この季節になると聴きたくなるピアニストの作品・Cedar Walton ;Voices Deep Within [音源発掘]

ようやく春らしくなったと思ったら、突然の夏日が来たり。

この激しい寒暖差に、出掛けには今日は何を着ていくのが良いのかその判断に四苦八苦!!!。
とはいえ、やはり一年の中で最も過ごしやすい季節の到来。

となると私の場合、この季節、聴きたくなってしまうのが、この人のピアノ。
そこで今回の作品は、前回のStevie Wonderの”You Are the Sunshine of My Life”の記事でも聴いていただいたサックス奏者Vincent Herringが、そのピアニストの晩年を共に過ごしたアーティストであったことを知り、Herringの参加したそのピアニストのリーダー作品を物色し、ジャケットの何げに良さげな雰囲気から聴いてみてお気に入りとなったこの作品。

ceader walton Voices Deep Within.jpg


Cedar Walton 2008年の作品”Voices Deep Within”です。

その聴きどころは、作家の村上春樹の一押しのピアニストであるCedar Waltonの晩年のプレイと、Vincent Herringとのコラボ。

特にサックス奏者にVincent Herringついては、1976年以降のCedarとベースのSamuel Jones、ドラムのBilly Higginsによるリズムセクションにサックス奏者を加え好評を博したEastern Rebellionの活動があり、そのRebellionのサックス奏者として在籍したあのMiles Davisの下に参加した2人のサック奏者すぁるGeorge ColemanやRobert Bergとの比べてどんな按配かとの興味も深々といったところ。

とにかく期待に胸を膨らませて聴いてみると、嬉しいことにどんなに強く弾いても崩れず美しいCedar のピアノは往年の姿はそのままに、Herringとの相性も抜群の出来。

特にHerringのサックスは、表現の巾も大きく豪快な感じで、先達であるGeorge Colemanも凌ぐほどとの印象。

と一人で悦に入っているのもなんなので、ここはひとまずその演奏聴いていただくことに致しましょう。

曲は、Stevie Wonder作曲の”Another Star ”です。






生涯オーソドックスなモダン・ジャズの徹してきたCedarが、Stevie Wonderの曲を演奏していたなんてちょっと意外な感じがしましたけど、聴いてみればそのサウンドは純然たるジャズの音。

この選曲には、Cedarより30歳若いVincent Herringの存在があったようにも思いますが、Herringの若々しい力強いプレーを受けて、この時既に70の齢を越えていたCedarのプレーにも、瑞々しい若々しさに溢れている、爽快さを感じる演奏だった思います。


私が、Cedar Waltonに興味を持ちよく聴くようになったのは、ヴァイブラフフォン奏者のMilt Jacksonが、自分の最も好みピアニストとして彼の名を挙げていたことがきっかけで、その後、Milt との共演盤から始まり彼の参加している諸作品を聴く中で、そのスィンギーかつピアノタッチの美しさに魅了されてしまったのがその始まり。

特に、彼のピアノ・トリオでのバラードの美しさは格別。
そこで、今度は神秘の香りを秘めた彼のバラード演奏を1曲。
曲は、John Coltrane作曲の名曲”.Naima ”をお聴きいただくことに致しましょう。



この”.Naima ”という曲、その登場はColtraneの大名盤の一つに数えられている1959年の作品”Giant Steps”。
ところが、その作品のオリジナル盤には、ピアノがWynton Kelly担当したテイクが収められていたのですが、後にもう一つ別テイクが発掘、そこでのピアノ担当の主はCedar Waltonだったという事実。

そうしたことを思い出しながらこの演奏を聴いていると、Cedarの当時オリジナル・テイクとして採用されなかった無念を晴らすべくピアノに向かうその姿が見えて来るような気がして来ます。


さて、この”.Naima ”で筆を置こうと思っていましたけど、、ここで思い出したのが、このCedar Walton、1961年から4年間、若手ジャズメンの登竜門と言えるArt Blakey & The Jazz Messengersに在籍、そこでの活動で脚光を浴びるようになったアーティストなのですが、その活動の中で見せていた作曲の才。

この作品にも3曲のオリジナル曲を提供しているのです。

となると、そのオリジナル曲も1曲聴いておきたいもの。

そんなわけで、最後に1曲。
曲は、Vincent Herringを従えた演奏で”Voices Deep Within”です。



ロシアよるウクライナへの武力侵攻、知床での観光船遭難と心が痛むニュースに覆われた今年の春。
今回聴いたCedar Waltonのこの作品は、その傷ついた心に一時の癒しもたらしてくれたように思いました。



それにしてもあの観光船遭難事故、日頃、気を抜けば危険が伴う仕事をしている私としては、安全管理は二の次で、経営効率を優先しようとしていた観光会社のあさはかな意識が見え見えかついい加減な判断での出航により、遭難した乗客の人たちの無念の思いに強い憤りを覚えているところ。

事故当日の天気図を見て、あの状況で何も知らぬ人々を乗せ経営者をはじめ船長もよく出航を決断したものだと、その無能さに腹の底からの強い怒りを感じています。

そして、自分自身も危険な現場と相対する身、今以上に、日々何よりも人の命が大切との心がけで過ごして行こうとの誓いを新たにすることになりました。


Track listing
1.Voices Deep Within (Cedar Walton)
2.Memories of You (Eubie Blake, Andy Razaf)
3.Another Star (Stevie Wonder)
4.Dear Ruth (Cedar Walton)
5.Something in Common (Cedar Walton)
6.Over the Rainbow (Harold Arlen, Yip Harburg)
7.Naima (John Coltrane)
8.No Moe (Sonny Rollins)

Personnel
Cedar Walton - piano
Vincent Herring - tenor saxophone
Buster Williams - bass
Willie Jones III - drums

Recorded
May 20, 2009 Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ




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