう言われてみればこのBanksの作品に漂う北欧の香りは、まさしくSibeliusのもの。
いずれにせよ、Banksのこの作品は、広大な自然を感じさせるSibeliusの楽想とBanksの心に残る優しく穏やかな旋律が、これまでの日常を覆す大事件頻発で病み荒れた心に大いなる癒しと次なる鋭気を養ってくれました。
そして、1960年代、クラッシクのサイドから、単なるポップ・ミュージックのアーティストの余興と軽蔑の目線を浴びながらスタートだったという、ロック・アーティストによるクラシック・クロスオーバーへの挑戦。
当時私は、ロックの洗礼を受けた今の子供たちが成長した暁には、そうした偏見もなくなりロック、クラッシクといったジャンルの壁を越えた交流がなされるだろうと考えていたのですが、この作品を聴いて、挑戦開始以来半世紀の年を経てクラシック・クロスオーバーの世界も、ここまで来たかと感無量。
私にとって年の瀬に聴いたTony Banksの”Six Pieces for Orchestra”、充実した1年の締め括りを持たらしてくれた楽曲となってしまいました。
今は、2022年も残すところ2日を切ったところ。
今年、お越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。
暗雲立ち込める年末でありますが、来たる2023年が良い年となるよう最後に1曲、”Blade”聴きながら共に祈ることにしたいと思います。
Track listing
All tracks written by Tony Banks.
1.Siren
2.Still Waters
3.Blade
4.Wild Pilgrimage
5.The Oracle
6.City of Gold
Personnel
Tony Banks – composer, producer
Paul Englishby – orchestration
City of Prague Philharmonic Orchestra
Martin Robertson – alto saxophone on "Siren"
Charlie Siem – violin on "Blade"
Nick Davis – producer, engineer
Nick Wollage – engineer
Colin Rae – editor, copyist
Imagem Music – publisher
Stefan Knapp – cover image
Recorded
13–17 March 2011
Smécky Music Studios, Prague, Czech Republic
今年は振り返ってみると、コロナ・ロシアのウクライナ侵攻に始まって、知床遊覧船遭難事故・安倍元首相銃殺事件・エリザベス女王逝去等々と、世界を揺るがすような大きな事件が相次いだ騒々しさに明け暮れた1年だったと思うのですけど、来たる2023年もウクライナでの戦争はまだまだまだ終わりそうにもなく、この戦争による世界的な食糧やエネルギーの不足は、さらなる災禍を呼び起こしそうな今の様相。
そうした暗澹たる空気の中、今はただ来たるべき年の安寧をただ祈るばかり、とこんなことを考えると、この先々に不安が湧いてきてしまうもの。
とはいえ、1年の終り。
そこで、今、聴いているのが心の平穏と明日の希望を切り開く力を与えてくれように感じた、オーケストラによるクラシカルな楽の音の優しい心良さが光るこの作品。
オーケストラによるクラシカルな楽の音と聞くとこのジャケットの作品、クラシックのアーティストによる歴史的著名作家の作品かと思われるかもしてませんが............!?
これは、元祖プログレシッブロックの雄として知られる、Genesisのキーボード奏者であるTony Banksのペンになる、2004年の”Seven(邦題;セブン:オーケストラのための組曲)”に続くBanksの2作目となるクラシック作品、2011年制作の”Six Pieces for Orchestra(邦題;管弦楽のための6つの小品)”という作品。
と言っても、ロックのアーティストによるクラシック作品などというと、ちょっと首を傾げてしまうかもしれませんけど!?
Genesisが誕生した英国という国は、The Beatlesによる1965年の弦楽四重奏と共演した”Yesterday”に始まって、1967年、初のオーケストラとロックバンド共演作であるThe Moody Bluesの”Days Of Future Passed(邦題;サテンの夜)”に続き1969年 Deep Purpleの”Concerto for Group and Orchestra(邦題:ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ)”や、伝説的ロック・キーボード奏者のKeith Emerson 率いるThe NiceとThe Sinfonia Of London orchestraによる作品”Five Bridges”など、早い時期からクラシックとロック融合に取り組んで来たお国柄。
1980年代に入ると、Freddie Mercuryとオペラ歌手Montserrat Caballéとの作品” Barcelona”や、Sarah Brightmanなどを輩出、クラシカル・クロスオーバーと呼ばれるサウンドの発祥地となっていることから、そもそもクラシカルな響きを内包していたGenesisサウンドの中核を成していたTony Banksついても、私としては、こうした彼のクラシック・オーケストラ作品は、十分期待出来るもののと確信し聴いたものなのです。
とまあ、前置きはこのぐらいにして、ロックのアーティストによるこの純クラシック作品、その成果を聴いていただくことに致しましょう。
曲は、”Siren”です。
これまで、Keith EmersonやPaul McCartney、Deep Purpleのキーボード奏者のJon Lordなど、Banks同様70年代ロックの旗手達がクラシック・オーケストラ作品を発表していて、ロックの楽曲の空気とはまた違った面持ちがあってそこに面白さがあったのですが.........
このBanksの作品は、彼が在籍したGenesisが、70年代プログレッシブ・ロックの中にあって比較的キーボードのソロ・パートが大きな核をとなっていたこともあって、そこで聴いたBanksのキーボードの旋律に似た香りを感じさせるパートが随所に聴かれる辺り、Genesisファンとしては実に楽しいもの。
とにかく、Genesisの音楽性をリードしていた彼の緻密なアレンジの技が、この作品でも遺憾なく発揮されていて、クラッシク音楽ではあるも、そこにはそれを越えた別の何かがあるようにすら感じます。
さて、そうしたBanksの”Six Pieces for Orchestra”、さらに聴き進んで行くと、また違った味わいが感じられます。
ということで、もう1曲。
曲は、”City of Gold”です。
実は、最初にこの作品を聴いた時に感じたのは、曲全体に何気に漂う北欧の香り。
しかし、果たしてそれが何であったのか思い出せそうで思い出せず、そこでBanksについて調べてみたところあったのが、彼のお気に入りのクラシック作品がフィンランドの作曲家Jean Sibeliusの交響曲第4番イ短調と交響曲第7番ハ長調だという話。
私もSibeliusは好きで、たまにではあるも機会があればその都度聴いていたのですが、そう言われてみればこのBanksの作品に漂う北欧の香りは、まさしくSibeliusのもの。
いずれにせよ、Banksのこの作品は、広大な自然を感じさせるSibeliusの楽想とBanksの心に残る優しく穏やかな旋律が、これまでの日常を覆す大事件頻発で病み荒れた心に大いなる癒しと次なる鋭気を養ってくれました。
そして、1960年代、クラッシクのサイドから、単なるポップ・ミュージックのアーティストの余興と軽蔑の目線を浴びながらスタートだったという、ロック・アーティストによるクラシック・クロスオーバーへの挑戦。
当時私は、ロックの洗礼を受けた今の子供たちが成長した暁には、そうした偏見もなくなりロック、クラッシクといったジャンルの壁を越えた交流がなされるだろうと考えていたのですが、この作品を聴いて、挑戦開始以来半世紀の年を経てクラシック・クロスオーバーの世界も、ここまで来たかと感無量。
私にとって年の瀬に聴いたTony Banksの”Six Pieces for Orchestra”、充実した1年の締め括りを持たらしてくれた楽曲となってしまいました。
今は、2022年も残すところ2日を切ったところ。
今年、お越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。
暗雲立ち込める年末でありますが、来たる2023年が良い年となるよう最後に1曲、”Blade”聴きながら共に祈ることにしたいと思います。
Track listing
All tracks written by Tony Banks.
1.Siren
2.Still Waters
3.Blade
4.Wild Pilgrimage
5.The Oracle
6.City of Gold
Personnel
Tony Banks – composer, producer
Paul Englishby – orchestration
City of Prague Philharmonic Orchestra
Martin Robertson – alto saxophone on "Siren"
Charlie Siem – violin on "Blade"
Nick Davis – producer, engineer
Nick Wollage – engineer
Colin Rae – editor, copyist
Imagem Music – publisher
Stefan Knapp – cover image
Recorded
13–17 March 2011
Smécky Music Studios, Prague, Czech Republic
喪中につき新年のご挨拶は差し控えさせていただきますが
今年も引き続きよろしくお願いいたします
by yam (2023-01-01 10:51)
yamさん
こちらこそ!
よろしくお願いいたします。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-01-01 17:44)
こんばんは、寅さんの街 柴又帝釈天に
コメントを有難うございました。
こちらこそ、本年も宜しくお願いいたします。
下町の雰囲気のある参道や矢切の渡しも
好きなところです。
by tarou (2023-01-04 22:07)
老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)さん こんにちは
昨年は悲惨なことが沢山ありました。そんなことがあっても音楽は心を癒してくれると思います。
by SORI (2023-01-07 19:05)
tarouさん
私も、矢切の渡しで渡し船に乗ったことがあるのですけど、大都会のそばであるにも関わらず、そこでで感じた昔ながらののどかな空気が、大変気に入っています。
引き続き今年もよろしくお願いいたします。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-01-08 15:57)
SORI さん
昨年の大晦日はこのTony Banksでこことの安らぎを得たことから、そのままSibeliuを聴きながら大晦日を越してしまいました。
今年は、また平穏が戻ってくる、そんな年になってくれればいいなと思っています。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-01-08 16:03)
こんばんは。
遅まきながら、新年あけましておめでとうございます。
確かにクラシカルですね。
by U3 (2023-01-12 20:10)
U3さん
本年も、引き続きよろしくお願いいたします。
喧騒な世の中、たまにはこうしたクラシカルな作品も良いものでしょう。
by 老年蛇銘多親父(HM-Oyaji) (2023-01-14 10:11)