空の旅、その道中にて生まれた名曲;Misty [名曲名演の散歩道]

今回は、前回より1年ぶりとなる名曲名演の散歩道

日々、日が伸びてくる様が実感できるようになり、その日射しにも春の訪れ近しを感じてるようになったこの頃。

考えてみれば、2月というと旧暦では正月新春の月、 今年2021年は2/12が旧暦元旦にあたるのだというのですが、昨今の春の訪れ近し日射しに、今はこの時期を新春と昔の人はよく言ったものだとの感慨を深くしているところ。

そうしたかすかな春の足音が聞こえてきたところで、どういう訳か、ここのところ心の内に響き始めているとあるメロディ、それは、現代の女性ジャズ・ヴォ―カルに多大なる影響及ぼしたSarah Vaughanの歌うこの名曲。

ということで今回はその名曲を取り上げることとして、まずは、その演奏をお聴きいただくことにいたしましょう。



Sarah 1963年のライブ作品”Sassy Swings The Tivoli”からの演奏で、曲の名は、”Misty”。

Sarah Vaughanといえば”Misty”というぐらい彼女のLiveでは、必ず歌われていたこの名曲、私も70年代半ばに彼女のLiveに出掛け、そこで見聴きしたこの曲を歌う彼女のしぐさ情景が今も深くに脳裏に刻まれてしまい、今もって思い起こすことしばしなのですが、数ある彼女の”Misty”の歌声の中から、この Tivoliのライブを選んだのは、そうした数ある彼女の”Misty”の歌唱の中でも、この”Tivoli”のステージは、一味違った演出の”Misty””が聴ける珍しさがあったからなのです。

それは、お聴きいただいていれば、既にお気付きかと思いますが、男女デュエットの”Misty”だということ。
その、御相手なる男性ヴォーカリストは、このライブでピアノを担当しているKirk Stuart 。
ピアニストとは言え、しっとりとした歌声を聴かせる、なかなかのヴォーカリストなのですが、しかし、このデュエット、Kirk が歌い始めてからちょと間をおいて聴こえてくる観客たちの笑い声。
実はこれ、サビの部分にてSarah は口パクだけで声を出さず、代わってKirk歌い、それに遅れて突然男性の声に変ったのが何故かに気づいた観客が発した笑い声だったのです。

”Misty”を待つ観客に対しSarahの「今日はいつもと違うのよ」ばかりにと歌も唄えるピアニストのKirk Stuart あってこそのパ―フォーマンス
この当時のSarahと共に活動していたアーティストが見せた、自由な即興性が命のジャズならではのワンシーン、観客たちの一瞬の隙を見逃がすことなく、瞬時に新しい驚き与えるツボを心得た一瞬を作り出す、そこに、Sarah の非凡な才能一旦が見て取れるような気がします。



さて、Sarah の名演が光るこの名曲、この曲の作曲者の名は、ピアニストのErroll Garner。

この曲、Garnerが、1954年、空路ニューヨークからシカゴに向かう旅の途中、霧の中を飛ぶ飛行機の窓から外を見ていると、目の前に広がる霧の中に突如のインスピレーションを得、そこで閃き生まれたのがこの”Misty”だったというのですが、

その元はピアノによるインストルメンタル曲。

しかし、その後、Johnny Burkeによって詞がつけられ、1959年にJohnny Mathisの歌唱により全米12位ヒットとを獲得、続いて前出の女性ジャズ・シンガーSarah VaughanやElla Fitzgeraldに歌われたことにより、現代に知られるスタンダード・ナンバーとなったという、ジャズのアーティストが生んだ名曲なのです。



とくれば、作曲者 Erroll Garnerによる”Misty”、それを聴いてみたくなるもの。
そこで、今度は1954年録音のGarnerトリオの演奏で、その名曲の真髄、お楽しみいただくことにいたしましょう。



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